第130話 神崎の報告
<神崎とテツ、そしてクララ>
テツたちは日本に到着し、送迎の車でクソウのところへ移動中だ。
時間は11時。
神崎は助手席に乗り、俺とクララは後部座席。
先程からルームミラーで、ドライバーがチラチラと俺たちを見る。
・・・
クララが明らかに胸を強調する仕草を俺にする。
絶対こいつディアボロス系なのだろうと、俺の頭に警戒アラームが軽く響く。
俺がモテるわけがない。
それよりもドライバー、前をしっかり見て運転してくれ。
「ねぇテツぅ、日本って何が美味しいの?」
クララが甘い声で聞く。
「美味しいものか・・俺は蕎麦が好きなんだよな」
「ソバ?」
「うん・・えっと、ヌードルみたいなものだよ」
「へぇ・・じゃあ時間が出来たら連れて行ってね」
クララが答えていると、神崎が咳ばらいをしながら話してくる。
「えへん・・クララさん、それに佐藤さんも・・今は一応仕事時間です。 気を付けてください」
クララが微笑みながら前を向く。
「あらぁ、ごめんなさいね。 私ったらついつい自由に振舞ってしまって・・」
クララはそう答えながらも俺にグイッと身体を寄せてくる。
俺としてはどこかのパブかという感じで悪い気はしない。
「こ、このアマぁ・・えへん、間もなく到着です」
神崎がイラッとしながらも答えていた。
◇
<クソウのところ>
時間は12時過ぎ。
俺たちはクソウの事務所の中にいた。
神崎はクソウと山本にいろいろと報告をテキパキとする。
俺は聞いていて、やはり神崎って凄いなと思わされた。
無駄なく要点をきちんと伝えている。
俺にはできそうにない。
・・・
・・
しばらくは神崎の報告の独壇場だった。
そのうち山本が俺たちのところに歩いて来てクララの処遇を決めていた。
「佐藤さん、彼女は旅行者扱いですね。 こちらとしてはあまりタッチしたくありません。 ご自由にとしか申し上げられませんが、なるべく目立たないようにしてもらいたいものです」
山本が言う。
そりゃもっともだ。
クララは悪い意味で目立つ。
美人だしグラマーだ。
まぁそれだけではないだろうが。
「クララ、そういうことだ。 無茶をしないでくれよ」
俺が言葉をかけるとクララがニコッとして俺に近づいてくる。
「えぇ、わかっているわ。 山本さんだったっけ? ありがとう」
「クララさん、取りあえず佐藤君と行動を共にしてくれるとありがたいですね」
山本が微笑みながら言う。
「もちろんそのつもりよ。 テツと一緒にいると楽しそうだしね」
・・・
クララ・・ねって、俺に言われてもなぁ。
俺はそう思いながらクララを見る。
・・
可愛いな。
どうやら神崎の報告も終わったようだ。
クソウが俺の方に歩いてきた。
「佐藤君、君はイギリスに女の子を捕まえに行ってきたのかね? 上等、上等・・」
クソウが満足そうにうなずく。
「え? い、いえ、そんなわけではないのですが・・」
俺は言葉に迷ってしまった。
俺の返答など聞くこともなく、クソウが言葉を続ける。
「後ね、デイビッド君だがアメリカに一時帰国したよ」
「え?」
俺は少し驚いてしまった。
何の予備情報もないぞ。
アメリカに帰国って、デイビッドは死んだことになっているんじゃなかったっけ?
どういうこと?
・・・
・・
山本が説明してくれた。
どうやらサラが政治的な活動に大いに利用されているらしい。
俺にはよくわからない。
だがデイビッドが行って声をかけてやれば誰よりも効果があるだろうという。
山本の説明が一通り終わると、クソウが話し出す。
「佐藤君、我々もその魔族の討伐には協力させてくれたまえ。 とはいえ、情報だけになるだろうがね」
「ありがとうございます。 ですがクソウ大臣・・相手は普通ではないのです。 人を人とも思っていないでしょう。 単なる食事くらいにしか見えていないのかもしれません。 あまり無理をされない方がいいと思います」
俺は思いつくままに言葉を出す。
クソウが神崎を見ながら言う。
「神崎君、それほどかね?」
「はい、私も現場を見たわけではありませんが、話を聞いていれば佐藤さんの言葉を大げさに受け取ってもいいかもしれません」
神崎が真剣な顔で答える。
「ふ~む・・私も佐藤君の能力を見せてもらい実感したが、確かにSF漫画じゃないかと思えるものばかりだ。 それ以上だと言うのかね?」
俺はゆっくりとうなずいた。
「フムフム・・でもまぁ、できる限りは協力をしたいものだね、山本君」
クソウの言葉に山本もうなずく。
「えぇ、全くです」
「それよりも佐藤君、その女性を紹介してくれないかね?」
クソウが聞いてきた。
俺はチラっとクララを見ると、クララが微笑みながら答える。
「はい、私はクララです。 テツと同じ帰還者ですね。 あなた方は政治家なのでしょう? 私とは無縁の存在です。 それにディアボロスの相手の時にはテツの役に立てると思いますよ。 あ、ですが政治的な活動には利用しないでくださいね。 私も行動には気を付けます」
クララが淡々と話していた。
クソウと山本が苦笑しながら聞いている。
「なるほど・・結構なことだ。 まぁ、よろしく頼むよクララさん」
クソウはそう声を掛けると俺たちの前から遠ざかって行く。
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