王族への報告
『勇者様ご一行、いらしゃいませ』
しばらく風呂に入っていないため、王族に
客室に通され、お茶とお菓子を出され、我が家のようにくつろぐ麻宗家一行。ちなみにカーライルたちは他の部屋をあてがわれている。
風呂に入って頭を乾かす。やはり結構汚れていたようで、ごっそりと汚れが落ちた。子供たちの世話をカーライルたちに任せっぱなしだったため、久々に世話を焼く。その間
準備が整ったので、カーライルたちに準備状況を聞いてみる。あちらも大丈夫なようだ。
なので、城の従者に準備ができたことを伝える。
しばし待たされ、
『謁見の間へお越し下さい』
お声がかかった。
『勇者様のおなーりー』
謁見の間へ入ってみると、そこに
礼をしたまま王族の言葉を待つ。
『頭をお上げ下さい』
了解を得たので頭を上げる。
『私はパトリシア・ルイジアンヌ。王妃である』
王妃様だった。
『して、今回は何用だ?』
『私の妻、
『私の本名は、エリアリアーナ・バーンクリットと申します』
『そ、そなた、エリアリアーナと申したか』
『はい、左様です』
『…秀才エリアリアーナが異世界から戻って来よったか』
…うちの妻、秀才だったんだ。
『報告は以上か?』
『はい』
『それでは、もう遅い。今日は泊まっていくがよい』
『ありがとうございます』
『それに、城の図書館は出入り自由とする。読みたいときは城の者に伝えよ』
『ありがとうございます』
俺たちは客間へ戻り、一休みする。お茶菓子が美味しい。
しばらくして、
『お客様がお見えです』
客?俺たちに?誰だろう。
ドアが開いた瞬間、
『お姉様!』
『アヴァリンですか?』
『はい。お久しゅうございます。アヴァリンです。よくご無事で…』
アヴァリンという女性は目に涙を浮かべている。
『私のせいで、ご苦労なさったそうで、申し訳ございませんでした』
そのままアヴァリンという女性は
ひとしきり泣いたと、
『私はアヴァリン・バーンクリット、エリアリアーナお姉様の妹でございます』
『私は夫の
『まぁ、お姉様、あちらでご結婚なさったのですか?』
『えぇ。今では、夫、
『あら、そうだったのですか』
『夫が召還されなければ、私は記憶を失ったまま、こちらに戻ってくることはなかったのですよ』
その後、アヴァリンさんにも座っていただき、家族と他愛もない話しをする。
『屋敷にお寄りになったのですか?』
『えぇ、シンロブモントおじさまと、セバテベスしか、
そうか。お屋敷で会ったおじさまは、シンロブモントという名前なのか。覚えておこう。
『それは時期が悪うございました。今、父上と兄上たちは、ビッグゴスゴリルが目撃された、クロッドキューブの森に討伐に出ております』
『…昨日、私、ビッグゴスゴリルを倒したのですが、ビッグゴスゴリルというのはいっぱいいるのですか?』
『いいえ、ビッグゴスゴリルはこの世に一体だけ、魔王直属の部下でございます。 …ん?倒した?』
………
……
…
『えぇぇーーー!!!』
何でも、ビッグゴスゴリルは、この世に4体しかいない、魔王直属の部下の1体なのだそうだ。俺たちはこの4体を全て倒し、力をまた付けて、魔王に立ち向かわなければならないのだそうだ。
…まぁ、俺たちは、
アヴァリンお嬢様は、すぐに手紙を書き始め、魔法でミニチュア飛行機を出し、それに手紙を入れ、空に飛ばした。
『これでお父様方は早めに帰って来ますわ。しかしまぁ、帰って来て早々、ビッグゴスゴリルを倒すとは思ってもみませんでしたわ』
あの飛行機はお貴族様の連絡手段のようだ。
『あら、お返事かしら?』
しばらくして、飛行機が帰って来た。飛行機は、アヴァリンお嬢様の元で止まり、手紙を取り出すと、飛行機は跡形もなく消えた。
『お父様も兄上も、お姉様のお帰りを喜んでおいでのようですわ。ビッグゴスゴリルが討伐された以上、討伐対象がもう
アヴァリンお嬢様は、にこやかに笑った。そして、
『あら、いけない。もうお時間のようですわ。戻らなくては。お姉様もお気軽にお屋敷にお立ち寄り下さいな。それでは近いうちにまた会いましょう。今日はこれで失礼します』
アヴァリンお嬢様は帰っていった。
そしてその後はメシを食って寝た。
*
『勇者ご一行は様々は不思議な道具をお持ちですな』
『実に興味深いものですな』
ここはザガンガ王国の研究者のとある会議室。様々な研究をしている者たちが定例会議をしているのである。
『研究してこちらで作れないものですかな』
『作れるようになれば、この国も、さらに発展するやも知れませんな』
会議中、緊急の知らせが入ってきた。
『会議中だぞ。何用だ?』
『今入った情報によりますと、勇者様の奥様、
『秀才エリアリアーナ・バーンクリット様だと!それはまことか』
『はい。王妃様からのお知らせにございます』
『分った。下がれ』
『はっ』
伝令は下がり、会議室には沈黙が走った。1人の男によって沈黙は破られる。
『勇者様ご一行にバーンクリット家のご令嬢が
『というと?』
『対象は違えどもあちらも研究者。こちらの意図をくみ取り、いろいろと協力してくれるのではないかと思ったのです』
『『おぉー』』
その後も会議は落ち着いた雰囲気で進んだ。変わった物を持っているとは言われても、実際に使ったところを見た者は
*
「今日も天気だ空気がうまい!」
やはり家族では1番に目の覚めてしまった二郎。スマホをチェックする。うん。夕刻の神隠し事件はさらに尾ひれ、背びれを増やしてさらに大きくなっている。ネットでは、被害者として、まるで別人の名前があがっている。うん、誰の話だ?これ?
次に
「ネットも変わりないようね。でも、夕刻の神隠し事件は変わったことになっているわね」
「
俺たちが身支度を調えると、
「パパ、ママ、おはよう」
2人の子供も起き出す。
子供2人の身支度も済ませると、
『勇者ご一行様、朝食の準備が整いました』
俺たちは朝食へ向かった。
『遠いので飛ばしても大丈夫ですよ』
俺たちはパーティーメンバーと合流し、食料を買い込み、カーライルの案内で一路魔法の訓練ができそうな場所に向かっていた。
そこは見晴らす限りの荒れ地で、人っ子1人居ない。
『ここなら誰も用がありませんし人も寄りつきません。ここなら気兼ねなく、特大魔法の練習に最適です』
『いきなり初心者にそんな危ない魔法、教えないわよ。失礼ね』
…家族は適性もあるかどうか分らない初心者。そんな者が高度な魔法が使えるわけがない。いつもは適切に物事を決められるのに、そんなことも失念しているカーライルであった。
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