第55話 ヒポルテ草。
アレンが向かったのは買い取りカウンターであった。
「こんにちは」
アレンは買い取りカウンターで何か書類を書いていたゲルドに話しかけた。
「うお、何だ。坊主、今日は女連れか?」
「ん? あぁパーティーメンバーなんだよ」
「それで、今日も何か売りに来たのか?」
「あぁ……これって売れるかな?」
「ん? 何だ? 何だ?」
アレンは背負っていた二つの麻袋の内、一つを買い取りカウンターの上に乗せた。その麻袋を目にしたゲルドは興味深げに、麻袋の封を開く。
「お、おぉ。これは【ヒポルテ草】か? しかも、こんな大量に……」
「確か、まぁまぁ珍しい奴だよね?」
「おう。【ヒポルテ草】はかなり珍しい薬草だ。よく分かったな、普通の草と区別するのが俺達でも難しいのに……」
「たまたまだよ。たまたま見覚えがあってね」
「もしかして、これ全部か?」
「いや、もしかしたら普通の草もかなり混ざっているかも知れない。その手間賃分だけ報酬を引いてくれていいから、鑑定してくれる?」
「分かった。見た感じ銀板五枚は固いかな?」
「え、そんなにするの?」
リナリーはゴミだと思っていた荷物が買い取り可能な物……しかも、銀板五枚と言う高額買い取りの対象の物だったことを知って驚きの表情を浮かべた。
ちなみに普通のD級の冒険者が一年で稼ぐ金額の平均は銀板五枚だと言われている。
もし、【ヒポルテ草】の買い取り金額が銀板五枚だった場合、アレンは一日……いや数時間で普通のD級の冒険者が一年で稼ぐ金額を稼いでしまったことになるのだ。
「うむ、【ヒポルテ草】は魔法薬の一つ肉体強化の効果がある【シードラル薬】の必須素材でな。高価なんだ」
「そうなんだ……」
「それじゃ、鑑定始めるが……量が多いから時間がかかるかもな。ほら、ギルドカード寄こせ」
ゲルドはアレンに視線を向ける。
アレンはギルドカードを取り出したところで、リナリーに話を振った。
「分かった。じゃ時間を潰しているね。ギルドカード……リナリーも出して」
「え? 私も?」
「え? どうした? 俺達はパーティーメンバーで対等なのだからクエストで得たお金は半々なんだろ?」
「そ、そうね。うん、あ……「ほらほら、さっさとギルドカード出せ。鑑定結果が明日になっちまうぞ」
リナリーが何か話しかけたところで、ゲルドの声で遮られる。
「……急にどうしたの? ほら、ギルドカード」
「ふん、なんでもねーよ」
アレンがゲルドの方へと視線を向けると、ゲルドはつまらないと言った表情で鼻を鳴らした。
「あ、そうだ。この後クエスト受けるから、ギルドカードを確認したすぐに返して」
「わかったよ! ほんと……ガキの癖に女とイチャイチャしやがって」
ゲルドはアレンとリナリーのギルドカードをひったくると、そのギルドカードを持って買取カウンターの奥へと行ってしまった。
その日はもう一度草刈りのクエストを受け、【ヒポルテ草】の買い取り金を受け取り、次の予定を決めたところで、アレンとリナリーは別れることになった。
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