俺、城兵だけど無双する〜「出てけ無能!」と勇者パーティーを解雇された俺だが、実は【闘神の力】が使えてしまう。なに、俺の実力に気がついた? 戻ってきて欲しい? ……断るッ!!〜
第22話 後悔先に立たず 【グレンざまぁ回】
第22話 後悔先に立たず 【グレンざまぁ回】
俺は、勇者グレンの要求をハッキリと断った。
グレンは汗を垂らす。
「な、なんだと!? これは勇者命令なんだぞ! 命令は絶対だ! 城兵のお前が、勇者命令に歯向かうことは重罪なんだ!!」
「お前が俺をクビにしたのだ。今は勇者パーティーの城兵ではない。今はただの城兵なのだ。お前の勇者命令など知ったことか!」
「くッ! じょ、城兵の分際でふざけたことをぉぉおお!」
「ふざけているのはお前だグレン。俺はクビにされた瞬間から、お前の部下ではなくなったのだ。従来のスタット王国の城兵に戻った。つまり、俺の上司は国王とその直系の兵士達だけ。お前ではない。よって、お前の勇者命令など、俺にはなんの関係もなくなったのだ」
「くっ! て、てめぇ……!」
「今、お前の命令を俺が聞いてしまったらどうなると思う? 法律違反だぞ。俺は国王の部下なのだからな。もっとも、そんなことは2人だけの話。なぁなぁで事を済ますことも可能だろう。…………
「くっ! ぐぬぬぅ……!」
「悔しかったらスタット王国に戻って国王に確認を取れ! 国王の命令が下れば、もう一度仲間になってやる」
「スタット王国まで戻れだとぉ!? どれだけ距離があると思っているんだ! 半年はかかるぞ! ふざけたことを抜かすなぁッ!」
「ふざけたことを抜かしているのはお前だグレン。
グレンは全身を真っ赤にして震えた。
発する声は言葉を成さない。
「かっ……! くっ……! このぅっ……!」
ゴリゴスは眉を寄せる。
「グレン様。仕方ないでごんす。タケルどんの言うとおりでごんすよ。やはり、戻って来てもらうには誠意を尽くして謝るしかないでごんすなぁ」
汗を流すグレン。
「何ィイ! お、俺がタケルに謝るだとぉおおおおお!?」
ふむ、面倒な展開になってきたな。
釘を刺して置かねばならん。
「グレン。謝っても許さんぞ」
「はぐぬぅううううううううううッ!!」
その目は血走り、唇からは血が滲み出ていた。
そんなグレンを横にリリーは目を潤ませた。
「タケルさん……。やっぱり怒ってるんですか?」
「いや……。お前達には怒っていないよ。ただちょっと用事ができてな。戻れないんだ」
今はマーリアと呪術士ジャミガの件を片付けなければならない。
ジャミガを野離しにすればデイイーアの街で犠牲者が出るからな。
ブチ切れたグレンは、ガタンと大きな音を出して立ち上がり、凄まじい形相で俺に詰め寄った。
「タケル! この……! クソがぁ! 用事だとぉおお? 城兵の分際で、俺の言葉より用事を取るってことなのかぁ!?」
もう論理がめちゃくちゃだな。
グレンにとって、俺の用事など関係ないのだ。
自分が俺をクビにしたことが問題なのである。
しかし、話すのも面倒だ。
「グレン。お前うるさいから部屋に入ってろよ。俺はみんなと会話したいんだ」
火に油であった。
「ててててててててて、てめぇ! こ、この野郎ぉおおおお! 城兵のクセにぃ! 魔法力ゼロの無能のクセにぃいいいい!」
「…………」
俺は目を細める。
グレンは、自分が優位に立ちたいが為に訳のわからない話題を持ち出してきた。
「俺は五属性、全ての魔法が使えるんだ! お前なんか魔法力ゼロ! 全く魔法が使えないんだぞ! ギャハハ! 無能だ! お前は無能なんだよ!」
これにはマーリアが黙っていられなかった。
「タケル様は無能ではありません!」
グレンの暴走は止まらない。
「うっせぇぞ姫さんよッ! パパジャンだがママジャンだか知らねぇがよ! 姫のあんたがこんな奴の実力もわからねーーなんて情けない! こんな無能に付いていっても苦労するだけだ!」
「無礼な! タケル様に謝りなさい!」
場は騒然と化す。
一国の姫君に暴言を吐く勇者に、パーティーメンバーは戸惑いを隠せない。
これには流石のシシルルアも声をあげた。
「グレン様! いけません!」
「うっせぇッ!!」
もう酔っ払いである。
グレンはマーリアに絡んだ。
「タケルは無能なんだよ! 無能無能、なんにもできない無能野郎なんだよ!」
「謝りなさい! 許しませんよッ!」
「ギャハハ! 何度でも言ってやらぁ! タケルは無能だぁああああッ!!」
瞬間、室度が下がる。
いかん、呪いの力だ!
「マーリア落ち着け!」
空気中の水分は凍り、結晶と化す。
周囲の者は異変に気がつき混乱。
興奮したグレンは俺を罵倒することに必死になっていて気がつかなった。
「タケルは無能! 無能だぁぁああ!」
マーリア絶叫。
「タケル様は無能じゃないぃいッ!!」
カチーーーーーーーーーーーーーーーーン!
凍りつく音が鳴り響く。
刹那、グレンは動かなくなる。
一同驚愕。
マーリアとグレンの身体は氷に覆われていた。
やれやれ、まずはマーリアからだ。
俺は彼女を抱きしめる。
「スキル
パーティーメンバーはその光景に絶句。
マーリアは深呼吸を始めた。
「スーハー、スーハー。タケル様、申し訳ありません!」
「いや、丁度良かったかもな」
「え?」
マーリアは落ち着きを取り戻し、周囲の冷気は治った。
俺は凍ったグレンを肩に担ぐ。
「みんな、ちょっと待っててくれ、グレンの氷を溶かしてくるから」
みんなは一連の状況にハテナで一杯だった。
無理もない。マーリアの呪いも、俺のスキルも、全く知らないのだから。
本来ならば、俺の灼熱血行を使ってグレンの氷を溶かすべきなのだが、溶けた後がうるさいからな。
とりあえず、移動だ。
俺は風呂場に入った。
浴場の湯気が当たる隅っこに凍ったグレンを置く。
「うむ、オブジェのようだ」
さて、これでみんなと落ち着いて話しができるぞ。
グレンの氷は浴場の湯気で溶けていくだろう。
食堂に戻った俺は、みんなにことの成り行きを説明した。
マーリアが呪われていることや、呪術士ジャミガと戦っていることなど、全て話したのだった。
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