第122話 次の行動へ



俺はゆっくりと目を開ける。

「うわ!」

俺の目の前にクララがいた。

「テツ、何考えているの?」

クララがまっすぐに俺を見ている。

ブルーの瞳だ。

それに可愛いな。

俺はついついチラっとクララの胸を見る。

・・

全く問題ない。

満点だ。

スタイル抜群じゃないか。


「テツ・・今、私の胸を見たでしょ? 普通の男たちなら死んでるわよ」

クララが微笑みながら、とんでもない言葉を出す。

おいぃ、胸見ただけで死ぬのか?

少し引くぞ!

「まぁ、テツはいい匂いがするから許すけど、ゲスな匂いの男たちなら遠慮なく狩るわよ」

クララの言葉に俺は言葉を失う。

それに微笑んで言う言葉か。

「・・」

「それよりもテツ、これからどうするの?」

クララが何事もなかったように聞いてくる。

「あぁ、さっきも言ったけどイギリスに取りあえず帰るよ。 一緒に来ている人がいるからね」

「あぁ、神崎っていう人だったっけ? テツって政治家なの?」

クララが聞いてくる。

「政治家? まさか・・俺はそんな世界とは無縁だよ・・」

俺は答えていて改めて感じる。

・・・

なるほど・・知らないうちにそういう流れになっているのか?

だが、自分1人では何もできないだろう。

こんな力を持っていたとしても、普通に生きている人と何ら変わるものでもない。

食べるものも同じなら、寝る時間も一緒だろう。

人であることに違いはないと思う。

ただ魔法や身体能力は人間じゃないけど。


俺が考えているとクララが笑う。

「アハハ・・テツって可笑おかしな人ね。 もっと自由にしていればいいのに・・それとも日本人ってそういう種族なのかしら?」

クララが首を傾げて考えている。

「う~ん・・確かにクララの言う通り自由にしてもいいけど、知り合いや家族に迷惑がかからないか心配だしなぁ・・」

俺がブツブツつぶやいているとクララ言葉を被せてくる。

「テツ、みんな個人で生きているんでしょ? 自己責任よ」

クララははっきりしているな。

俺はクララの言葉を聞きながら思う。

そりゃ自己責任だがなぁ。

・・・

やはり日本独特の同調圧力というか、お手てつないでというか・・何だろう。

放っておけない感覚がどこか俺にはある。

いや、放置してもいい。

だが、俺が育ってきた文化だ。

それを否定できない。

その文化があって俺という人物が出来上がっているのは間違いない。

だから恩返しというわけではないが、その文化がなくなるのは寂しい。

俺は考えながら微笑んでいたようだ。


「どうしたのテツ? 何か笑っているようだけど・・」

クララが言う。

「いや、クララの言う通りだと思うけど、何て言うのかな・・愛着というか、自分が生きてきた空間が大事というか、失いたくない感じがするんだ」

俺も答えながらうまく言葉にまとめれない。

「それに・・もし今の俺の行動が政治的な道具に成り下がるのなら、それは遠慮したいな」

俺は自嘲気味につぶやく。

「ふ~ん・・変なの。 でも、テツはいい匂いがするから一緒について行ってもいい?」

軽い口調でクララが言う。

俺は即答できなかった。

胸を見ただけで死ぬかもしれない女だろ?

大丈夫なのか?

クララを見ながら思う。

この女は色っぽい美人でかつ可愛い。

誰でも一度は注目するだろう。

しかし、俺のクラスが聖戦士でクララのスキルが通じないだけだ。

性格は全くわからない。


「どうしたの? 私がついて行くと問題でもあるのかしら?」

クララが覗き込むようにして俺を見る。

「い、いや・・そんなんじゃないけど・・」

「じゃ、いいわね。 改めてよろしくね、テツ」

クララが俺の腕にギュッと抱きついてくる。

無論、胸のボリュームはバッチリ感じる。

俺は平静を装いつつも、腕に感じる弾力もありモフッとする感触も感じていた。

「テツ、私が魅力的だからっていきなり襲わないでね。 きちんと許可は欲しいわね」

クララがそう言って俺の頬に軽くキスをする。

俺は言葉が出ない。

俺は自然とキスされた頬を手で触れていた。

こいつ、絶対わざとにやっているだろう。


「ん、どうしたのよテツ?」

クララが微笑みながら俺を見る。

「い、いや・・何と言うか・・慣れてない自分がいるんだなって思って・・」

俺は歯切れ悪く答える。

「そ・・ま、いいわ。 じゃあ出発しましょう」

俺は現場で手を合わせて、亡くなった人たちの冥福を祈る。

クララが不思議そうな顔で俺を見ていた。

俺たちは来た道を帰って行く。

・・・

・・

帰りは特に問題もなく、単なる移動に過ぎなかった。

クララは海を渡るのも平気なようだった。

それほどの時間もかからずに俺たちはイギリスに到着。




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