第169話 報告



<アリス>


テツたちを見送った後、クリストファーと共に国務長官に挨拶をしていた。

・・・

・・

「クリストファー君、まずは身体を休めたまえ・・君!」

国務長官がそう声をかけ、補佐官を呼んだ。

「彼を休憩室へ案内してくれないか」

「はい」

クリストファーは係に案内されて部屋を出る。


国務長官がアリスの方を見つめる。

「アリス君・・本当にご苦労だった。 これからは世界地図が激変するだろう」

国務長官がつぶやくように言う。

「それでだ・・君を暗殺しようとした連中だが、やはり反体制派の連中だったよ。 首謀者たちはとらえてある・・とはいうものの、全員ではないがね」

「国務長官、その者達はどうなるのでしょうか?」

「うむ・・まずは大統領に報告して、処遇を決めねばならないが・・おそらく消え去ることになるだろうと思うよ・・知らないうちにね」

国務長官が恐ろしいことを平気で話していた。

アリスは何も答えない。

「国務長官、私はどうなりますか?」

「うむ・・君の立場は変わらない。 我が国に貢献してくれるとありがたい。 大統領も帰還者の能力は把握済みだ。 それに世界の大国の在り方も変わって来るだろう。 中国は連合国になり、ロシアもその方向で動いているという。 君は我が国に所属してくれているだけでいい」

国務長官が言葉に詰まりながらも答えてくれた。


アリスは思う。

帰還者の能力を把握?

思わず笑ってしまった。

何を把握しているというのだ。

所詮は兵器としての情報くらいだろう。

実際にあのテツの戦闘などを見れば、SF映画かと思わされる。

把握したからといってどうなるというのだ。

1つの国など、その帰還者の気分次第で滅んでしまうかもしれない。

だが、アリスはそんなことを表面に出すはずもなく、素直にうなずいていた。


<イギリス>


レオが帰国していた。

女王に報告をする。

・・・

・・

「なるほど・・日本のあの帰還者は桁違いということですか。 私にはレオやソフィの能力でも想像を超えているというのに・・ま、先に友好国になっておいてよかったということですね。 わかりました・・ご苦労様でしたレオ。 まずは休憩してくださいな」

女王はそう言葉を残すとレオたちを下がらせる。

・・・

世界が変わるのですね。

もはや近代兵器などの武器では帰還者には効果がない。

となれば、世界にまだいるであろうその存在を早く掌握しなければいけない。

女王はそう思うと情報局の係を呼び出していた。


<ドイツ>


アンナがメリケン首相に報告を終えていた。

レオの報告とほぼ変わらない。

「なるほど・・やはりあの日本人は桁違いの能力者ということですか。 我々西洋人から見れば、ひ弱な感じですが、その内実は違うということでしょうね。 実際にあの人物からは、の状態でも妙な感じを受けていましたからね」

「は? しゅ、首相・・それはいったいどういうことですか?」

アンナは思わず言葉を出していた。

メリケン首相は微笑むと答える。

「えぇ、クソウ大臣と一緒に来たときがあったでしょう。 彼の仕草というか所作・・何か不思議と違和感を感じたものです。 一歩踏み出せば、その運び方が・・そう、言葉ではいい表せないのですが、タイミングが違うというか・・とにかく違和感を感じたものです」

「メリケン首相・・私は初めて耳にします」

アンナが即答。

「えぇ、それは私も初めて口にしますからね」

メリケン首相は微笑む。


なるほど・・このお方は会話中にも相手の仕草に気を付けているのか。

さすがトップともなると違うな。

アンナは改めてその重責を知る。

「クラウス・・アンナを頼みます。 そしてご苦労様でした」

メリケン首相はそう告げると、アンナたちを下がらせた。


1人椅子に座り考える。

日本とのコンタクトは正解だった。

それにロシアの脅威もなくなったというわけだ。

あの国は大きすぎる。

やはり中国のように内部から分割させる方が良いだろう。

クラウスたちには落ち着いたら動いてもらわねばなるまい。

それにイギリス・・あの国と共にロシア分割の話などすれば、あの女王のことだ、案外乗ってくるかもしれない。

フランスやイタリア・・EUの連合国家で分け合えば問題ともなるまい。

ただ帰還者の能力は知られるのは控えなければいけないだろう。

・・・

・・

メリケン首相はいろいろと次なる手を独り考えていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る