第105話 八カ月。
アレンが国外追放されて八カ月。
冒険者を始めて七カ月が経った。
「じゃ、私はリトルポイズンスライムの討伐クエストの完了報告行ってくるわ」
「じゃ、俺は今回道中で討伐した魔物の素材を売ってくるわ」
リナリーはリトルポイズンスライム討伐完了を証明する、リトルポイズンスライムの体液が入った小瓶と魔石を持って受付カウンターに行き。そして、ホップは背負っていた魔物の素材を持って買取カウンターへ行ってしまった。
よって、アレン一人が冒険者ギルドのロビーに取り残される。
「ふぅ、みんな働きものだな」
アレンは一回息を吐いて呟くと、ロビーの椅子のところまで移動して座る。そして、周りに居る冒険者達に一回見回して、彼等の噂話に耳を傾けた。
「そうやー聞いたか? この前の聖英祭の前夜祭ん時に、ルシャナちゃんが優男と会っていたらしぞ?」
「え、嘘だ……今まで、そんな噂一切なかったのに」
「また、フレデリカちゃんの時みたいに勘違いなんじゃないか?」
「いや、見かけたヤツの話しだと。結構親しそうだったみたいだ……」
ふ、ルシャナは美人だから、そういう人の一人や二人もいるだろうに……。やっぱり、色恋沙汰か。他には面白い噂話はないのかな?
「フレデリカちゃん……今日も可愛かったなぁ」
「そうだな」
「ふふ」
「どうしたんだ? 気持ちわりー笑み浮かべて」
「おい、まさか、それは聖女様……ローラ様の姿絵じゃねーか」
「そうだぜ。祭りで売っていたのを銀貨八枚で買ったのさ」
「高!」
「……しかし、その価値があるやも知れん」
「あぁ、ローラ様、美しかったなぁ」
「お前、この前までルシャナちゃん推しだったんじゃないか?」
「もうルシャナちゃんの親衛隊は引退するのか?」
「仕方ないんだ。ローラ様に俺の心を奪われてしまったのだから」
「気持ち悪いな。しかし、もうベラールド王国に帰っちまったんじゃねーか?」
「いや、祭りから三カ月から四カ月ほど……冬が開けるまでは滞在するって噂を聞いたが。まだ、王城の迎賓館に居るのかな? もしかしたら、教会に行ったら会えるかも知れねーな」
「……っ」
「あ、行っちまった。アイツってあんなに機敏な動きが出来たんだな」
「俺も見に行こうかな?」
「俺はルシャナちゃんの親衛隊をやめる気はないが……一応、見に行ってみようかな? 今後、あの美しいローラ様を二度と拝むことは出来ないかも知れないし」
へー俺は人ごみの影響で死んでいて見ることができなかったが、聖女様か……やっぱり興味あるな。そんなに美しいのだろうか? 後で、ホップを誘って教会に行ってみようかな?
「リーダー、ちょっといいか?」
「ん? 何だ?」
「この前、ブレインの森に入って狩りをした奴が話していたんだが。青い鳥を見たっていうんだ」
「……青い鳥? まさか、英雄の三獣か?」
「いや、見た奴も一瞬だったとかで正確な情報か分からんが」
「なんだ、そうか。それにしても幸福を呼ぶと言われる青い鳥か……出会えたらギャンブルが強くなるかな」
「どうかな。それで、これが本題なんだが……俺はブレインの森に青い鳥を探しに行くから、パーティーを脱退したい」
「へ?」
「だから、パーティーを脱退したい」
「へ?」
「だから、パーティーを脱退したい」
「まてまて、ウチのパーティー唯一の魔法使いであるお前に抜けられたら、困るって!」
「しかし、これは決めたのだ。俺は青い鳥を探しにいくだ」
不幸な奴がいるな。
しかし、ノヴァやシルバの白い狼と並ぶ英雄の三獣の一体青い鳥が、ブレインの森に出現したのか……?
見てみたいところだが、その青い鳥がシルバ級の力を有しているとなると……もしものことを考えないで会いに行くのは自殺行為に等しいし。
魔法の使えない俺では分が悪いからなぁー。
「そういや、聞いたか?」
「なんだよ」
「サンチェスト王国ももう終わりじゃねーかって話」
アレンはその噂話を聞くと目を見開いて、表情を強張らさせた。
そして、今聞こえてきた噂話をしていた冒険者に問いただしてやりたい気持ちを抑えるように手で膝をギュッと掴むように抑えた。
「噂だよな……」
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