俺、城兵だけど無双する〜「出てけ無能!」と勇者パーティーを解雇された俺だが、実は【闘神の力】が使えてしまう。なに、俺の実力に気がついた? 戻ってきて欲しい? ……断るッ!!〜
第46話 逃げるグレン 【グレンざまぁ回】
第46話 逃げるグレン 【グレンざまぁ回】
俺の放った攻撃で、ジャミガは塵と化した。
これで後は街の消火をすれば解決である。
そう思った矢先。
街中から飛んでくる火の玉が、勢いを増して燃え盛る時計台に集まった。
おかしい……。
ジャミガは倒したはずだが?
時計台は大きく膨らみ、目と口を作る。
そして、炎の触手をいくつも伸ばしてうねらせた。
「フハハハハ! タケル! 貴様の攻撃は無駄だぞ! 俺は少しでも残っていれば再生することができるのだぁぁあ!」
時計台の炎を吸収したその姿は30メートルもあった。
「やれやれ。面倒な奴だ」
「イフリートウルフ!!」
ジャミガは炎の触手を切り離すと、狼の姿に変化させた。
それは体長5メートル。身体は炎で構成されていて、狼のように動き回る。
ジャミガはそんなイフリートウルフを次々と出現させた。
それは街を徘徊し建物を燃やし街人を炎に包んだ。
ジャミガめ、俺に攻撃するより、街を攻撃することを選んだな。
このままでは、被害が拡大する。
狼を倒さなくては!
俺はイフリートウルフを瞬殺しながらも状況を確認をした。
「スキル
呼吸を探ると、20キロ先でバルバ伍長の小隊がイフリートウルフと戦いながら街人達を川辺へ避難させているのがわかった。
しかし、街は人口10万人。たった30人の小隊ではとても手が回りそうになかった。
1人でも多く助けたい。そんな想いが頭を巡る。
気づけばつぶやいていた。
「みんな、頑張ってくれ……」
水辺に行けばイフリートウルフの攻撃を防げるが、そこに向かうまでに襲われる人達が大勢いる。
ジャミガは次々とイフリートウルフを生成する。まるで空気を吐くように楽々と。
厄介だな。奴の力は相当パワーアップしている。イフリートウルフの数が全く減らない。
俺が狼を倒すより、ジャミガのイフリートウルフを生成する能力の方が上回っているんだ。
スキル
しかし、俺が狼に注意を向けるほど、街人を助けられなくなってしまう。誰かが街人を助けなければ。1人でも多く! 犠牲者を減らすんだ!
バルバ伍長、シシルルア、頑張ってくれ!
もっと仲間が欲しい!!
そんなことを思いながら、イフリートウルフをスキル絶対零度と神砕破を使って粉砕していく。
ゴリゴスやシシルルアもイフリートウルフと戦っていた。
そんな時、戦闘の場所から遠ざかる、1人の人影が見えた。
勇者グレンである。
……1人で戦いの場から離れるなんてどういうつもりだグレン。今は1人でも多く仲間が欲しいというのに。
俺はイフリートウルフを10体ほど粉砕して、グレンの前に立った。
「どこへ行く、グレン」
「タ、タケル! いや、あの……」
「お前……。まさか逃げる気か?」
「だ、だってよぉ……。ジャミガが、めちゃくちゃ強ぇえじゃんかよぉ!!」
俺はグレンの襟首を片手で掴んで持ち上げた。
「お前、いい加減にしろよ。それでも勇者か!」
「う、うぐぐ……。う、うるせぇ。ま、負ける戦いなんざ、馬鹿のするこった!」
俺は拳に力が入る。
こいつ!
みんなが命を賭けて必死になって戦っているのに、それを馬鹿にするなんて許せない!
バルバ伍長の小隊も、シシルルア達も、みんな闘っているのに!!
殴ってやる!
こんな奴は殴らんと気が済まんッ!
「へへへ……。殴りたいなら殴れよ。死ぬよりかマシだぜ」
はっと我に返った。
「ふ……。お前みたいな人間を殴っても俺の拳が汚れるだけか……」
俺が襟首から手を離すと、グレンはすかさず距離をとった。
「へへ! 俺は逃げるぜ! ジャミガの強さは異様だ! あんな奴と戦ったって殺されるだけだ! それなら呪いで燃やされた方がマシだぜ。シシルルアもリリーもゴリゴスも、こんなしょーもねぇ街の為に命張りやがってよ。馬鹿だぜまったく!」
走り去るグレン。
しかし、俺は再び前に立ち塞がった。
ドン! と俺の胸にぶつかる。
「痛ぇッ! たく、なんだよ!」
俺は再び襟首を掴んで持ち上げた。
グレンは苦しそうにもがく。
「うぐぅ……!」
「………………」
俺は目を細めた。
「闘う者は美しい」
グレンは顔をしかめる。
「うぐっ……うう! な、なんのことだよ? シシルルア達のことか? 馬鹿だよ馬鹿! 殺されるのがオチなんだ! 離せよ!」
バチーーンッ!!
グレンの頬を平手打ち。
手は出さないと決めていたが、気がつけばぶっていた。
「はがぁあッ!」
同時にグレンは地に伏せた。
俺は蔑んだ目で睨みつける。
「みんな闘っているんだ。魔王討伐の旅に選ばれた時から。命をかけて闘っているんだ。なぜだかわかるか?」
グレンは震え、目に涙を溜める。
俺は言い放った。
「人の命を守る為だ!」
グレンは黙ったままだった。
俺は声を張り上げる。
「逃げたければ逃げろ。しかし、覚えておけ。俺はお前を勇者とは認めない。例え国王が認めたと言っても、俺は認めない!
グレンは俯いたまま震えるだけだった。
その震えは、怒りなのか、恐怖なのか、それとも悔しさからなのか……わからない。
しかし、そんなことはどうでもいい。
俺は心底見損なった。こんな奴は軽蔑に値する。
「城兵の俺は闘う。勇者のお前は勝手に逃げろ」
そう吐き捨てて、イフリートウルフを倒しに向かった。
1人残されたグレンは、ゆっくりと立ち上がると、街の出口へ向かってトボトボと歩き出したのだった。
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