第167話 究極の武器
テラスネークの声が心の中で響く。
『ホホホ。不思議な現象でしょう。実体のある死体が2匹も転がっているのだからね』
「ケ! ちゃちな技だぜ! それが武器の力なのかよ!?」
『ホホホ。あなたはこの力の恐ろしさをまだ知らない』
凄まじい風が起こる。
それは何かが俺達に向かってやってくる予兆。
アスラもとっくに気付いている。
脳が体に命令を出すより早く、俺達の脚は動いていた。
瞬時に飛び上がる。
「
「
100メートル以上上空へと上がる。
見下ろすと、元居た場所は何かが爆発を起こしたように砂埃が舞い上がった。
ドゴォオオオオオン!!
「!? 凄まじい威力だ!!」
その風圧で俺達は遠くに飛ばされた。
目には見えない何かが地面に衝突しているのだ。
アスラは小高い丘に着地すると、杖の先端を爆心地に向けた。
「チ! どうせ蛇だろが!!
すると一体のテラスネークが姿を見せた。
「ホラ見ろ! やっぱり蛇だ! あいつの能力は実体をもう一体増やすだけの力!」
いや、おかしいぞ。
一体だけの攻撃でここまでの破壊力は無い。
「アスラ、あの蛇の周囲の力を吸い取るんだ!」
アスラは
「クソ! あの蛇は何体いやがるんだ!?」
現れたのは8体のテラスネークだった。
互いに絡まった体から顔を出し、こちらを見つめる。
「つまり、あの8体が同時に透明になって、俺達を攻撃した訳か」
あの破壊力も頷けるな。
テラスネークは不気味に笑う。
『フフフ……。アスラの
「チッ! 蛇のくせに頭が切れやがるぜ。戦闘が長引くと互いに分析し合って手の内を晒してしまうのか!」
やれやれだ。俺達神の子は、戦闘における分析能力が半端なく長けているな。
攻撃を交わす度に次の手が浮かぶ。
『スキル
「ふん! たかだかデカい蛇が8匹程度だ。俺の
「いやアスラ、そう簡単ではないぞ。テラスネークは擬態の能力で透明になっている。そのままでは攻撃が避けられてしまう。よって、その力を吸うのに8回分の
「な、何ぃい!? クゥ……!! ヘビのくせに味な真似を……」
アスラが汗を流す中、テラスネークは冷ややかに笑った。
『これが限界だと思いますか?』
その言葉と同時。
蛇は両面鏡に反射させた姿のように、次々と増えていった。
アスラの震えは止まらない。
「な……なんだと……!?」
その数100体以上。頭一つだけでも10メートルである。
そんな顔がズラリと並びこちらを見つめる。
妻達がいれば、そのおぞましさにたちまち卒倒するだろう。
辺り一面テラスネークである。
その異様さに眉を寄せずにはいられなかった。
一体を倒そうと近づけば、瞬時に他の蛇にやられてしまうだろう。
蛇の壁がそこにあった。
『ククク……。全て実体ですよ』
アスラの汗は止まらない。
「ば……化け蛇が……!!」
テラスネークは勝利を確信したように笑う。
与えられた最強の力の試運転。とでもいうように余裕たっぷりだった。
『これが私に与えられた神の武器。
テラスネーク達の額の上には、真っ黒い球体がフワフワと浮いていた。
その球体には大量の目と鼻と口が付いており、それが散り散りに配置されていた。
見たこともない不気味な物体である。
あれが
ご丁寧にテラスネーク一体ごとに
察するに全員が本体で、全員が同じ力を持っているのだろう。何体殺そうが、一体でも残っていればそれが本体となる。
どうやって意識統一や思考をしているのかは謎だが、もう一人の自分を何体も出せる能力。それが
うねる蛇達はおぞましく、その威圧感に体を押されるようだった。
アスラは圧倒的な力の前に歯噛みする。
俺は笑った。
「安心しろアスラ。俺達は2人だ」
アスラは眉を上げる。
それは意表をつかれたというより、計算間違いに気がついたような顔だった。
「タ……タケル。向こうは100体以上いるんだぞ。全員が
「だから?」
「だ、だからってお前……。さっきも見ただろ。テラスネーク一体でも素早くて力が強い。俺を食っちまいそうな勢いだったんだぞ」
「フ……! そんなのは相手の力がわからなかった過去の話だ。今はある程度、把握できている」
「は、把握だと? ……把握か……。うーーむ………………」
アスラは一連の流れを分析し始めた。
俺は確信を込めて言い切る。
「 俺 達 は 最 強 の 2 人 だ 」
日の光が俺達を照らす。
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