第179話 ゴールドアックスのその後。

 二十分くらいして料理や酒を大量に持ち帰ったホップとペンネと共に、アレンは楽しげに酒を飲んでいた。


 そこで何か思い出したように黙って話を聞いていたペンネに視線を向ける。


「ハハ、あ……そういや」


「……ん?」


「ペンネの他のゴールドアックスの連中はどうするって?」


「あ、あ、えっと」


「ペンネ以外の連中は冒険者をやめちまうってよ」


 アレンに突然話を振られて戸惑うペンネよりも先にホップが答えた。


「そうか……そうだな。まぁー冒険者なんてやりたい時にやればいいが。ただ、今冒険者活動をやめてちゃんと生活できればいいが」


「そうだな。ベルディアさんも心配そうにしていた」


 ホップもアレンの言葉に同意するよう頷きながら答えた。


「ゴールドアックスでの稼ぎってそれほどよくなかったんだろ?」


「悪かったな……貯蓄とかないんじゃないか? な、ペンネ」


 ホップはペンネに視線を向けて、話を振る。ペンネは小さく頷き持っていたワインの瓶をホップに手渡した。


「う、うん。少なかったね。特に僕はフィットと一緒だからより大変だったけど」


「フィット? ペンネって結婚でもしているのか?」


「あ、あ、違う。違う。僕が飼っているフレミン・ジャイアントラビットの名前だよ」


「あぁ、そういえばテイマーだったか。今、その……フィットは?」


「フィットは寮で留守番。人が多いところが苦手なんだよね」


「そうか。人多いところは嫌だよなぁ。ん? 留守番と言うことはフィットも寮で一緒に暮らしているんだ?」


「うん、二人部屋を二人分の料金を払ってね」


「それは……お金がかかるな」


「そうなんだよ。もちろん食費も二人分だし。貯蓄なんて全く考えられない」


「そうか……なら、少しでも早く本格的に冒険者活動したいよな。もう少ししたらリナリーが帰って来ると思うんだけど……待っていられないか?」


「そうだね……正直、借金を考えているかな」


 アレンは口元を押さえて視線を下に向けて考えを巡らせ始めた。


 リナリーはそろそろ帰ってくるだろう。


 国王様から聞いた話ではリナリーは今隣国のベラールド王国に出向いて戦争に参戦しているのだとか?


 しかし、今は国が不安定な時期である魔法使いで王女のリナリーは焼かれた村の復興をさせると言う仕事が回って来たりしないか?


 だとすると、当分合流は難しいかな?


 リナリーの父親である国王様に聞いておくんだった。


 リーダーであるリナリーが帰って来ないと銀翼は休業状態。


 ホップと一緒に簡単なクエストを受けていると言ったが、ホップと二人だと受けられるクエストが限られて大した金にはならんだろう。


 ペンネの生活苦が続き過ぎるよな。


 それは、さすがに可哀想だ。


 ……俺主導で何か適当なクエストにでも行った方が良いかな?


 考えを巡らせていたアレンだったが、ゆっくりと口を開く。


「そうか……じゃ、今度俺も一緒にクエストを受けようか」


「良いのか? 二人だと受けられるクエストも限られていたんだよ。それに元ゴールドアックスってことでなかなか討伐クエストを受けさせてもらえないんだよな」


 ホップが表情を顰めながら答えた。そして、手に持ったワインを飲んだ。


 そのホップの言葉を聞いてアレンは苦笑する。


「そうか……まぁ、仕方ないな。冒険者は信頼が命だし……いいぜ、いつ行く?」


「そうだなぁ。明日明後日のクエストは取ってあるから、三日後はどうだ?」


「うん、良いぜ。ペンネはどうだが? 三日後」


「……うん、大丈夫だよ」


「なら、決まりだ。あ……そういえばスービアの奴は何をやっているんだ?」


 ペンネの答えを聞いたアレンは一度頷く。そして、スービアの事を思い出してホップに視線を向ける。


「あぁ、休みを堪能しているようだぜ? さっき、肉を配っていた女の子を口説こうとしていた」


「そうか。相変わらずそうだな。……リナリーがもしかしたら、家の用事が長引くかも知れないからな。三日後にドッと稼げるようにしないとなぁ。だとすると魔物の討伐クエストかな?」


「ま、魔物の……討伐クエスト」


 アレンの言葉を聞いたペンネが少し表情を強張らせた。そのペンネの様子を見たアレンは小さく笑う。


「おいおい、もう固くなっているのか? この前に戦場の初陣を飾って人間相手に戦ったんだろ? それで大丈夫だったなら、大丈夫だよ」


「う、うん」


「それに三人で受けるんだ、そんな難度の高いクエストは受けないから安心していろよ」


「わかったよ」


 ペンネはそう言うと、持っていたワインの瓶からワインをグイッと飲み始めた。その飲みっぷりにアレンは笑う。


「ハハ、良い飲みっぷりだ! 今日は目一杯飲めよ。どんだけ飲んでもタダだからな」


 宴から持ち出した酒と食事を囲んでアレン達は陽気に笑いながら、談笑していた。

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