第190話 3つの力



俺達の元にアスラが来てくれた。


「アスラ、助かった! ありがとう!」


俺は右手で握手を求める。

ガネンジャ様から授かった鉄の腕である。

アスラはそれを見てピクリと眉を動かした。


しまった。そんなつもりじゃなかったが、利き腕だから気づかなかったな。


俺は右手を引っ込めて、すぐに左手を差し出した。

アスラはその手をペシンと払う。



「フン! 別に感謝される謂れなどない。俺がいる場所に光りが落ちて来たんだ。あれが当たればこの大陸は消滅していた。自分を守る為に防いだにすぎん」



俺も、仲間達も眉を上げる。

僧侶リリーは笑った。


「素直じゃないですね。アスラさんは」


「な!? だ、黙れ!!」


俺達がクスクス笑っていると、アスラは真っ赤な顔になる。



「チィッ!! ニコニコしやがって!! 気に入らない奴らだ!!」


「アスラ……。一緒に空天秤を破壊してくれるか?」


「ふん……!」


アスラは腕を組んでそっぽを向く。

やはり、そこまでは無理か。



「あの球は破壊神シバの出した破滅のエネルギーだ。つまり、最高神の力」



なんの話だ?


俺が首を傾げていると、アスラは不敵に笑った。



「俺達、下級神の子供が、最高神に勝つってのは面白いかもしれんな」



ふ……。とってつけたような理由だな。

こいつは素直に協力するのが嫌なんだ。本当に素直じゃない奴だ。


とはいえ、アスラの言うことは一理ある。

下級神の子供が最高神に勝つなんていいじゃないか!


「気に入った! 最高神に勝ってやろうじゃないか! 最高神の武器を使ってしまうが、まぁその辺は大目に見よう」


「へん! こっちは人間。あっちは神なんだ。それくらいハンデがあってもいいだろう」


「違いない」


俺達はニンマリと笑う。

テラスネークは俺達の背中に手を置いた。



「蛇だって最高神に勝ってやるさ」



そう言って 真実の答えリアルアンサーを発動した。

俺とアスラはそれぞれ500人になった。


「タケルはさっき1000人だったけど、私の限界はそれまでなんだ。それ以上出せば限界崩壊メルトダウンを起こして溶けてしまう。だから500人分をアスラに回した」


それでいい。

攻撃力が半分になっても反射される危険性を回避するのが最優先だ。

攻撃力は回数でカバーできる。何度も流星メテオを撃てば、あの硬い球体もただでは済まないだろう。


「アスラ。跳ね返る力はできる限り消滅させてくれ。海側に落ちる力もだ。海で爆発が続けば津波が発生してしまう」


「へん。500人もいるんだ。一つも漏らさず消滅させてやるよ」


「……心強いな」


「チッ! ニヤニヤしやがって!!」


「死ぬなよ」


「ふん………………お前もな」



俺に宿った炎は更に勢いを増した。

500人が一斉に動く。両手を天に高々と掲げた。




「空天秤よ……どこまで耐えられる? 俺達の攻撃に!!」




俺は再び無数の城を作って空天秤を放った。






心の城ハートキャッスル 流星メテオ!!」






ドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオン!!





城の集中攻撃を受けて大量の爆発が発生。

爆煙は空天秤に吸収される。全体が輝くと無数の閃光を放った。



「来たぞ!」


「ふん! 任せておけ!! 神の創時器デュオフーバ サック!!」



500人のアスラは全ての閃光を吸収。その際に巻き込まれた数100体は消滅する。

反射による被害はゼロとなった。



「ふん!  分裂ディビジョンとはいえ死ぬのは嫌なもんだな」


「ほほほ。私は何体も死んでるわよ。さぁ、また500体まで増やしてあげる」



空天秤は無傷である。

おそらくあの外側が問題。シャボンの膜のような外壁が、俺の攻撃を無効化しているのだ。

あの球体は最高神のエネルギー。物理攻撃を無効化する力を持っていても不思議ではない。


アスラは眉を寄せる。


「攻撃が効いてないな。弱点はないのか……」


いや、そうでもなさそうだ。


「あの透明の膜。発光する時は反射閃光を出す時だ」


「つまり?」


「防御と攻撃を両立できるかって話だ」


「なるほど……やってみる価値はあるな」



閃光を掻い潜るには近くまで寄る必要がある。

俺はスキル闘神化アレスマキナ 飛翔を使って体を宙に浮かび上がらせた。

そんな俺に僧侶リリーは不安を募らせる。


「空天秤に近づくのは危険です!!」


「爆煙で空天秤が見えなくなるからな。できる限り近くにいて、瞬時に城を当てなければならない」


「タケルさん! 無茶はしないでください!!」


「ああ、大丈夫だ」


そうは言ってもな。相手は最高神の力なんだ。

多少の無茶は覚悟しなければならない。


俺達500人は空天秤の周りを囲む。


100メートルは離れているか。

この距離から狙いを定める。


俺は半分の250人で攻撃を放った。



「「「心の城ハートキャッスル 流星メテオ!!」」」



ドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオン!!



空天秤は無傷。再び爆煙を吸収して発光。


反射閃光が来る! いまだ!!



俺は残りの250人で再び攻撃を放った。



「「「心の城ハートキャッスル 流星メテオ!!」」」



流星メテオは閃光と接触。

閃光を掻い潜った城は球体に衝突した。



「「「よし! 上手くいっ……ぐわぁあああああああああッ!!」」」



俺達は閃光に巻き込まれ数百体も消滅した。

しかし、爆煙が吸収されない。



「「「効いてるんだ! 追加攻撃だ!!」」」



俺達は残り50人を切っていた。

地上では、アスラがその身を犠牲にしながらも反射閃光を消滅させていた。



「やれタケル! そのままやっちまえ!」



よし! やってやる!!

限界を超えたフルパワーだ!!









「「「うぉおおおおおおおお!! 心の城ハートキャッスル 流星メテオォオオオオオオオ!!」」」









その爆発音は明らかに違った。






ドゴォン! ドゴォン! 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!






ただ城の攻撃を受けるだけの爆音。

爆煙が消えると空には何も残っていなかった。



アスラの呟きが全てを物語る。




「や、やりやがった……。空天秤を破壊しやがった」





妻達は大喜び。




「やったぁ!! 成功ですタケルさん!!」


「タケル様やりました!!」


「師匠流石です!!」




ふぅ……。なんとかなったな。

俺の残りは7人か……。

やれやれ、もう少しで本当に死んでいたな。

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