第80話 タケルカンパニー始動!
俺は会社を作ってキャビアを売り、ママジャン王国の損失6千億エーンを補填する計画を立てた。
会社がもっとも大事にするもの。
それは、財力、である。
場所、人材、仕入れ、全てにおいて金がかかる。会社にとってはどれも必須。
その全てを財力で賄うのである。
「城兵の時には、金のことなんて微塵も考えたことがなかったが。やれやれ。大金を稼ぐとなるとそうもいかんな」
俺は魔法銀行へと足を運んだ。
ーー魔法銀行ーー
会社設立には500億エーンを使ったから、残りの500億エーンでキャビアを仕入れよう。
その為には魔法銀行との付き合いが重要になる。
500億エーンは札束にすると、小部屋が埋め付くされるほどの量になる。
それゆえに、持って移動するのは大変だ。
だから魔法銀行を利用する。
魔法銀行に金を預けて、魔硝石に術式を刻み込んで管理する。
こうすれば、魔法銀行員が魔術でお金を管理してくれるのだ。
魔法銀行の支店は各地にある。
橋の街カザンガ支店があるから、ママジャン王国の500億エーンは橋の街カザンガでも使えるようになるのだ。
「では、タケル・ゼウサード様の500億エーンは橋の街カザンガ支店に飛ばします」
受け付け嬢が了承すると、その後ろで控えている銀行員が魔法陣の上に立った。
詠唱が始まる。
「オーカネトンデケ……オーカネトンデケ……オーカネ・ガチ・デ・ブジニ・トンデーーーーーーーーケ!!」
魔法陣の真ん中には500億エーンの術式が刻まれた魔硝石が置かれている。
「ハーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
銀行員が両手を上げる。
瞬間。
バチン! バチバチバーーーーーーン!!
魔硝石から稲妻が現れて空に登った。
受け付け嬢は笑う。
「はい。今、橋の街カザンガ支店に500億エーンが送金されました。手数料1万エーンになります」
「………………………」
たったあれだけの作業で1万エーンだなんて、かなり高い値段である。
城兵の給料は12万エーン。
確か俺が城兵の仕事をしている時は、毎月、家賃や食費で9万円が消えていた。余った3万エーンは貯金である。
「なんだか……。お金の価値がわからなくなってくるな」
500億エーンで会社を設立したりしたが、途方もない金額ゆえに我を忘れていたかもしれん。
たかだか金を送るだけでとんでもない金額が動くな。
いささか勿体ない気がする。
とはいえ、旅の途中で無くすより安全だから選択肢としてはありなのだ。
これがビジネスというものか。
俺は手数料を払って会社へと戻った。
ーー タケルカンパニー ーー
「え!? 今からカザンガに戻るのですか?」
「そうだ。キャビアの仕入れと、みんなにも会って、現状を報告したいからな。それに、向こうでの仕入れとなると、カザンガにもタケルカンパニーを作らなければならない」
「そうですか……。では少し離れ離れになってしまいますね……会社設立やキャビアの仕入れ。相当な時間がかかりそうです」
悲しい顔をするマーリアに、俺はどう声をかけていいかわからなくなった。
「タケル様……。どうして急にお金を稼ぐようになったのですか? あの賭け試合で大金を獲得したから、それで良いのではないですか? 初めは、貿易に興味を持たれたタケル様がとても嬉しかったのですが、離れ離れになるのなら、マーリアは……悲しいです」
マーリアの父親の為に6千億エーンを稼がなければならない。しかし、そんなことを彼女に言えば、ますます気を病んでしまうだろう。
「マーリア。俺の気まぐれに付き合わせてすまないな。少しの辛抱だ。落ち着いたら旅に戻るからな。少しだけ、俺を助けてくれないか?」
「タケル様ぁ! マーリアはなんでもします! タケル様のためならなんでもです! 離れるのが辛いだけです! うう……」
俺はマーリアの頭を撫でた。
それを見ていたアンロンが身体をウズウズとさせ、たまらなくなって俺に抱きついた。
「私だって、師匠と別れるのは辛いある! 師匠大好きある!!」
そういえば、アンロンはかなり可愛い格好になっていた。頭をお団子に結い、スリッドの入ったタイトなミニスカートを着ていた。スタイルは抜群で、大きな胸、白い肌、細い脚。どう見ても美少女である。そんなアンロンは俺の腕に顔を擦りつけていた。
「師匠ぉお〜〜〜〜ん!」
弟子を取るつもりは毛頭なかったが、やれやれ。ここまで俺を慕ってくれるとなると、無下にもできんな。
俺は困り顔でアンロンの頭を撫でた。
「よしよし」
「えへへ。師匠ぉおお〜〜」
「タ、タケル様ぁ!」
「マーリアもよしよし」
「タ、タケル様ぁ〜〜」
さぁ、別れの挨拶は済んだ。
タケルカンパニーママジャン支店はこの2人に任せよう。
「マーリア、アンロン。タケルカンパニーはまだまだ建設中だ。俺が仕入れたキャビアを保管して、すぐに売り捌けるように準備をしておいてくれ!」
「お任せください! 必ず立派な会社を作ってみせます!」
「任せるある!」
俺はスキル神速を使って移動。
ギューーーーーーーーーーーン!
目指すは、橋の街カザンガである。
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