第40話 5分を稼げ!
〜〜タケル視点に戻ります〜〜
ーー中央公園 地下水道ーー
ワーウルフを倒し、スタット王国第二兵団の無事を確認した俺は、スキル
「何もなければいいが……」
公園まであと1キロの距離。
俺を呼ぶ叫び声が聞こえる。
「タケルゥウウーーーーーーーーーー!!」
それは切実で緊迫した臭いを感じさせた。
……シシルルアだ。
「シシルルアの声だ!!」
スキル
ギューーーーーーーーーーーーーーンッ!!
瞬時に地下水道に入り込んだ俺は、壁に貼り付けられ、燃えているシシルルアを発見。
即座に彼女に付着した黒い液体を剥がし取り、彼女を抱きかかえて助けたと言う訳である。
シシルルアを見やる。
大きな火傷は無いようだが………。
「怪我はないか?」
その言葉に、彼女は更に涙を流した。
俺を強く抱きしめる。
「ああ!
あの冷静沈着なシシルルアが、こんなにも涙を流すなんて。
「大丈夫だ。安心しろ」
俺は彼女の頭を優しく撫でる。
シシルルアは一層強く俺を抱きしめた。
「うう……
「お前の悲しい気持ち。全部晴らしてやる」
呪術士ジャミガは突然現れた俺に面食らう。
「タ、タケル・ゼウサード! お前いつの間に!?」
不敵に笑う。
「ふ……。俺の動きはカラスで見てたんじゃないのか?」
「くッ! やはり気がついていたのか!!」
「お前……。とてもBランクの犯罪者じゃないな!」
「フン! くだらん! そんな評価は人間が付けたモノだ!」
「人間……だと。まるで貴様は人間じゃないみたいなセリフだな」
「ククク……。だとしたらどうする?」
「カラスを操る呪いなども聞いたことがないからな」
「お前の方こそ何者だ!? 俺のカラスを見破る観察眼! 超高速の移動技! 全てが高次元だ!」
「だから言っただろう。俺はスタット王国の城兵。タケル・ゼウサードだ」
「そ、そんな城兵が存在する訳はない!!」
「存在するのさ。そしてお前は、そんな城兵に負ける」
「ぐぅぬぅううううううううううううッ!!」
ジャミガは力を溜めて攻撃に備える。
俺はきっと睨みつけた。
「呪術士ジャミガ。お前の悪趣味に付き合うのは終わりだ!」
「うるせぇ! 呪ってやるぅぅううッ!!」
即座に突き出す手。
「これでも喰らえぇええええッ!!」
それに連動して黒い液体が俺を襲う!
俺はスキル
ギューーーーーーーーーーーーーーーン!!
瞬時にそれをかわし、ジャミガから距離を離して着地した。
「ぐぬぅうッ! は、速いッ!!」
目を見張るジャミガ。
俺の足元には勇者パーティーとマーリア姫がいた。
ジャミガは1人で立っている。
足元のグレンがいなくなっていることに驚きを隠せない。
「ゆ、勇者がいないだとぉ!?」
ジャミガが踏んづけていた勇者グレンは俺が回収した。
みんなは、喜びと驚きが入り混じる。
「タケル様! ありがとうございます!!」
「タケルどん! い、一体どうやったでごんすか!?」
「タケルさんありがとう!! 来てくれるって信じてました!」
グレンは俺の動きが理解できないようである。
腹部の苦痛に耐えながらも聞かずにはいられなかった。
「……タ……タケル?? て、てめぇ。どうやって、お、俺を助けた??」
こいつにする説明は後だ。
それよりみんなの無事が心配だ。
辺りを見渡す。
おかしいな。
一人足りないぞ。
「魔法使いレイーラがいない。どこに行ったんだ?」
リリーは紫色の毛をしたシャム猫を抱きかかえて見せた。
「ニャオーーン」
猫の目はアイシャドウたっぷりで、すぐにメス猫だとわかる。
リリーは眉を寄せた。
「この子なんです。レイーラさん、猫に変えられちゃったんです」
レイーラも呪われたのか。
マーリアの従者はネズミに変えれたというからな。
ジャミガは人間を動物に変化させる呪いも使うのか……。
その方法を知る必要があるな。
「背中をポンって叩かれただけで猫に変わっちゃたんです!」
「そうか……触られただけで……」
触っただけで相手を動物に変える呪い。
やれやれ、相当にレベルの高い呪術だな。
これで呪われたのは2人。
マーリアの氷の呪い、レイーラの猫の呪い。
なんとかして、2人の呪いを解かなくてはならない。
とはいえ、今はグレンの容体が心配だな。
「リリー、グレンを治してやってくれ」
「はい! すぐに!!」
戦士ゴリゴスは俺の横に並んだ。
「タケルどん、2人でやればなんとか5分は稼げるでごんす! グレン様が回復すれば逃げれるでごんすよ!」
「5分? なんの話だ?」
「グレン様の回復が終わる時間でごんす!」
「ああ、そんなことか……」
「え!?」
俺は瞬時に消える。
刹那、ジャミガの眼前!
「なッ!? てめぇ!!——」
ドゴォォアアアッ!!
それは瞬きするより速い。
俺の横払いの裏拳が奴の頬を捉えた。
ジャミガは壁に叩きつけられめり込んだ。
「うげぼぁあッ!!」
その姿は磔刑を受けた罪人のように見える。
ゴリゴスに笑いかけた。
「5分も必要ないさ。あんな奴を倒すのにな」
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