第20話 マッサージ。
食後、アレンは早速マナの流れを正すことで魔法を使えるようになると言うマッサージをおこなっていた。
そして、そのマッサージを受けることになったホランドの場合。
「あいいたたたた!!」
「我慢しろ。男の子だろう?」
「いや! これは……! あいいたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!! 待って! 待って! 死んじゃう!」
「うわーこれはだいぶ流れが悪いな」
リンの場合。
「あん……」
「ん? リンは悪くないな」
「あっああ、そこだっだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ……あぁ……いいくううう。あん」
「ここか? 確かに……」
注、マッサージしているだけです。
ノックスの場合。
「い、痛いッスか?」
「痛くないか?」
「ホランドとリンには悪いッスけど。普通に気持ちいいマッサージッス」
「そっか、良かったな。ただ、お前もやっぱりマナの流れに淀みがある」
ユリーナの場合。
「あ……気持ちいい」
「ユリーナは普段から魔法を使っているだけあって悪くないな」
「あ……ん。そこそこ気持ちいい。あうう……ん。あ、あ、あ、い……く」
「もう少しマナの通り道を広げられるかも知れないな」
注、もちろんマッサージしているだけです。
ノヴァの場合。
「うむ……」
「俺は動物のマッサージはやったことないんだけど」
「なかなかじゃな」
「そうか、良かったな」
夕食後、アレンはホランド達とノヴァに、マナの流れを正すマッサージを行い。
そして、再び焚火を囲んでいた。
相当に治療が痛かった様子のホランドがげっそりした表情をしている。
そして、多少の痛みがあった様子のリンとユリーナは内またでもじもじとして、俯いて分かりにくいが頬を赤らめていた。
最後に何ともない様子のノックスだけが体を動かしながら動きを確認しているようだった。
ちなみに、ノヴァはマッサージで眠たくなったのかアレンの膝の上で丸まって寝ている。
「どうだった?」
「「「……ッ」」」
アレンの問いかけにホランドとリン、ユリーナは俯いたまま答えられない。
その様子を見てノックスが遠慮しがちに答えた。
「その……俺は普通に気持ちよかったッス」
「……そうか。このマナの流れを正す治療は人によって合う合わないが結構あるからな」
「そのようッスね」
「んー痛かったりする奴は魔法使いたかったら、我慢してくれと言うしかないんだよな」
「ただ、相当に痛かったッスかね? ホランドのあんなに痛がる声を始めてみたッスから」
アレンとノックスはげっそりした様子が変わらないホランドを見る。
そして、アレンは少し言いづらそうに口を開いた。
「まぁ……まだ一日目、明日もやらないとなんだけど」
アレンの言葉が聞こえてきたホランドとリン、ユリーナの三人は俯いたままビクッと体を震わせた。
「そうッスよね。俺には痛いと言うのが分からないッスから……何とも」
「そうだ。ノックス、一日目の治療を終えて何か体に変化はあったか?」
「んーなんか、すっきりとした感覚はあるッス」
「いや、マナを感じるようになったかと聞いているんだが……ちょっと、手を出してみろ」
アレンに言われた通りノックスは手を前に出す。すると、ノックスの手の上にアレンが手を乗せた。
一分ほどして、アレンの手の平が薄く光りだした。
「なんか、手の平が熱くなってきたッス」
「これがマナだ。お前の中にこの力がないか瞑想……目を瞑って集中しながら探してみろ」
アレンがそう言って手を離すと、ノックスはさっそく目を瞑って俯いた。
「わかったッス」
ノックスが瞑想に入って十分ほど経ったが、その間誰もしゃべらなかった。
ホランド、リン、ユリーナは表情が優れないように見えるものの、さっきのアレンとノックスの会話が気になっていたのかノックスの方に視線を向けていた。
沈黙を破ったのはノックスであった。
「あ……これが? マナッスかね?」
「マナを感じとれてもしゃべらなくていいぞ? 瞑想が乱れるだろう。……それでできたらどこか……そうだな。右手にでもマナを集めるようにしてみろ」
アレンの言葉を聞いてノックスは軽く頷くと、右手を前に出した。
ただ、うまく行かない様子でノックスの眉間に皺が寄る。
さらに十分するとノックスがフハァーっと息を吐いて、目を開けた。
「……」
ノックスは無言のまま、自分の右手を見つめていた。少しおいて、アレンがノックスに問いかける。
「どうだった?」
「すごい難しいッス」
「まぁ、まだマナの流れを正せた訳ではないからな」
「けど……生まれて初めて感じるものがあったッス! なんか、感動ッス!」
「そうか、それは良かったな。今の瞑想は明日からは毎日朝と夜にやって、マナを感じ取れるようになれ。魔法はそれからだ」
「はいッス!」
ノックスの元気のいい返事を聞くと、アレンは他の三人に視線を向ける。
「お前達もだからな」
「は……はい」
「わ、わかったわ」
「わかった」
アレンの言葉を受けて、ホランド、リン、ユリーナは力なく頷き答えるのだった。
こうして、ユーステルの森に入って一日目の夜が過ぎていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます