第128話 グラース・ファン・ロドリゲス。

 ここはアレン達が住み始めた青い屋根の屋敷の食堂。


 今は夕食時でアレン、ローラ、ホランド、リン、ユリーナ、ノックスの五人は揃って食事を取っていた。


 机の真ん中には大きな楕円形の器にグラタンのような料理がいっぱい盛られていた。


 アレンはグラタンのような料理を大きなスプーンでサクサクッと分ける。


 グラタンのような料理を自身の皿に取り分けると、ナイフで切り分けてフォークで口に運んで食べた。


 すると、焼けでトロリととろけたチーズの乳の濃厚且つクセのある味わい……そして、下味の付いたひき肉が香ばしく、咀嚼する度に肉汁が口の中に広がる。


 更に肉汁が染み込んだ平たく伸ばされたパスタが綿状のパスタとは触感が違って美味しかった。


「おぉ、初めて食べるが美味しいな。このラザニアと言う料理は」


「お口にあったなら嬉しいです」


 アレンの右隣の席を陣取っていたローラが嬉しそうに口を開いた。


 ただ、アレンの目の前と左隣に席に座っていたリンとユリーナが黙って食事しながらも不服そうにしている。


「こんな料理があったんだな。……どこの料理なんだ?」


「私が育ったベラールド王国の北西部の伝統料理なんです」


「へぇ……ベラールド王国の伝統料理か。そういえば、ベラールド王国とは戦ったことがなかったから、あまり詳しくないんだよな」


「そうですか。よろしかったら、少しの間はベラールド王国の料理を作りましょうか?」


「まぁ、ここまで料理できるなら俺は構わないが……ホランド達は?」


「あむあむ……これ、美味しいです。文句はないですよ」


「ふん、良いわよ」


「あふ……ふすん」


「いいんじゃないッスか? 俺も少し教えて欲しいッスよ」


 アレンの問い掛けにホランド、リン、ユリーナ、ノックスの四人はラザニアを食べる手を止めずに答えた。


「良いそうだ。よろしく頼む」


「はい、任されました」


「あ、ベラールド王国と言えばなんか……噂話があったな……えっと、修羅神アレーグラーだったか? なんか、強い奴が居るんだっけ?」


「修羅神アレーグラー……? 修羅神アレーグラー……? 強い? あ……まさか、銀虎軍を率いている守護神グラース・ファン・ロドリゲス将軍ですか?」


「あ、あぁ? それそれ、そいつって強いのか?」


「えぇ、強いです。彼の守備は堅牢で……特に守る城は落とされたことがないと話です」


「へぇ……守の達人か」


「あ、アレン様の方が強いと思います!」


「どうかな……しかし、アイツとどちらが上か気になるな」


「アイツ?」


「ラーセットだ。火龍魔法兵団元副長の。ラーセットは城落としの名人で……アイツに今まで落とせなかった城はないからな」


「あのラーセットさんが城落としの名人ですか。それはどちらが上か見てみたいですね。しかし、ラーセットさんは……ホーテさんに付いてオベール辺境伯領に行かれてしまいました。オベール辺境伯領とベラールド王国とはかなり離れているので戦うことないと思いますが」


「そうだった。火龍魔法兵団が解散したと言う噂は本当なのか? 教会は何か情報を掴んでいなかったか?」


 アレンがローラにそう質問を投げかけると、食事をしていたホランド達も食事を止めてローラに視線を向ける。


 表情を曇らせたローラは言い難そうにしながらも、頷きアレンの質問に答えはじめる。


「はい……。その噂は本当です。この情報はサンチェスト王国内のクレセン教を崇める教会より入ってきた情報なので正確です」


「そうか……では火龍魔法兵団に何があったのか分かる範囲で教えてもらえるか?」


「はい、わかりました」


 ローラは持っていたフォークを皿の上に降ろして、火龍魔法兵団の顛末について話していった。

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