第28話:メリアドール姫と魔術師ギルドへ 後編

 [魔術師ギルド]とは、魔法の研究施設であり、同時に[魔導機関]というエネルギーを管理する組織である。

 故に、いわゆる戦うための技術を広め、怪我の補填や保証をしてくれる[戦士ギルド]や日雇いの傭兵の集まりである[冒険者ギルド]とは違い、[魔術師ギルド]は国と密接に関係しているのだ。

[魔導機関]とは、魔法の流れ、魔力そのものを建物に配分し、灯りをともしたり、お湯を沸かしたりと、人々の生活の根幹である。


 千年前の[竜戦争]の時代、ザカールが基礎を作り、やがて賢王ビアレスが実用化させたのだが、そもそもが敵が作り出したものであるため、千年が経つ今でもその根幹の解明には至っていない。

 農地では風車や水車使われているが、それで魔力は発生しないのだ。

 であれば、[魔導機関]の保有数こそが国の豊かさのバロメータであり、世界に二十八基しかない機関の内七つを保有する[グランイット帝国]がいかに強大か、他国にとって無視できない存在なのかがよく分かる。


 三百年前の[魔法大戦]で三基もの機関が失われていなければ、もっと世界は豊かでったかもしれないという思いが、魔法エネルギーを追い求める[魔術師ギルド]の者たちにはあるからこそ、甦った[古き翼の王]にも興味を持つのだ。

 アークメイジが言う。


「さて、儂のミラをこちらに返さぬというのなら……それでも尚、力だけ貸せなどと都合の良いことを言うのなら、こちらの条件を飲んでもらう」


 詭弁である。そもそもアークメイジにミラを見捨てるという選択肢は無い。それはメリアドールの確信である。

 だが、アークメイジの個人的な感情であることもわかっていたため、これは他の魔道士を納得させる為の政治なのだとも理解していた。

 それが何なのかも、概ね想像がつく。

 わざわざ、アークメイジは[古き翼の王]を指名したのだから。


 女王に黒竜の血や鱗を提供を求めたとの情報も入っている。

 それは――情報統制が為された新たな驚異、[竜化の言葉]の研究に必要なことなのだろうとは想像がつく。

 あの[言葉]は、メリアドールでも怖い。

 もしもメスタやリディルにあの[言葉]が向けられてしまったらと考えると、恐ろしくなる。

 たぶん、メリアドールはそのドラゴンを殺せない。

 かけがえのない、友人なのだから。

 アークメイジが[古き翼の王]を見、言った。


「お前は[従属の言葉]を使いこなした。それが[古き翼の王]だけが使える[言葉]であることは、理解していよう? 我らが求めるのは[言葉]の知恵と貴様の[血]だ」


 [古き翼の王]は驚きもせず、何かを考える素振りをしてから言った。


「できることはしよう。それでミラ君を救ってくれるのだろう?」

「そうだ。出来損ないの小娘よりも、役に立たぬテモベンテよりも、儂の知と力はミラの為になる」


 アークメイジが口元を歪め言うと、黒竜は「――だが」と前置いてから続ける。


「理由は知りたい。先の戦いで、人がドラゴンに姿を変えられたのを目撃した。

 ――それを、殺してしまった責任もある。

 ……あのドラゴンたちは、[魔術師ギルド]の塔に運ばれたと聞いている。

 ……であれば、既に血はあるのではないか?

 それに、[言葉]の知恵と言われても困る。私はこれが、ただできるから使えているだけなのだ」


 情報を与え過ぎだ、とメリアドールは[古き翼の王]を横目でじとりと睨んだが、彼が気づいた様子はない。

 生来のお人好しか、とメリアドールは内心でため息をつき、アークメイジの反応を待った。


「お前は、ここに来て何か食事をしたか? 空腹を感じたことがあるか?」


 [古き翼の王]は困惑し、「いや、ない」と首を振った。

 アークメイジが続ける。


「[暁の勇者]は、お前について良く研究したようだ。

 『[古き翼の王]は、ドラゴンの姿をしているものの、その本質はドラゴンでは無く、

 概ね生物と呼べる存在とはかけ離れている』とな。

 ……[翼の王]よ。そんなことが本当にありえるのか?

 生きる――行動するということは、体の内のエネルギーを使う行為だ。お前は、無限なのか?

 いいや、違う。お前はただ、食事の生態系が違うだけだ」

「それは、どういう……」

「魂を、食らうのだ」


 それが、[暁の勇者]が激戦の末に辿り着いた結論であり、同時に[古き翼の王]討伐の鍵となったのだ。

 そしてメリアドールの左手に記された[刻印]は、誰によってつけられたのかも。

 黒竜が言う。


「私は誰かの魂を食べた覚えなど無い。食べ方すらわからない」


 その件に関しては、歴史を知るものとして、メリアドールも[古き翼の王]を警戒していた。

 [古き翼の王]の食事は、口では無く全身から魂を吸収する形で行うのだ。


 しかし、彼のそばにいる者たちで不調を訴えたものはおらず、そこがメリアドール、ひいては国側の判断を迷わせることになっている。

 確かに[古き翼の王]の[言葉]を使った。確かに食事はせず、無限に動き続ける存在である。まさしくその漆黒の姿は[古き翼の王]そのものである。

 だが、魂を喰らわない。


 そして、現在国では二つの可能性が提示されている。

 一つは、それが[暁の勇者]が行った何らかの封印であるのではないか、ということだ。

 そもそも[暁の勇者]は[古き翼の王]をどのようにして倒したのか。それは歴史に記されておらず、遥か北の大地に追い詰め、打倒したとしかわかっていない。

 故に、本当は[古き翼の王]は倒されておらず封印しただけ、あるいは[暁の勇者]が自らの功績の為に倒したと嘘をついたのではと言い出すものまで現れた。


 そして、もう一つの説が――。

 アークメイジは言う。


「お前は……[翼の王]よ、既にたらふく食べた後だとは考えなかったのか?」


 黒竜が息を呑む。

 それは即ち、やがて腹を空かし人を襲うということである。

 封印ならば解明し、〝次元融合〟の先から新たなエネルギーを得る手段を模索する。

 そうでないのなら直ちに殺すべきだ。

 ……結局、個では無く全としての国は、彼を人類の敵、邪竜だという見解を維持している。

 故に、メリアドールは、


([竜化の言葉]があるのだから、彼もその被害者だとは考えないのか?)


 という言葉を口にすることはできない。

 世間全般に対策のできていない驚異を広めることになってしまうからだ。

 だが、どうやらアークメイジには違う思惑もあるようだ。

 つまり――。


「魂を食らう方法を、我々は解明したい」


 そして人は現在のあり方を超越する。

 いや、そうしたいのは自分だけ、か――?

 それは即ち、不老不死への探求である。

 魂を貪り生きながらえる、人の姿をした[古き翼の王]を生み出す行為である。

 メリアドールは、アークメイジが本質的には敵であると理解しながら、互いにこうして利用せざるを得ない状況が嫌だった。

 だが、嫌でもそうならざるを得ないのが、現状である。

 アークメイジが続ける。


「[古き翼の王]は、ドラゴンの姿を借りた魔神である。

 〝次元融合〟を単独で引き起こし、

 その先にある[精霊界]、[魔界]、[神界]からエネルギーを奪える唯一の存在である。

 ……これを解明できれば、どれだけ世界が豊かになるのか考えたことは無いか?

 そうなれば人は、[魔導機関]に縛られずに生きていける。

 少なくとも三百年前のようなエネルギーを奪い合う争いはなくなるのだ」


 そうして、次は純粋に思想のみの対立が残るのだろう。


「お前がこうしてここに蘇ったことで、それは確信に変わった。

 お前は戦いに傷つき休息を余儀なくされた。

 そして門を開き逃げ延び、その先にある魂を喰らっていたのだ」



 ※



 そうか、と黒竜は理解する。

 あの時、あの瞬間。あの夜の帰り道。

 妹に伸びた黒い闇の正体。

 ようやく、彼は理解した。


(俺は、食われたのだ)


 と。

 しかし、と彼は思う。

 では俺のこの意志は何だ? 何故俺は、[古き翼の王]ではなく俺としての意志が残っているのだ。

 牛の肉を食べたとして、人の脳が、意志がその牛に支配されるのか?


「私に記憶が無いのは何故だ――?」

「さて、そこまでは儂もわからぬ。だがな、[暁の勇者]は用心深い者たちよ。

 [古き翼の王]の先手を打つことくらいは平気でやる。

 ……お前に仕掛けられた何らかの力が、発動した結果であろう。無論、それも解明する」


 黒竜は、アークメイジのことを嫌いではないと考えていた。

 人の上に立つものとは、どういう者がふさわしいのか。

 少なくとも黒竜は、無能な善人よりも、有能な悪人の方がマシと考えるタイプである。

 そしてその悪人が、建前上とは言え人のためだと理屈を述べるのだ。

 エネルギーを奪い合う争いを無くしたいと言って見せたのだ。

 彼女の第一印象は最悪であったが、黒竜はそれを邪悪ではなくただの嫌なヤツと判断した。

 しかし、とも思う。


「それが解明されれば、人の体を奪う魔法も作れるな?」

「だから我らが最初にやるのだ。無法者の手に渡す前にな」


 それは、まるで最初から用意されていた答えであるかのごとく、アークメイジの口から滑らかに述べられた。

 気に入らないな、と黒竜は直感したが、だからと言っていまここで何かをできるわけではない。

 せめて人間の姿ならばと思うのは、ないものねだりである。

 だから、黒竜は彼女の目を見て言うのだ。


「わかった、従おう」


 彼女の眉間の皺が濃くなる。


「正直落胆した。[暁の勇者]に牙も爪ももがれたと見える。

 ……もういい、お前にはなんの才も感じない。魔力に関しても酷い有様だ。

 [古き翼の王]、そして最初の[司祭]ザカールは共に[全属性]持ちであったという。

 だがお前はどうだ? 何も無い。そもそも魔力がお前に宿っていない。

 それは、魔法が使えないということに等しい。その隣にいる小石以下の存在でしかない」


 酷い言い草である。

 しかし、その辛辣な言葉は、黒竜が[古き翼の王]であればこそ意味があるのだ。

 元人間である身としては、彼女の言葉は見知らぬ他人に対する悪口でしかない。

 いやむしろ、[古き翼の王]は自分自身の敵かもしれないのだ。

 それに、魔法が使えないと言われても困る。

 そんなもの、現代人の観点から見れば当たり前なのだから。


 だから黒竜は彼女の皮肉の多くを聞き流した。


「そうか。私も、実験の結果には興味がある。〝次元融合〟の先にエネルギーがあるのなら、私も見てみたい」


 そして、元の世界に帰りたい。

 黒竜は、本質的には彼女は自身の敵では無いと判断した。

 あまり好きにはなれない味方、と言ったところだろうか。

 しかし、それで良いとも考えている。

 そうやって、社会は回るのだと。

 最後に、黒竜はなるべく丁寧な声色を意識して、言った。


「私の血や皮膚の採取で、ドラゴンに変えられた人たちを救えるかもしれないのなら、いくらでも提供しよう」


 情けは人の為ならず、という言葉は、人のためにならないという意味では無い。

 自分のためだという意味だ。

 ドラゴンを人に戻せるのなら、それは自分に取っても希望なのだ。


「管轄は我ら[魔術師ギルド]にある。貴様ごときが知るすべは無い」


 アークメイジがすぐに言うと、黒竜も返す。


「だが、結果が出れば必ず知れ渡る。知るのはその時で良い」


 するとアークメイジは黙り、舌打ちと共に「獣風情が」と吐き捨てた。



 ※



 そして――。

 テモベンテ家の二番隊宿舎警備に、[魔術師ギルド]の者たちが新たに加わってから一週間が過ぎた。

 無論、その中にも警戒すべき者が潜んでいる可能性はあるが、アークメイジのミラへの溺愛っぷりを見れば多少なりとも気を許してしまうのが黒竜の甘さである。


 ミラが寝かされれているベッドにはアークメイジ直筆の[付呪]が新たに施され、彼女の手編みのケープやローブがミラの為に届けられた。

 誰しも、特別な相手というのはいるものだ。才能主義者でありメリアドールに辛く当たる彼女にとって、ミラがその特別な存在なのだろう。


 それでも、人の体を奪えるかもしれない研究をしている以上、ある種の可能性は否定できないが。

 とは言え、この世界の知識に乏しい黒竜にできることは限られている。

 ならば、いますべきことはそれを学ぶことだと考えた黒竜は、[ハイドラ戦隊]の権威をフルに活用し行動を起こした。


 [ハイドラ戦隊]の一番隊を示す記章には、国の象徴である不死鳥のマークが描かれており、それを見せれば大抵の場所は顔パスで入ることができた。

 これは、非常に大きな意味を持つ。

 先の戦い。[冒険者ギルド]での仕事や態度。牢獄での模範的な行い。総合的に判断された結果、少なくともこの[城塞都市グランリヴァル]において黒竜の地位は、[一般市民]として扱ってもらえるようになったのだ。


 いやそれどころか、もらえた記章のおかげで[ハイドラ戦隊]の騎士扱いでもある。

 貴族でこそ無いが、そんなものはどうでも良い。


 今最も大切なのは、[グランリヴァル]の[雲地区]に位置する[大書庫]に、堂々と入れることなのだ。

 ここは高名な学者しか入ることが許されない、古く大きな書庫である。

 無論、帝都にあるという[禁書庫]とは比較にならないが、それでも多くの知識が詰め込まれているのだ。


 残念ながらこの体にあった椅子は無いので、司書に頭を下げ頼み込み、大理石の床で本を読む許可を得た。

 後は棚から本を選び、鉤爪で慎重にページをめくるだけだ。


 そして黒竜は様々なことを学んだ。

 [暁の勇者]の名や、戦い。ドラゴンの歴史。彼らの故郷や知識。

 三百年前の、人と[ハイエルフ]の戦争。

 資料の中に、[古き翼の王]の[言葉]を見つけた黒竜であったが、ほとんどを理解することができず、それがまた黒竜を悩ませた。


(俺が[古き翼の王]の体を奪ったのなら、全部使えるか全部使えないかのどちらかじゃないのか? 何故使えるものとそうでないものがあるんだ?)


 その答えはついに見つからず、ミラが目覚めることもなく更に二週間が過ぎた。


 



「どうとかこうとか! 儂のミラを守るための[障壁の塔]を無事に間に合わせることができたのは、僥倖である!」

「………………」


 二番隊宿舎の四方に、四階建ての石の塔が勝手に建造された。

 メリアドールは絶句して見上げると、建築を終えた[魔術師ギルド]の魔道士たちがげんなりした様子でのそのそとやってきて、


「徹夜だったんすよぉ……」


 と愚痴言う。

 別の魔道士が深々とため息をついて、


「あの人こだわりすぎるんだよなぁ……。おい、起きろ」


 と横で寝ていた別の魔道士を軽く蹴る。

 アークメイジは満足した様子で塔の頂上からふわりと飛び立ち、二階建ての二番隊宿舎の屋根に着地した。


「[魔術師ギルド]による自衛の措置は、まだ生きておる! 故に、我がギルド員の命を守るためにはあらゆる手段を講じるのは、道理である!」


 やがて、宿舎の扉が開かれると、げんなりした様子のカルベローナが姿を現した。

 彼女はメリアドールの姿を確認し、じとりと睨む。


「何なんですの、あの方……」


 メリアドールが何かを言うよりも先に、アークメイジが高らかに言う。


「テモベンテ家の魔法剣士カルベローナ嬢には、儂のミラに良くしてくれたことへの礼は贈り物としてさせてもらおう。だが今は、塔建設の許可がスムーズに通った事への感謝を」


 メリアドールが小声でカルベローナに問う。


「……僕聞いてないんだけど」

「わたくしだって聞いてない……」

「許可出したって?」

「ミラベルさんの面倒を見たいっていうから」

「糞ババア……」


 思わず恨み節が口に出る。

 ふと、メスタとリディルが騒ぎに気づいてやってきた。


「カルベローナのとこに[障壁の塔]? 昨日は無かったよな?」

「はえー、メリーちゃんまた騙されたんだ?」


 アークメイジの片眉がひょいと釣り上がり、視線がメスタへと注がれる。


「そこの角持ちの小娘! 儂の見間違いでなければ、名はメスタ・ブラウンか!」

「え、あ、な、何だ……?」


 メスタが困惑すると、アークメイジは返事も待たずに屋根からふわりと飛び降り、メスタの真正面へと着地した。

 リディルが半歩引きアークメイジの視線からそれるようにして移動し、メスタが一歩後ずさる。

 アークメイジは一切を無視してそのままメスタの髪の毛をくしゃくしゃと撫で回した。


「な、な、何をするっ!」

「良い、騒ぐな。――リドル卿の愛娘! 立派に成長したようだ……!」

「――先生、を?」

「儂も三百年生きておる。リドル卿には世話になった。

貴公が赤子の頃には、儂が代わりに面倒を見てやったこともあるのだ」

「ま、愛娘って……私は拾われただけで……」

「気高い竜人がヒュームに染まった考え方をするな。我らエルフは、魔法の繋がりを大切にする。

 そなたには血を超えた魔力の、絆とも言うべき縁が刻まれているのは見ればわかる。

 間違いなく我が友リドル卿の愛娘だ。困ったことがあれば儂を頼れ。力になろう。

 それに――ゲイルムンドの娘」


 視線を向けられ、リディルが微かに臨戦態勢に入る。

 アークメイジは嬉しげに口元を歪めた。


「良いな。今までの出来損ないとは違う。貴公は本物の剣聖である」


 そう言って彼女はメスタと同じように無理やりリディルの髪をくしゃくしゃと撫で回す。


「う、うひゃぁ」


 リディルが慌てふためいて声を上げる。

 アークメイジは直ぐに向き直り、言った。


「テモベンテの娘! 儂もここに住まわせてもらうが、異議は無いな? 既に部屋と私物は運び込んでおる」

「はあ!?」

「文句はあるまい? 貴公は一度、儂のミラの護衛に失敗している。

 ――敵がより強大であったことは、認める。故にこれ以上の責任の追求はしない。

 ザカールの復活と、[支配の言葉]の再来は儂でも読めなかった。

 だからこそ、最善を尽くすのだ」

「そ、それは理解していますわ……。でなくって、手続きの問題を言っているのです!」

「だからこうして今、言っているのだ。

 [竜戦争]から千年、[魔法大戦]から三百年、この国は平和の中にあった。

 今から国の許可を出させようとしても、奴らの腰は重いぞ?

 数世代前の剣聖の中には、剣を鞘の中で錆びさせた者までいたのだ」


 言いながらリディルを横目で見、


「当代の剣聖は違うようだが」


 と笑みを浮かべる。

 カルベローナが押し黙ると、アークメイジはぐっと彼女に顔を寄せ、低く言った。


「わかっているだろう? 貴公の一声で多くが進展する。なら、出せ」


 結局、カルベローナは折れ、アークメイジの同居を認める事となる。

 最後に、リディルが言った。


「結構良い人じゃん」


 と。

 メリアドールが人目を避けて蹴り飛ばした小石が黒竜の後頭部に当たり、彼は、


「あ痛っ!」


 と悲鳴をあげた。

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