第185話 維持神ブラフーマ

俺は神殿に無数の心の城ハートキャッスルを使って屋根を作った。

その屋根で、飛来する鉄屑を防ぐ。鉄屑の飛来は凄まじい威力なので屋根の城は何重にも重ねた。

もうその数は分からないほどである。

その光景に象神ブラフーマ様は奥歯を噛んだ。


「な、なら、 象鉄棒タスクバーでやるまでだっぺ!!」


棒の先についた鉄球は、象火力ガネンマキナによって鉄屑が集められ5メートルもの大きさになっていた。

その威力は絶大で、心の城ハートキャッスル1つならプリンのように軽く破壊されてしまう。

そんな鉄球を振りまわずだけで台風のような豪風が吹き荒れた。



「喰らえ、象火力ガネンマキナ 鉄球牙!!」



ガネンジャ様、渾身の一撃か!

この一撃で大陸2つは消し飛ぶだろう。

ならば──。




心の城ハートキャッスル フォート  千枚の葉ミルフィーユ!!」




ガシィンンンンンンンンッ!!




「何ィィイイイイイイイイッ!! オラの鉄球を受け止めただとぉ!?」


「城を重ねて受け止める」


「い、一体、いくつの城を重ねたんだや!?」


「さぁ、もうわかりません。100万以上は確実です」


「何ぃいいい!?」



俺が右手を天に掲げるとガネンジャ様の周囲には無数の城が浮かび上がった。



「さぁ、この城も硬いですよ。きっと当たっても全て壊すのは無理でしょう」



さっきのフォートと同じくらい城を何重にも重ねた 超千枚の葉スーパーミルフィーユ

しかも鉄屑弾で破壊されることはない。



「いきます。心の城ハートキャッスル流星メテオ!!」



俺が右手を振り下ろすと、城はガネンジャ様の元へと飛来した。

集中砲火を受ければただでは済まないだろう。

ガネンジャ様の悲鳴が響く。




「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!」




俺は流星メテオをガネンジャ様に当たる直前で止めた。

城の隙間から覗き込むと、ブルブルと震えるガネンジャ様の姿があった。




「降参…………で、よろしかったでしょうか?」




コクコクと頷く。



「……オ、オウ。こ、降参だぁ」



ふぅ……。良かったぁ。

ガネンジャ様を追い込むなんて不本意なんだ。



「怪我はありませんか? 良ければ妻達に回復させますが?」


「なんだぁ。オラの怪我の心配まですんだか? おめぇは凄んごい男なやぁああ」



仲間達が俺の勝利を喜んで集まる。


「タケルさん、冷や冷やしましたぁ!!」


「やったぜタケルゥ! 神様に勝っちまうなんてよ! 凄んげぇじゃねぇか!!」


「タケル様、お怪我はありませんか?」



俺が賢者シシルルアにガネンジャ様の体を気遣うように頼んでいると、ガネンジャ様は俺を抱きしめた。



「タケル・ゼウサード! オラ、おめぇのことが気にいっちまったぞ。強くて仲間想いでよ。ほんで、優しいだぁ!!」



象の顔を擦り付けてくる。

ザラザラしてちょっと痛い。



「は、ははは。気に入ってもらえて嬉しいです」


「おめぇなら、最高神に会わす資格があんだよ」



最高神。維持神ブラフーマ様のことだ。

この方に会えれば聖剣クサナギが使える。この剣の力でアスラを蘇らせるんだ。


突如、空が曇る。


この亜空間に雲なんか無かったのにどうして?


稲光りとともに大きな声が辺り一面に響いた。





「騒がしいぞい。ガネンジャ」





この声、どこかで聞いたことがあるぞ?


ガネンジャ様は土下座をした。



「ははーー! 申し訳ないです。最高神に会いたいという者がおりまして、資格があるか試していたんでごぜぇますだ」


「ほほお。私に会いたいとな?」


「へぇ! タケル・ゼウサードといいますだ。強くて優しい、最高神と会うには十分な資格を有しております」


「え? タケルが? わざわざこんな所まで?」



俺を知ってるぞこの声の主。

やっぱりあの方しかいない。



ガネンジャ様は声に向かって深々と頭を下げた。



「へぇ! タケルがブラフーマ様に会いたいと申しているでごぜぇますだ」


「ほお……。よし、そこまで来ているから会ってやろうかの」



やはりブラフーマ様だ! 近くにいるのか!


ガネンジャ様は俺達を大きな門の前へと案内した。


この門の向こうにいるのか……。



「この門が神界域と繋がってるだぁよ」



門がゴゴゴと音を出してゆっくりと開く。



ブラフーマ様は30メートル以上ある大きな方だったな。


俺が見上げていると、門の真ん中に小さな人影が見えた。


あれ?


その人影が近づくと、能面の様な顔をした人であった。

若いのか、歳をとっているのかわからない。



「よう。タケル。久しぶりじゃのう」



ブラフーマ様……なのか?



「大きさがこの前と違う気がしますが……?」


「ははは。あの時あったのは幻影じゃよ。小さいと神の威厳がないじゃろ?」



この気さくさ、間違いないブラフーマ様だ!

あの時は大きくてわからなかったが少年のようだ。

声は女の子っぽいな。正確には性別もわからんぞ。


俺はブラフーマ様に全てを話した。


「ふーーん。アスラ・シュラガンを生き返らせたいのか」


ブラフーマ様は能面の様な顔で、相変わらず無表情。

何を考えているのかさっぱりわからない。

要件をはっきり伝えよう。


「──それで……。聖剣クサナギは命を復活させる力があると聞きました。一度だけでいいので貸して欲しいのです」


ブラフーマ様は俺を見つめた。



「………………」



貴重な神の武器だ。簡単には貸してくれないかもしれない。

条件はなんだろう?

まさか……またガネンジャ様の時みたいに戦うのか?




「いいよ」




え!?



「貸してくれるのですか?」


「うん」



あっさり!!

流石は最高神、物分かりがいいな。





「はい」




ブラフーマ様が手にしていたのは、あの時見た聖剣クサナギだった。

それは神々しいオーラを放ち、場にいるみんなを驚愕させた。





◇◇◇◇



ーー広場ーー



さっき、ガネンジャ様と戦った場所だ。

あの時はあちこち穴が空き、床が破壊されていたが、今は綺麗に戻っている。

神様の力なのだろう。


俺は心の城ハートキャッスルに収納していたアスラの遺体を持って来た。

その前に立ち、聖剣クサナギを握りしめる。


ブラフーマ様は腕を組んだ。



「聖剣クサナギはどんな物でも切断できる無敵の剣だ。そして、第2の能力が等価交換。斬った対象と同じ価値のある物を交換できる」



そう、その等価交換でアスラを生き返らせるんだ。



「どうするんじゃタケル・ゼウサード。アスラの命と同等でないとこいつは生き返らんぞ?」



……それが問題なんだ。



「まぁ幸い、ここにはお前の生きた仲間がたくさんいるしな。その者を斬り殺せばアスラは生き返るじゃろうな」



場は凍りつく。

みんなは俺を見つめて青ざめた。

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