第131話 マッサージ再び。苦手な方は飛ばされよ。
アレンがローラの部屋に入ると、ローラをベッドの上に降ろす。すると、頬を若干赤くしたローラが口を開く。
「あ……ありがとうございます」
「少し横になって回復するんだな……あ、そうだ。後でマッサージしてやろうか?」
「え、良いんで……いえ、アレン様にそのようなこと」
「良いから。良いから。そのマッサージをすると……もしかしたら魔法をさらに上手く使えるようになるかもだし」
「え? それはどういう?」
「後でな。俺にはまだ草むしりが残っているから」
キョトンとした表情で首を傾げるローラを残して、アレンは部屋を出て行くのだった。
アレンが草むしりを終えて、食事を終えた午後。
場所はローラの部屋だった。
「あ、んんー……あ、このマッサージはいったい……あっ! ああぁ!」
注意しておこう、これはローラが言っている通り、今アレンはローラにマッサージしているだけである。つまり、やましいことはまったくしていない。
「どうだ? 痛いか?」
「あ、ん、痛くぅ。痛くはないぃん。むしろ、気持ちいいんですーが、はあぁん……駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目何か……何か来ちゃう……来ちゃういます。あく……あついっつ!」
「最初から痛みがないのならいいな。この前、俺の冒険者パーティーの奴にやったらすごく痛かったみたいで蹴りを食らったんだよなぁ」
「あぁん、痛くないんですがあぁ。こんなの知らない。いや、知らない怖いです! あぁん! っあぁぁああああああああぁああああああああああ!」
繰り返すようで悪いが、これはアレンがローラにマッサージしているだけである。つまり、やましいことは神に誓って一切していない。
天地天明に誓ってもいいよ。うん
「怖いのか? 大丈夫か?」
「あれんしゃま……、だいじょうぶでしゅよぉ?」
「そうか、ここはどうだ?」
「ひゃん。あぁきもちいいいれす。あぁぁぁぁ中に……中にあたたかいのが流れ込んできましゅ」
それから三十分ほど、アレンはローラの様子を見ながらマッサージを続けていった。
「さて、マッサージは以上かな」
アレンはマッサージが終わって、ベッドの上にうつ伏せで脱力した状態のローラから離れた。
「ひぁい」
「大丈夫か? ローラ?」
「らいりょうぶれふ。あ、ありがとうごりやいますぅ」
「うん、それでマッサージはどうだった?」
「……き、気持ちよかったれす」
「それは良かったな、このマッサージは人によっては痛かったりする。ホランドなんかのたうっていたからな」
アレンはローテーブルに置かれていたポットに手を取ると、二つの木のコップにポットの中に入っていた紅茶を注いだ。
部屋の中に紅茶の香りがほわっと漂い始める。
「……そうなんですね」
「あぁ、紅茶飲むか?」
「あ、はい……いえ、これは」
「ん? どっちだよ?」
「えっと……」
耳まで一気に真っ赤にさせたローラは何か言い難そう言葉を濁した。
「ん?」
「えっと、すみません。服を変えさせてください」
「ん? そうか、じゃあ、俺は外に出ている」
「はい、すみません」
アレンは木のコップを一つ手に取ると、ローラの自室から出て行くのだった。
アレンが部屋から出て行くと同時にローラはベッドの上で起き上がる。そして、体を確かめるようにペタペタを触れた。
「はう、こ、こんなの……こんなのはしたなさ過ぎます。早く下着、それからズボンも履きかえましょう。……それにしても、気持ちよかったです。私が私でないみたいで……だ、駄目です。結婚前の淑女が殿方の前であのように乱れて……は、はしたないです」
ローラは動揺したような表情を隠すように両手で顔を覆い。そして、ブンブンと頭を横に振った。
「しかし、このマッサージをしばらく続けるとアレン様はおっしゃられていましたが……私……耐えることができるでしょうか?」
ローラのポツリと小さくつぶやかれた問いかけは、他に誰も居ない部屋に響くのだった。
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