第181話 ブラフーマ様を探せ!

俺は全長20メートル程の心の城ハートキャッスルを創り、みんなを収納した。

城は地上から姿を消して亜空間へと入る。



ーー亜空間ーー



さて、どうやってブラフーマ様を探そうか。



僧侶リリーは窓から見える景色を見た。



「さっきまではタケルさんが戦っている景色が見えてましたが、今はどんよりとした空間になってますね。まるでコーヒーにミルクを入れて混ぜたみたいです」


そんな空間を俺達の城は浮かんで進む。その姿は空に浮かぶ船のようである。


「亜空間に関しては、俺もよくわからんが、これが本来の景色なんだろう。俺の力で現実世界と繋がることができるんだ」


「広いのか狭いのか、どこまで続くのかわかりませんね」


確かにな。こんな場所で探す方法を考えなければならない。


魔拳士アンロンは最上階中央扉からテラスへと出た。



「おおーーーーい!! ブラフーマ様ぁああああ!! 師匠が探しているあるーーーーーーー!!」



ううむ。シンプルな呼びかけか。

この亜空間で声が届くだろうか?


妻達はアンロンに触発されてみんながブラフーマ様を呼びかけた。

しかし、その声からの反応はない。



「はぁはぁ……。師匠無理ある。はぁはぁ……。亜空間広すぎあるよ。声が帰って来ないある。山も街も何も無いあるね」



やはり、こんな手段では無理か。



「みんなありがとう。少し休んでいてくれ。今度は俺が探してみようと思う」


「亜空間は広大的世界ね。師匠の美声でもきっと届かないあるよ。」


「なら、見つけてみようじゃないか」


「目で見ても無理ある!!」


俺はニンマリと笑った。


「俺の心の城ハートキャッスルは全長20メートルなら2000程度出せる。そのどれもに視覚の感覚を持たすことができるんだ」


「おお凄い流石は師匠ある! そんな城を亜空間に浮かべれば2000人の目で探しているのと同じことあるね!!」


「うむ。しかし、2000人程度じゃ足りないだろうな。だから、もっと小さくする」


俺の手の平には小さな城が乗っていた。


「可愛いある! 部屋に飾っておきたいね!!」


「このサイズなら、少々時間はかかるが、限界までなら100万は出せるだろう」


「ひゃ、100万!! 凄いあるよ!! はるか先まで見通せるある!!」


「それでも多分無理だろうな。きっとこの亜空間は現実世界と同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上広いかもしれん」


「そ、そんなぁ。絶望的ね。それ以上に目が必要あるかぁ」


「増やす方法はある」


「え!?」


俺は全身に力を込めた。燃え上がる炎が俺をまとう。

僧侶リリーは目を見張る。



規格外発火現象オーバーヒートです!!」



この状態なら、更に城を増やせる。

体感では100倍。つまり──。



「1億は出せる!!」



妻達は驚愕。

賢者シシルルアは笑った。



「それだけあればきっと探せるわ!」



俺の周囲には無数の城が出現する。

城は亜空間に飛んで行った。


「タケル……」


俺の肩を叩いたのは、女の姿になったテラスネークだった。

長身で黒髪。赤い着物姿、鋭い目をした美人である。



「手伝ってやる」



どう言う意味だ?





真実の答えリアルアンサー!!」






みんなは驚愕。その驚きの声は城内に響く。

テラスには3人の俺が立っていた。



「こ、これは……!?」



3人は明らかに俺。3人ともに統一された感覚があり、1人の俺だが、3人いた。



「私の 真実の答えリアルアンサーは触れた物を増やすことができる。3人のタケルなら、3億の城が出せる」



なるほど。これなら、希望が持てるな。



「まだ回復していないからな。とても多くは出せないが、タケルの 分裂ディビジョンを限界まで出してやろう」



俺は10人になった。

妻達は大喜び。ママジャン王国の姫、マーリアはよだれを垂らす。



「こ、これだけタケル様がいれば、妻一人に一人のタケル様になれますわぁああああ」



やれやれ。今はそんな時ではないのだがな。

しかし、助かるな。10人いれば10億。これで見つかる確率がグンと上がるぞ。


俺の 分裂ディビジョンは小さな心の城ハートキャッスルを亜空間に飛ばす。

亜空間は俺の城で埋め尽くされた。



「少しずつ移動範囲を広げて、更に探る!」



ブラフーマ様はどんな所に住んでいるんだろう。

何か痕跡でもあれば……。


俺の額からは汗が流れ出ては炎で蒸発した。


規格外発火現象オーバーヒートは相当に体力を消耗する。

この状態をどれだけ続けられるのか……。


その瞬間。身体が楽になった。



「なぜだ!?」



振り向くと、賢者シシルルアが手をかざし、回復魔法をかけてくれていた。



「タケル! あなただけにがんばらせない!!」


身体が軽い!

これで探索を続行できるぞ!



「シシルルア。ありがとう!!」



しかし、彼女の魔力にも限界があった。

やがて俺に力を吸われるように片膝をつく。



「無理するなシシルルア!」


「私のことは気にしないで、探索を続けて!」



早く見つけたい。

ブラフーマ様、どこにいるんだ!?


1億の城は広大な亜空間を彷徨うだけ。

どこにも何も見えない。


シシルルアが倒れそうになったその時。彼女の汗は引いてスッと立ち上がった。

後ろを見やると、妻達がシシルルアに向けて魔力を注いでいたのだ。

マーリアは不敵に笑う。


「シシルルア。私の魔力を使って!!」


「みんなありがとう!!」


妻達の魔力でシシルルアの体力は回復し、彼女を通して回復魔法が俺に送られる。


みんなありがとう!

これでまだまだやれそうだ。


しかし、俺の 分裂ディビジョンの姿が揺らぐ。


いかん、消えそうだ!


テラスネークは汗を流し片膝をついていた。



「悔しいね。これだけしか力が出せないなんて」



彼女は先の戦いで死ぬ直前まで追い込まれていた。



「テラスネーク無理するな。 分裂ディビジョンの数を減らせ」


「ふん。人間に情けなんてかけられたく無いね」


そんな彼女も気がつけば体力が回復して立ち上がっていた。



「なぜ!? 私の体力が回復している!?」



テラスネークが振り向くと、賢者ヤンディが泣きながら回復魔法を施していた。



「あ、あんたなんか、絶対に助けたくはないけどさ! アスラ様の為だもん!! 全力で回復してやるわ!!」



気づけば、勇者グレンもくノ一ビビージョも参加して俺とテラスネークを回復してくれていた。








””みんなの力でブラフーマ様を見つける!!””








全員の気持ちが一丸となったその時。

それはあった。心の城ハートキャッスルを通して俺の頭に映像が浮かぶ。







「城…………!? いや、神殿か?」






それは、この城より遥か先。10万キロ以上離れた場所。

煌びやかな建物が亜空間に浮かんでいた。





「見つけたぞ!!」

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