第66話 復讐。

 時間を遡らせて、アレンが国外追放されて三週間。


 ここはサンチェスト王国の王都、その古い住居が立ち並んでいる一般市民が多くいる地区。


 夜も更けてきて、貴族が多くいる華やかな地区に比べて街灯も少なくて薄暗い。


 さらに奥まった路地に入っていくともう真っ暗。


 そして、不衛生で異臭が鼻をついて、ネズミ同士が鳴き声を上げて、喧嘩していた。


 その路地に暗くてよく見えないが一人の女性がやってきた。


 女性がやってきたと同時にネズミ達が一斉にその場を離れていく。


「ここにはまだ人が来てないか……はぁ」


 女性は一人ごちると、路地の壁にもたれるように座り込んだ。


 そして、曇って月も星も見えない空を見上げた。


「あぁ……臭い。まさか私がここに隠れるとは思っていないだろうなぁ。けど、アレンが言っていた通りだった。魔法をいくつも事前に仕込んでいなかったらあそこで私は死んでいた」


 その時、雲が晴れて月が顔を出して女性が照らし出された。


 女性はアレンを殺そうとした魔法使いのローリエ・ファン・ルートベンであった。


 ローリエはゆっくりと立ち上がった。


「……アレンの言っていたフータスまでもう少し」


 ローリエは壁に手を付けて立ち上がった。


 ローリエの手が壁に触れた場所……そして、ローリエが座っていた場所には赤い血痕が残される。


 よたよたと歩き出したローリエの通ったところには点々と血液が零れ落ちていた。


「必ず……復讐してやる」

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