通信簿オール6
「はい皆さん、お待ちかねの通信簿を今から渡していきますよ」
「今回も成績悪いかもしんないな。あークソ!」
「まあ落ち着け」
明日から長期休暇なので通信簿が渡されることになった。
「花子さん」
「はい」
「花子さんは良く頑張りましたね」
「ありがとうございます」
「それでは次に太郎くん」
「はい」
「太郎くんはもう少し頑張りましょうね!」
「うるせぇ先公!」
「ギャハハハ! お前まじか! 本当に言ったよ!」
「太郎くん、後で職員室に来なさい。次いでに笑ったやつも来なさい」
こんな感じでだんだん通信簿を配られていった。そして恒例の成績どうだった?という会話が行われる。
「今回の通信簿どうだったよ」
「俺は駄目だったなぁ。成績に2がたくさんあったよ」
「そうか、まあ人生はここに書かれた数字が全てじゃないさ」
「だな、とりあえず自分の得意なことを活かして頑張るよ」
男の子は友達を励ましていた。
「そう言ってくれるのはお前だけだぜ。本当にありがとう」
「いやいや、僕はお前がスポーツ頑張ってるの知ってからさあ。お前は本当は出来るって奴だ!」
「照れるな。でもさ、お前は何でもそつなくこなしているイメージがあるのに成績オール3って意外だよな。教師に文句の一つでも言ったほうが良いと思うぞ」
「いや、僕はこれでいいんだよ。そつなくこなしているように見えるかもしれないけど、僕はただの器用貧乏ってだけさ」
そんなことを話していたらクラスの超天才が急に通信簿を見せびらかしてきた。
「いやいや、本当にしょぼい会話が聞こえてきたねー」
「なんだと!」
「もちろん僕は今回の成績もオール5だったよ! まあ超天才の僕はこれぐらい当然だね。これが平凡と天才の差ってことなのかなー」
「そっかー、やっぱり君はすごいな。さすがだね。僕は君に構わないよ」
男の子はこの時こう思った。
そういうの、井の中の蛙って言うんだぞ。それに実力っていうのは他人に見せびらかしものじゃないんだよ
お前はそんな生き方をしていると今後も必ず敵を多く作ってしまうな。
実はこの男の子、通信簿5段階評価で5段階の枠を超えたオール6という評価だった。
なのでまさに人間の中でも天才の部類に入る人間をも超越した存在だったが、特別な存在だからこそみんなにはオール3と嘘はついているのだ。
この男の子はどちらかというと、周りのみんなから平凡な人間だと思われている。
なぜなら本当の自分を徹底的に隠して生きているからだ。その甲斐あってか男の子を嫌いという人はあまりいないようだ。
誰よりも頭が良くて天才でもみんなにも決して自分の才能を見せびらかすようなことはしないのだ。
教師も男の子の意思を汲んで、実力テストや実技テストなどは後日ひっそりと行われているようだ。
男の子が特別だということを知っているのは教師などの一部の人間だけなのだ。この男の子は生まれながらにして敵を作らない方法を取得しているようだ。
逆に超天才の子はみんなにマウントを取って敵を作りすぎてしまっていたのだった。
この子はオール5のマウントを取っているやつが、将来多くの人に恨まれて苦労をする人生を送るだろうと直感した。
自分もこうなるかもしれないと分かっていたから男の子はあえて自分を偽るのだ。それは男の子が平穏に学校生活を送りたいと思っているからだ。
そして男の子はそれなりに平穏な学校生活を楽しんでいる。もちろん学校から出れば自分の能力を思う存分に発揮するといった感じだ。
あなたの近くにも通信簿オール6という人間がいるのかもしれません。
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