第127話 オータクの地下倉庫

〜〜オータク視点〜〜


ーーアーキバの街ーー


俺氏が育った街はアスラ軍に攻められて壊滅状態だった。

アスラの奴隷兵士は反抗する街人を殺し、捕虜にする。そうやって、また奴隷兵士を増やして国々を占領する訳だ。


俺氏は地下の秘密倉庫に身を潜め、奴隷兵士に見つからないようにしていた。

元々ここは美少女人形の部品を保存する倉庫だった。


ロメルトリア城のカナン姫は梯子を登り、地上の兵士達を警戒していた。


「大丈夫だ。まだこの辺にはアスラ軍は来てないよ」


俺氏は下から返事をする。


「そうか、良かったでござ──」


見上げると、カナン姫のミニスカートから真っ白いレースのパンティがしっかりと見えてしまう。フリルの部分と透け具合までしっかり見えた。


脳裏に焼き付けるでござる!


「ヌフ……ヌフフ」


「あ、こら! バカ! こんな時だってのにどこ見てるのよ! オータクったらぁ!!」


ロメルトリア城の専属人形職人になった俺氏は、得意の美少女人形をカナン姫に提供するとともに、城が作ったお菓子のおまけを作っていた。城が、国民に向けて、愛国心を高める為に作ったキャラメルである。そのおまけは、小指ほどの大きさの人形。城内にいる美少女達をメインに、格好良い兵士達も作っていた。

それが爆発的に人気が出てしまい、工場を作り、人を雇って、大量生産をしていた所、アスラ軍が襲って来たという訳なのだ。


そんな訳だから、今、隠れている倉庫はかなりの広さがある。

隠れているのは100人ばかし。

アスラ軍から逃げて来た子供と老人が多い。


梯子から降りてきたカナン姫に、俺氏は抱きついた。


「カナン! 好きでござる!!」


「ちょ、ちょっと! オータク! ダメだぞ! こんな所で! 今は食料調達係を待ってる所なんだから♡」


「うーーむ。そうでござったなぁ。しかし、カナン姫が可愛い過ぎるから、俺氏のエクスカリバーは覚醒してしまったでござるよ」


「みんなが寝た時に、な……」


俺氏はカナン姫と恋仲になっていたでござる。


彼女は美少女ではなくて、美人でござるが、好きになってしまうと、自分の好みなんて吹っ飛んでしまうものだ。

恋は盲目。とはよくできた言葉である。


「オータク……チュッ!」


彼女は誰も見ていないのを確認すると、俺氏のほっぺにキスをした。


「ヌホッ♡」


しかし、こんなにラブラブでござるが、1ヶ月前、彼女は泣き崩れていた。

アスラがカナン姫の父を殺し、城を乗っ取ってしまったからだ。


今、俺氏は彼女の心の支えになっている。男として、彼女を守ってあげたい。


食事係の老人達が心配げな顔を見せた。


「オータクさん。食料調達はまだかえ?」


「もう少し待ってくれ」


増築係の子供達がやってきた。


「お風呂が完成したよ! 後で見てよオータク!!」


「ああ! ありがとう!」


そして、元男爵だった、コミケートさんも、この倉庫にいる。俺氏の美少女人形に難癖を付けて意地悪をし、それが犯罪行為だった為に爵位を剥奪された男だ。今は普通の街人なので、対等の関係となった。

彼はかなり虐めを受けて、俺氏の気持ちがわかったようである。もう別人といっていい。


「オータクさん。人形用の木材で木刀を作ってみたんだが、どうだろう?」


「うん! いい感じでござる!」


他のメンバーも、次々と俺氏の元へとやって来る。


「オータク!」

「オータクさん!」

「リーダー、これお願いします!」


俺氏はみんなの希望になっているでござるよ。


みんなを守りたい。


そう強く想う。

そんな時、いつもタケルの事を想い出すでござる。あいつの言葉──。



『闘う者は美しい』



この言葉にどれだけ救われたか。


タケル……。俺氏は闘うでござるよ。


人を残忍に殺す、アスラ軍なんて許せない。絶対に許せないでござる!


これは俺氏とアスラ軍との戦いだ。

自分の意思を貫くという闘いでもある!


俺氏は、絶対にアスラ軍には負けないんだ!!




小さな女の子、リーンが心配げに俺氏を見上げた。


「オータク。今日の食料調達係は、私の兄のダッドなの。まだ帰って来ないのかなぁ?」


「そうか……。少し、遅すぎるかもしれんな。ちと見てこようか」


カナン姫は眉間にしわを寄せた。


「わ、私も行く!!」


「いや、君は残って欲しいでござる。俺氏にもしものことがあれば、君がリーダーにならなくちゃいけないんだから」


「…………」


コミケートさんは木刀を持ってきた。


「オータクさん。念のためにこれを持って行ってください」


「うん。ありがとう!」


なんだろう。

凄く胸騒ぎがする。


ドキドキドキドキドキドキドキドキ。


凄い鼓動だ。

逃げ出したくなる感じだな。


カナン姫は俺の手を握った。


「無理しないで! 私も行く!!」


ドキドキドキドキドキドキドキドキ。


「いや、俺氏は一人で見に行くでござるよ。若く動ける人材はほとんど殺されてしまった。もうそんなに余裕はないんだ」


「オータク……」


ドキドキドキドキドキドキドキドキ。


鎮まれ!

俺氏の鼓動!


リーンは俺氏の険しい顔を見て、更に不安を募らせた。


「ね、ねぇオータク。ダッドは大丈夫よね? オ、オータクと一緒に帰って来るよね?」


こんな時、タケルなら、きっとこの少女を安心させるだろう。

俺氏だって!


最高の笑顔だ!





「任せるでござる!!」




みんなを守るんだ!


鼓動の高鳴りは治った!!

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