第12話 ビリオネア



PC画面に映っている女の人が微笑みながら話し出す。

「皆様、ご安心ください。 計画には支障ありません。 バッキンダック主席からも連絡があり、次なる種を送り込むとのことです」

その言葉を聞き、先程まで殺気立っていた雰囲気が少し和らいだようだ。

「そうか・・さすがに対応が早いな」

「うむ。 我々ビリオネアによって世界は管理されなければいけない。 計画は始まっているのだ」

「うむ。 今の世界人口を1/10まで減らさなければな」

「食料管理もとどこおりなく行われるように整地も考えなければいけない」

「確かワクチンを打って5年後だったかね? DNAの破壊が行われるのは?」

「いや、人によっては個体差があるようだ。 10年くらい必要なものもいる」

「もっと時間を短縮させるワクチンを開発するように急がせてはどうか?」

「これ以上刺激すると、計画に支障がでるかもしれない」

「確かにな・・以前に新型コロナに感染した猫が、ワクチン接種後に治癒したが、すぐに亡くなった事件には驚いたぞ」

「あぁ、あれか。 すぐに違う話題を提供したから問題あるまい」

「バッキンダック主席の国に、もっと諸外国に圧力をかけさせた方がいいのではないか?」

「ブンブン大統領はもはやダメだな」

「スカ首相にも圧力をかけなければ・・このまま新型コロナが消えたのではどうしようもない」

「おぉ、そうだったな。 しかし、どうやって消えたのか?」

「メレンゲ大統領はどうした?」

「それよりもハナフダ大統領が交代したじゃないか。 どうなっている?」

・・・・

・・

いろんな言葉が飛び交っていた。


PCモニターに映る女の人は笑顔を絶やすことなく話す。

「皆様方のご心配はごもっともです。 既にスカ首相には問題解決のための打診はしております。 また我々の調査員たちが現地で活動を開始、すぐに原因もわかりますでしょう。 後、何かご不明な点でもございましたらこの場で案件として挙げていただければ対処致しますが、いかがでございましょう」

PCの中では、映し出されている女の人の後ろのモニター群が一つまた一つと消えて行く。

「うむ、特にない」

「よろしく頼む」

・・・

そんな言葉を残して消えて行った。


お館様ことシュナイダーもパネルから手を離し、ログアウトする。

椅子に深く座り直し、横にいるクリストファーを見た。

「どうかね、クリストファー君」

「はい、おそらく原因はわからないと報告されると思います」

「そうかね。 ふむ・・私が見ても、何が起こっているのかわからない。 だが、君には見えるのだろうね。 その魔法が・・」

シュナイダーが微笑みながら聞く。

「お館様、見えるというのとは違います。 そう感じるのです。 ですが、確実にあるのがわかります。 シャボン玉のような膜といいましょうか、見えない膜のような圧力があるのです。 それが私の想像を遥かに超える規模で行われているのです。 相当な者が存在すると思われます」

クリストファーが真剣な口調で話す。

だが、まさか一人でこの魔法を行使しているとは思ってはいないようだった。

「ふぅ・・君がそこまで言うとはね。 だが、私には未だに信じられないよ。 君がドアを開けて入って来るなり変なことを言い始めたのだからね。 だが、その後のことで信じることはできたが、それでもまだ自分を疑っているよ」

シュナイダーは椅子から身体を起こし前のめりになる。

「さて、クリストファー君。 この日本における魔法を使った人物だが、どれほどのものかわかるかね?」

「私の推察ですが、向こうの世界でもこれほどの規模の魔法は見たことがありません。 おそらく一国の軍くらいの力はあるかと思います」

クリストファーが真剣なまなざしで答える。

シュナイダーはその言葉を聞きながら椅子に座り直す。

「ふむ・・一国の軍かね・・わからん。 それが人個人の力と言うのだろう? ワシ以外の人間なら話にすらならんだろうね。 ワシでも信じることができない」

「はい、私も信じられないレベルです。 個人の力にしては規模が違います。 少なくとも数人の共同作業と思われたと考える方が無難かと思われます」

「なるほどな・・日本には君のような魔法使いが何人か存在するというわけだ。 脅威だな」

シュナイダーはうなずくと椅子からゆっくりと立ち上がり、部屋から出て行く。

扉を開けると、メイドが扉を支え頭を下げていた。

シュナイダーとクリストファーが廊下を歩いて行く。


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