[ホラー] 口の中の髪の毛

 最近、朝起きると口の中がイガイガしている。何と言うか喉に何かがつっかえたような感じがするのだ。なので朝起きたらすぐにうがいをする。


「ガラガラペッ…!」

 自分はうがいをして吐き出す。すると、なにか口の中から毛のようなものが出てきた。

 なるほどな、こいつのせいで口の中がイガイガしていたのか。でもいつのまにこんな髪の毛みたいなのを口の中に入ったんだろうか?

 そんなこと思っていると、いつの間にか会社に行く時間となっていた。自分は急いで支度して会社へ行った。

 そして会社で働いているうちに朝のことはすっかり忘れていた。


 そしてまた家に帰ってきた。

「いやここから会社が近くて本当によかったよ。」

 この家は会社からかなり近いのだが、家賃もかなり安いのだ。ここの家にするのを決めたのは家賃が決め手だったと言っても過言じゃなかった。

 以前の家だったらもう寝ないといけない時間だけど、ここの家は多少寝坊してもすぐに会社に行けるので、まだまだ平気そうだぞ。

 今日はとりあえずゲームをして、そのまま疲れて寝た。


 次の日の朝、やっぱり口の中がイガイガして目が覚める。この口の中のイガイガが日に日に増しているような気がした。

 そしてうがいをする。すると、昨日よりも 多くの髪の毛が口の中から出てきた。しかも髪の毛が長いのだ。

 この家は髪の毛の短い自分だけが住んでいるのにも関わらず、長い髪の毛が出てくるなんていうのは、絶対におかしなことだ。さすがに気味が悪くなった。


この部屋は、もしかしたらまずいかもしれないと自分は思い始めた。だが、今日も仕事なのでもう会社に行かなくてはならなかった。

 そして会社行った。やっぱり働いていると朝のことはすっかり忘れていた。そしてまた家に帰る。


「明日は休日だ!夜更かしして ゲームしまくるぞ!」

 そう意気込んでいたが、疲れがあってかいつのまにか寝てしまった。


 そして次の日、ものすごい息苦しさを感じた。その苦しさで目を覚ました。これは本当にまずいと思った。口の中が何か詰まっているような感じがあった。

 自分はすぐに洗面台に行った。そしてすぐに吐き出した。すると、大量の髪の毛が口の中から出てきた。

 このままこの家に住んでいたら命の危険があるかもしれないと感じた。

 口の中から出てくる髪の毛の量は日に日に増えている。おそらく次の日は、自分はもう死んでいるかもしれない。

 だったら今日は寝ないで犯人の姿を拝んであろうと思った。自分はコンビニに行って栄養ドリンクをたくさん買ってきた。

 これで準備は万全だ。絶対に犯人の姿を拝んでやるぞと思った。そして深夜になった。栄養ドリンクを飲んだので眠気は全くない。

 これで絶対に朝まで起きられそうだ。自分は部屋の真ん中で身構える。そろそろ自分がいつも必ず寝ている時間に突入する頃だった。その時、突然電気が真っ暗になった。自分は突然のことでパニックになった。


 すると、部屋の中に自分とは違う誰かの気配を感じた。そして誰かが畳の上を「ズッ…ズッ…ズッ…」と歩く音が聞こえる。

 来るならかかってこいと思っていた。自分は逃げるわけにはいかなかった。いい加減に腹が立っていたからだ。だが、その怒りはすぐに恐怖へと変わった。

 自分は誰かに掴まれた。人間とは思えないものすごい力だった。それにヌルっと冷たい感触がした。すぐにこの世の者ではないと分かった。

 自分はその力で押さえ込まれて身動きが取れなくなっていた。さすがにこれはまずいぞと思った。そして、そのまま怪力で口の中に何かを詰め込まれそうになっていた。


 口の中にチクチクした物が入ってきた。

「これはもしかして髪の毛か…!?」

 誰かが自分に髪の毛を詰め込んで殺そうとしてきた。そしてだんだんと暗闇に目が慣れてきた。

 よーく見ると髪の長い女が気持ち悪い笑みを浮かべながら、自分を窒息死させようとしていた。そして髪の長い女と目が合った。

 その瞬間に自分は気を失ってしまったらしい。そして昼間になって目が覚めた。自分はどうやら無事だったらしい。

 けれど、口の中がものすごくイガイガしていた。その場ですぐに吐き出した。なんとか助かった。ホッとしてから、周りを見渡すとものすごい量の髪の毛が落ちていた。


 もしかしたら昨日の髪の長い女は、この散らばってるすべての髪の毛を自分の口の中に入れようとしていたのかもしれない。

 もしこんな量の髪の毛が自分の口の中に入っていたら間違いなく死んでいた。そして次現れた時は確実に殺される。

 自分はすぐにこの家を引っ越すことにした。

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