誘拐

『そこの車、止まりなさ〜い』

 爆速で暴走する車。その後ろからメガホンで注意喚起をする覆面パトカー。

「止まりそうにないっすね」

「そりゃ止まらないでしょ」

 大変だなぁと目で追いながら呟いた緑のイヤリングの少年に猫のようにふわっと欠伸をしながら答えた青いイヤリングの少女。

「大暴走やねぇ」

「ホントだねぇ」

 さっきコンビニで買ったパックのジュースを飲みながら少女は狐のように目を細めた。それに呟くように答えた少女の耳には水色のイヤリングが光っていた。

「何とかした方がええんかな」

「え、これどうするんです?」

「それなんよね」

 立ち止まった前に突っかかりそうになる三人の耳にもそれぞれ浅葱、赤、紫のイヤリングがついていた。

 手に持っていたのはコンビニのレジ袋。いまさっき買い出しに行ったお菓子やらジュースやらが入っていた。

「警察に任せれば大丈夫でしょ」

 青いイヤリングの少女が呟いた途端、大きな爆発音が鳴り響く。

「ダメそうやね」

「そうだねぇ」

 そう言って各々フードを被り出した少年少女たち。そしてそれぞれイヤホンを耳に指し、髪や靴紐を結び直した彼らはニヤッと笑った。

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