第35話 聖堂。
正面の建物の扉のドアノブにアレンが手をかける。
「……鍵はかかってないなぁ。ここまでくる道中は鍵が厄介だったのに」
アレンはドアノブを回して、扉を少し開けて中を確認する。
正面の建物の中は手前には椅子が並んでいて、その先には遠くからでも分かるほどの大きな十字架が飾られていた。
ここは教会の聖堂のようになっていた。
ステンドガラスのはめられた窓がいくつも並んでいて、外から差し込む光がミステリアスな美しさを醸し出していた。
「は? なんだ? 教会の聖堂?」
「どうしたんですか?」
アレンの後ろで控えていたホランドがアレンに問いかける。
その質問にアレンは答えあぐねる。
もう見てもらった方が早いと判断したアレンは危険性がないのを確認した後、扉を開けてホランド達と聖堂の中に入って行く。
「本当ですね。教会の聖堂みたいなところですね」
ホランド達は興味深げに聖堂の中を見回した。
ただユリーナ、一人だけは聖堂の壁画がある方へ視線を向けていた。
「アレンさん……」
「ん?」
「アレ」
ユリーナは十字架の少し前のところにあった綺麗な女性の像を指さす。
そして、その綺麗な女性の像は紫色に輝く石を掲げていた。
「お……アレは魔晶石だな。それにしても……」
アレンはユリーナが指さした綺麗な女性の像の前までスタスタと歩いて行く。
「大きな魔晶石だ。ここまで大きな物は初めて見た」
「そうですね」
「凄い……」
「ふすん」
「この大きさだと金板何枚になるか分からないほどッス」
アレンの隣にやってきたホランド、リン、ユリーナ、ノックスがアレン同様に魔晶石を見つめながら口ぐちに言った。
「ここまですごいお宝があると思っていなかった」
アレンが魔晶石に触れて言う。すると、ホランドは頷く。
「はい。国家が強権を発動して強制的に確保に動くレベルの品です」
「だろうな。しかし、このサイズの魔晶石を手に入れるには魔物の中で一番厄介だと言われる天災級の魔物を倒すしかないだろうな」
「世界に十九体いると言われる天災級の魔物……それぞれにナンバーが割り振られていて『N級(ナンバーズ)』と言われているんですよね。出会ったら命を諦めるほどの脅威とギルドの教本には記載がありましたね」
「あぁ、アレは化け物だ。S級の魔物が可愛く見えるぞ?」
「え、今の口ぶりだと。アレンさんは……ナンバーズを見たことが?」
「一度だけな」
「ほ、本当ですか? ちなみにどの?」
「ナンバー十三、ルビア・シャイン・ハイレーゼ・レッドドラゴンだ。……ルビアは本当に化け物だった。本当に強かった」
「強かったって……え? え……えええええ! まさか、戦ったんですか?」
「……戦った。いや、アレは戦いにすらなってなかった」
「ア、アレンさんでも戦いにならなかったんですか?」
「全くな。生き残ったことすら……奇跡だと思う。いや、生きていたのはルビアの気まぐれだったのかもな」
アレンは普段と変わらない様子で言った。
しかし、アレンにホランド……そして、リン、ユリーナ、ノックスは何か感じ取って、それ以上何も聞かずに黙った。
少しの間があいて、アレンがホランド達の方へ視線を向ける。
「まぁこの話はどうでもいいか。さ、早く他の場所の探索も進めよう。今日はベッドで寝るんだろ?」
「そう、そうですね」
「今日はベッド」
「ふすん」
「は、はいッス」
アレンの問いかけにホランド、リン、ユリーナ、ノックスは頷き。探索を再開するのだった。
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