第25話 またも結界に干渉するやつがいる
「お前たち、あの坊ちゃん学校の奴等だろ? ちょっとお金貸してくんないかな?」
耳に三連ピアスをつけている男が言う。
見るからにヤバそうだ。
「彼女、大きな声を出さない方がいいぜ」
リカの近くにいる奴がバタフライナイフをリカに突き付けていた。
「お金いっぱい持ってんだろ? 俺たち、帰りの電車代を落としてしまったんだ。 な、いいだろ?」
ケンはなぜか笑いが出てくる。
「アハハ・・」
!
若い男たちは少し驚いたようだ。
「おいガキ! 舐めてんじゃねぇーぞ」
若い男がケンの胸倉をつかむ。
結構力が強いようだ。
ケンの身体が少し持ちあがる。
「こいつはなぁ、昔ラグビーやってたんだ」
若い男たちは自慢気に話す。
ケンは静かに口を開く。
「あの、お金がなければ警察に行けば何とかしてくれると思いますよ」
「あのな坊ちゃん・・」
若い男がそこまで話した時だ。
ケンの胸倉をつかんでいた男が空中でブレイクダンスをしていた。
!!
「「「な、な・・」」」
若い男たちは空中にいる元ラガーマンを見ていた。
空中で何回転かすると、そのまま地面に落下する。
ドォーーーン!
ケンの胸倉をつかんでいた腕は、ありえない方向に曲がっていた。
それを確認すると、全員がケンの方を見る。
直後、男たちがバタバタと倒れる。
ケンはその場から動いていない。
初めに声を掛けてきた男だけがその場で無傷だった。
「な、なんだ・・お前・・何を・・」
男は震えながら言葉を出していた。
「えっと、別に何もしてなんですけどね。 軽く手を払っただけですよ」
リカはケンの横で微笑んでいる。
ケンはそのまま男に背中を向けて、リカと一緒に歩いて行った。
若い男は何が起きたのか全く理解できない。
ケンが立ち去って行く後ろ姿を見ていると力が抜けたのか、その場に膝をついてボォーッとしていた。
◇
「ねぇ、ケン。 どうするの、やっぱこの結界を張った人たちに接触してみる?」
リカは先ほどのことなど記憶にないようだ。
ケンも同じらしい。
「う~ん・・答えは保留でお願いします」
ケンは答えつつも、接触はした方がいいだろうと思っていた。
だが、もしもの時がある。
もし、この結界を張った連中が善意を装って、レベルなどのある俺たちに接触をしようとしているのならヤバい。
とてもじゃないが、俺とリカでは対処できない。
それに、一度見つかってしまうと逃げられなくなるかもしれない。
逆に、本当に善意で行っているのなら、これほど強力な支援者はいないだろう。
ケンはその考えの中で揺れ動きつつも、リカの言う通りの方向へ傾いていた。
◇
<テツの目線>
テツは自分の宿泊するところへ戻ってきていた。
夕食も、新型コロナで外食をできていなかった分、外で食べる。
時間は18時。
今日から新宿のビジネスホテルで寝泊まりだ。
部屋に入り、PCをオンにする。
自分宛てのメールを確認して、会社にも身体の不調は問題なくなったと送信。
携帯には課長から身体の調子を聞くのと、ランチの写真が添付されていた。
「すげぇ・・こんな美味しそうなものを食べたのか。 今度課長に場所を聞いておかなきゃな」
テツはつぶやくと、シャワーを浴びに行った。
シャワーを浴びながら考えていた。
確実に帰還者がいる。
あのアメリカ人らしい連中はまだマシな方だろう。
それに何の目的かわからないが、人工ウイルスを作るとか言っていた。
確か俺も聞いたことがある。
都市伝説で、世界の大金持ちたちが増え過ぎた人口を間引くというものだ。
1/10まで今の人類を減らすとかなんとか。
金持ちの考えることはロクなものじゃないだろう。
都市伝説では、この新型コロナウイルスは人工ウイルスのはずだ。
そして、ワクチンなどを接種すると暴走プログラムが発動するものだった。
だが、あくまで都市伝説だ。
人がそんなことをできるとは思えない。
ウイルスを作ることはできるかもしれない。
だが、次の段階まで計算できるものなのか?
俺がそこまで考えていた時に、結界に干渉している感覚がまた突き抜ける。
だが、あのアメリカ人のような不快なものではない。
!!
「これは・・またか!」
俺は身体を拭き、ベッドのところまで来て身体を魔法で乾かす。
服を着て感覚を集中させてみた。
・・・
・・
俺の魔法結界に干渉しようという者がいる。
今度は名古屋辺りだ。
結界を破ろうというのではない。
何か結界をノックしているような感じだ。
呼んでいるのか?
罠か?
取りあえず行ってみなければわからない。
俺は超加速で結界に干渉があったところまで移動する。
少しして到着。
ここは・・小牧市あたりか?
あれ、小牧城だよな。
確か、この近くの神社で天下の奇祭があったので見に来たことがある。
外国人も多く見に来ていたよな。
そんなことを思い出しながら周りを索敵してみる。
・・・
・・
誰も引っかからないな。
そう思っていると、空に向かってかすかな魔法を放つ人がいた。
!!
あれか!
魔法は矢のような感じで空に真っすぐに飛んでいき、結界に衝突すると弾けて消えていた。
とても弱い魔法を放っている。
逆にこれだけ弱い魔法の矢をきちっと放つのはテクニックがいるだろうと思いつつ、俺は近づく。
こちらも完全に気配を隠蔽する。
魔法を放っているだろうところまで近づいていくと、人影が2人見える。
辺りは薄暗く、はっきりと顔はわからない。
時間は19時頃。
俺は近くで2人の様子を見ていた。
◇
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