第14話 バッキンダック主席



そしてクリストファーが見る、テツの神聖術魔法。

次元が違う。

普通、クリストファーやブレイザブリクの魔術士などが使う魔法。

せいぜい半径数キロ規模のものだ。

それでも大魔法使いと言われていた。

それがどうだ。

気を失いそうになるくらいの魔法規模。

シュナイダーには軍が必要だと言ってみたが、無理だろう。

軍などという存在自体が役立ちそうにない。


クリストファーは知っている。

神話級などの武具でなければ、これほどの魔法を使うには対処はできない。

・・・

魔族。

それならばあるいは可能かもしれない。

人とは違う種族。

そういった存在があると聞いたことがあった。

実際に目にしたことはない。

しかも自分が今いる場所は転移される前の世界、つまり現代社会だ。

魔族など存在はしない。

クリストファーは少しの不安を感じながらも、黙ってシュナイダーの後をついて行く。

そして、その神聖術魔法をたった一人の人物が行ったと知ったならば、クリストファーは気を失ったかもしれない。


◇◇


<バッキンダック主席>


黒い皮の椅子に腰かけて指示を飛ばす男がいる。

バッキンダック主席だ。

椅子の前に整理された机が置いてあった。

その前に気を付けの姿勢をして立っている男たちがいた。

その男たちは怯えながらも不動の姿勢だ。

「お前たち、サッサと行かぬか!」

バッキンダック主席が声を荒げる。

「「は、はい!」」

机の前にいた男たちは飛び上がるように返事をして、慌てて部屋から出て行った。

その姿を見ながらバッキンダック主席はつぶやく。

「全く・・こちらは計画通りにやっている。 小人かねもちどもが、金さえ出しておればいいのだ。 私の計画に狂いはない。 だが、日本でウイルスを駆逐するワクチンが完成したとは聞いていない。 スカ首相辺りからも報告はない。 ふむ、聞いてみるか・・」

バッキンダック主席は手を伸ばし、スカ首相と直通の黒電話を持ち上げて話し出す。

相手はすぐに電話に出たようだ。

「おはようございます。 スカ首相、いったい何が起こっているのでしょうか?」

・・・

・・

「ふむ、それではあなた方もご存知ないというわけですな。 だが確実にウイルスが消えたという話ですか・・なるほど。 確認しておきますが、あなた方は我々の同胞なのですよね? それを確認しておきたいのです」

バッキンダック主席はそう言うと、黒電話の受話器を置く。


なるほど・・どういうわけかわからないが、日本からウイルスが消えたようだ。

原因を考えても仕方ない。

起こってしまったことは、それに対応しなければいけない。

既に新たな工作員は派遣してある。

明日にでもウイルスを撒きながら、日本を縦断してくれることだろう。

後はまた感染し、提供したワクチンを接種してもらえればいい。

そうすれば、10年以内には自然と亡くなる。

それがビリオネアたちのシナリオだ。

だが、それまでに私がシナリオを変更する。

ビリオネアたちにも退場をしていただこう。

世界は昔から我々が中心なのだから。

・・・

バッキンダック主席はゆっくりとうなずきながら、黒い皮の椅子に座り直した。


◇◇

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