第104話 ルーカス・ボルメー。
「はぁはぁ……」
重そうな斧を担いだルーカス・ボルメーとルーカスがリーダーを務めるゴールドアックスと言う冒険者パーティーのメンバーであった五人の男達がボロボロ格好になりながら森の中を走っていた。
遠くからオーンっと遠吠えが聞こえてくる。
その遠吠えを耳にしたルーカス達は体をビクンと震わせて立ち止まる。そして、遠吠えのした方へと視線を向けた。
「クソ……アイツら、まだ俺達のことを狙って居るのか?」
「あぁ……一匹仕留めたのは良かったが……仲間があんなに集まって来るなんて」
「あのな。それは依頼書の討伐対象の魔物の特徴ってところに書いてあっただろう?」
「なんだと、俺はまだ字がほとんど読めないんだ。わかる訳ないだろ?」
「は、馬鹿は黙っていろ」
「ふん、知っていたのに、対処もできなかった奴が何を言ってやがる」
「くそ……だから、俺は反対したんだ! C級の魔物を狩りに行こうなんて!」
「なんだと? お前だって言ってただろうが、銀翼の連中はC級の冒険者の分際でC級の魔物を狩ることができたんだ……俺達だってできるって!」
「ぐ……できるかもと言ったんだ! 大体、お前が考えなしなことを言っているからこんなことになっているんだろ?」
内輪もめを始めた仲間達を見ながら、ルーカスは声を上げた。
「お前らいい加減にしろ」
普段なら、ルーカスの言葉にはちゃんと聞き入れる仲間達である。ただ今は、ルーカスは仲間達から一斉に睨まれた。
そして、今までの不満が爆発したかのように仲間達が不満を口にする。
「なんだと、元はと言えば……リーダーのお前がちゃんとしていないからこんなことになったんだろ!?」
「そうだ。そうだ。たった三人組の銀翼にだって成果で敵わないのは、お前が仕事をちゃんと見極めることができてないからじゃないのか?」
「それに、何でお前だけ、装備が良いんだよ! 報酬の分配がおかしいからじゃないのか?」
「あの化け物に囲まれたのはお前が自分の力を過信していたからじゃないのか? 大体、最初は偵察って話だったじゃねーか! それをお前が何も考えずに倒しに行くから!」
「今日、仲間がいっぱい死んだのはお前の所為だからな! それにギルドには内緒で出てきたから助けも期待できない!」
ルーカスは仲間達の普段とは違う表情と言葉に、表情を強張らせる。そして、一歩後ろに下がった。
な……なんだよ。お前らだって……。
行けるって言っていたじゃねーか。
C級の冒険者である銀翼にできたことが、B級の冒険者である俺達に出来ない訳がないって言ってたじゃねーか。
全部……全部俺の所為かよ。
いっぱい……仲間が死んだ。冒険者ギルドからの助けも来ない……クソ!
クソ! 何を間違えたんだ……クソ。
仲間達からの罵倒を受けて、ルーカスは頭の中で弁解する。しかし、顔を白くして……その場に膝を付くのだった。
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