第80話 クリストファーの驚き
サラがゆっくりと俺に近づいてくる。
マジで怖いぞ。
相手が確実にレベルが下のはずだ。
なのになんだこの恐怖は!
クッ!
動けない。
!
そんな時、俺に
強い魔素を持った人が遠くから近づいてくる。
「ちょ、ちょっと待てサラ!」
俺は言葉を出す。
「何を待つって言うの」
サラが怖い。
「ほら・・遠くに魔素を感じるだろ? 誰かが近づいてくる。 俺は知らない魔素だ」
俺の言葉にサラとテンジンも近づいてくる魔素の方を向いた。
「ふむ・・確かに誰か近づいてくる・・拙僧も知らない感じだ。 それよりも拙僧・・しばらく動けそうにない」
テンジン、てめぇはそのまま倒れてろ!
「ほんとだわ・・私も知らない感じね」
サラも知らないようだ。
「よ、よし・・俺が行って捕まえて来るよ」
俺は取りあえずこの場がしのげればいい。
「テツ・・あなた1人で大丈夫なの?」
サラが聞く。
「あ、あぁ・・多分大丈夫だろう。 それほど強い感じはしない」
俺の返答にサラもうなずく。
「そう・・じゃあ、任せるわね。 私はテンジンの傍でいるわ。 彼はまだ動けそうにないから」
テンジンが苦笑していた。
俺はホッとした。
とにかく危機は回避できたと思っていいだろう。
俺は超加速で近づいてくる魔素に向かってダッシュした。
後でわかったことだが、サラとテンジンが驚いていたそうだ。
一瞬で俺が消えた感じがしたらしい。
ほんのまばたきの間に、そこに居た俺がその存在ごと消えたように感じたそうだ。
魔素すら感じなかったという。
まぁ、強さも隠蔽しているしな。
「テンジン・・あのテツって男・・いったい何者なのかしら?」
サラは力なく言葉を紡ぐ。
「わからない・・ただ改めて思う。 彼はものすごく強いのだろうな。 拙僧など問題にならないようだ」
テンジンの言葉にサラもうなずく。
◇
<クリストファー>
かなり大きな魔素まで近づいてきた。
だが、まだ迷っている。
この距離ならば、まだ引き返せる。
全力で逃げれば、逃げ切れるだろう。
だが、ギリギリの感じもある。
もはや相手に気づかれていると思った方がいい。
どうする?
このまま近づいて行っても大丈夫だろうか。
ここで引き返せば、怪しまれるが自分だとわかることもない。
だが、接触するにしてもゆっくりすぎる接近では警戒されるだけだ。
もっと堂々と近づいていかなければいけないだろう。
どうする?
クリストファーはそんなことを考えていた。
だが・・。
!!
クリストファーは驚いた。
全く動くことができない。
クリストファーの前にテツがいきなり現れたのだ。
クリストファーに全く気付かれることなく、目の前にテツが立っていた。
「よう!」
俺は片手を上げて言葉をかける。
クリストファーは引きつった顔を見せている。
だが逃げることはしない。
わかっているのだろう。
逃げても無駄だということが。
クリストファーは思っていた。
いったい何だというのだ。
この男・・全く私の意識の外から侵入してきた。
ありえない。
この男のスキルなのか?
バカな!
そんなスキル・・聞いたこともない。
敵陣に入っているのだ。
私も警戒はしていた。
なのにその私の警戒すら突破したのか?
わからない。
とにかく危険な人物なのは間違いない。
返答1つで、私は命を落とすかもしれない。
ここは慎重にし過ぎても過ぎることはないだろう。
「ふぅ・・私はクリストファーと申します」
クリストファーは取りあえず挨拶をすることにした。
「なるほど・・クリストファーさんですね。 俺はテツっていいます。 いったいこんなところでって・・違うな、どうして俺たちに近づいて来ていたのですか?」
俺は聞いてみた。
クリストファーは目を細めながら俺を見る。
この男・・私の接近に気づいて近づいて来たのか。
これは正直に話す必要がある。
「えぇ、実は・・」
クリストファーが説明してくれた。
中国で内乱が発生していると情報が入った。
それも帰還者が絡んでいるという情報。
それを確認し、可能であればどんな人物か確認しておこうと思ったという。
だが、その好奇心が邪魔をしたようだ。
見つかってしまった。
・・・
・・
「そんなわけで、白旗ですよ。 で、私をどうするのですか?」
クリストファーが肩をすくめて苦笑する。
「別にどうもしないですよ。 そうですね・・クリストファーさん、この中国に現れた帰還者に会ってみますか?」
俺はそう提案してみた。
クリストファーが驚くと同時に少し考えている。
・・・
「ふむ・・そうですか。 なれば、よろしくお願いします」
クリストファーが片手を胸の前に当てて、軽く会釈をした。
騎士か!
俺は思わず突っ込みたくなる。
まぁいい。
俺はクリストファーを連れて、テンジンたちのところへ戻っていく。
クリストファーも素直に俺の後について来ていた。
◇
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