第20話 大統領の思惑



<米国>


米国との時差は14時間くらいだろうか。

ホワイトハウスの政務室に一報が入った。

デイビッドのSPからだ。

大統領は休んでいる。

行政を担当する人たちが情報を分析し、まとめる。

その情報を持って、遠慮なく大統領を起こす。


しばらくして大統領と共に政務官たちが集まっていた。

ハナフダ大統領とは既に交代している。

大統領は席につき、コーヒーを飲んでいた。

デイビッドからの報告を聞き終えたところだ。

「まさか本当に魔法だったとはな」

「はい。 デイビッドの魔法ですが効果がなかったようです」

「うむ。 私も君たちの報告を聞いたときには映画かと思ったよ。 だがあの実践を見せられれば信じないわけにもいくまい。 そのデイビッドの魔法が通じなかったのか。 脅威だな。 それよりも、日本のスカ首相は知っているのだろうか?」

大統領がコーヒーカップをテーブルに置きながら聞く。

「わかりません。 もし知っているのならば、我々としても対応を考えなければいけません。 知らないのであれば、教えてみてはどうかと思います。 信じればの話ですが・・」

政務官の提案に、大統領は少し考えていた。


知っているのに知らない振りをするか。

それならば対応はしやすい。

だが、本当に知らないとするとどうなるか。

新しい軍事兵器の情報をタダで教えるようなものだ。

日本には既にデイビッドの魔法が無効化される規模の魔法を設置している。

知らなければ、その価値を教えることになる。

・・・

中国などは今の所、魔法の存在を知らないようだ。

工作員などを未だに派遣して何やら画策していたらしいが、それらの情報はすでに把握している。

EUなどはわからない。

もし知っていれば、日本と同じような対応をするはずだ。

いや、デイビッドが言っていたが、魔法結界はそれほど大きな規模でできるものではないという。

他国も自分達のところだけでも覆っているかもしれない。


我々ホワイトハウスの周辺数キロが一つの魔法で覆われている。

そのうち少しずつ魔法のドームを作っていく計画だ。

また、魔法結界などは普通の人には見ることができない。

ビリオネアたちとの思惑もある。

あまり無意味に魔法結界を張っても仕方ない。

せっかくのチャンスだ。

ウイルスによって世界人口が整理できる。

我が国でもその振り分け区分はついている。

デイビッドは了承済みだ。


大統領は日本との直通電話の受話器を挙げた。

すぐに相手との会話が始まる。

・・・・

・・・

大統領は魔法の事は言わずに様子を伺っていた。

スカ首相なども原因はわからないが、新型コロナウイルスの脅威は去ったという。

大統領がそれとなく聞く。

「もしかして、何かウイルス不活性化ガスなどが散布されたのではないのですか?」

「い、いえ、それはわかりません。 我々も未だに調査している段階です」

その返答を聞きながら大統領は思う。

なるほど、やはり魔法の存在は知らないようだ。

教えるべきか。

少し迷っていた。

・・・

だが、いずれはわかることだろう。

ならば、恩を売っておくのもいいかもしれない。

ワクチンではかなりのお金を稼いだのだ。

よかろう。


「スカ首相、実は信じられないかもしれませんが、魔法というものをご存知か?」

大統領はそういうと、自分たちに起こった出来事を少しずつ話始めた。

・・・・

・・

20分くらいの会話だったろうか。

大統領は静かに直通電話の受話器を置く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る