人でいることが疲れたので鳥になってみた件
自分は、いつしか人としていることに疲れてしまっていた。毎日やりたくない仕事をして、毎日のほとんどの時間を仕事に奪われる。もうこんな生活にうんざりしていた。
仕事のない休日は何をするでもなく、ずっと布団の上で横になっているだけ。そうやって毎回休日が終わっていく。昔はこんなんじゃなかったのになあと過去を羨んでばかりの日々だった。
最近の生活は心の底から全然ワクワクしない。まるで心が死んでしまったみたいだ。どうしてこうなっちまったんだろうとたまに泣く時だってある。ああ、鳥になりてぇよ。
自分は鳥になることだけを夢見るようになっていた。鳥にさえなれれば、何のしがらみもなく自由のある空で自由に生きられるのにな。
いつしか自分は暇さえあれば、鳥になって空を自由に飛ぶことを想像していた。絶対に慣れないっていうのは誰にでも分かる話なのに自分はそれを本気で信じていたまったく笑える話だ。
ある日のことだった。 自分はいつも通り 鳥になっている想像していた。その時、一瞬頭がクラクラして、目が回るような感じになった。そして自分は気が付くと鳥になっていた。本当に鳥になってしまったのだ。
自分は鳥になれて心の底から嬉しさでうち震えた。そして念願の大空へと羽ばたいていった。空を軽やかに飛ぶというのは実に気持ちの良いものだった。これが本当の意味での自由なんだなと気付いた。
しかし、そんな楽しい時間は長くは続かなかった。自分は自由に空を飛んでいると背後から違う獰猛な鳥が自分を捕食のターゲットにして攻撃してこようとしていた。この時生きてきた中で初めて死の恐怖を感じた。
自分はひたすらに翼を羽ばたかせて必死になって逃げた。向こうもかなり速かった。いや、自分以上に速かったのだ。そして自分は鉤爪で片方の翼を攻撃されて、完全な自由を失ったのだった。
幸か不幸か、その鳥は片方の翼だけを傷付けた後はどこかへと飛んでいってしまった。自分は助かったと思った。でも本当は違ったのだった。
次の瞬間に自分は何者かに撃ち落とされていた。そしてらまっ逆さまに自分は地上へと落ちていった。 最後の瞬間に自分はこう思っていた。
「ああ、人間になりたい」と。
人間は社会を形成して集団で生きていくことで、安心と安全を確保していったのだったと。集団で生きてきて社会を成長させてきた人間に命を脅かせるものはほぼ地上にいなくなったのだ。
それを理解した瞬間に自分は目が覚めた。どうやら今までのことは全部夢だったらしい。でも妙にリアルな夢だった。
自分は鳥には鳥なりの生きる不自由さがあったんだと気付かされた。今の自分は人間であることに満足している。本当に鳥になったのが、ただの夢で良かったとつくづく思う。
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