アリ食べるの大好き三郎くん

「うまい! うまい! うまい!」

「三郎くん、そんなにうまいってどうしたの?」

 自分は三郎君が気になったのでじっと見てみると、何かを歯ですりつぶして食っていた。

 よく見てみると三郎くんはアリを食っていたのだった。


「なんだー、サブローくんは今日もアリを食べているんだね。そんなに食べて飽きないの?」

「いや、僕は毎日アリを食べても飽きないね」

 三郎くんはこのように気が付くとアリを食べている、ちょっとだけ変わった子なのだ。

 なので、みんなはあまり三郎くんには近付かないようにしているみたいだ。というか、三郎君は危ないやつという認識をされている。


「アリは美味しいから良いんだよね~。よかったら君もアリを食べるかい? こんなに美味しいんだから体にもきっと良いはずだよ~」

 三郎くんはそう言うと、手の平いっぱいにアリを掴んで自分に渡そうとしてきた。


「いやいやいや、僕はいらないよ! もしも100万円をあげるから受け取れって言われても断るだろうね」

「遠慮なんかしちゃってもったいないな~。あとで食べたいって言ってももう遅いからね~」

 普通にアリなんて食えたもんじゃだろって思ったので食べたくなかった。これが普通の感覚だよね?


「あーん、もぐもぐもぐ」

「うげぇ…」

 そして三郎くんはまた一杯にアリを掴んでパクパクとアリを歯ですりつぶして食べ始めたのだった。

 別に自分はまったく遠慮などしていないし食べたくもならない。


「それにしてもさぁ三郎くん、アリばっかり食べてるけどさぁ、他の物は食べたくならないの?」

「僕はアリだけ食べてれば生きていられるから大丈夫だよ~。君もアリ絶対食べたほうがいいよ~。後悔させないから~」

 三郎くんは心の底からアリを食べるのが好きみたいだ。だが自分は別にアリが食いたいなんて1ミリも思ったことがない。

 だって虫を食べる事自体なんか気持ち悪いからだ。やっぱり三郎くんは少し変わっているなと思った。


「でもさぁ三郎くん、アリばっかり食べてると栄養が偏っちゃうんじゃないの? ちゃんとバランスの良い食事を摂ったほうがいいかもよ」

「嫌だね~。僕はアリだけを食べていたいのさ~。アリが食べられないなんて僕は死んだほうがマシさ~」

 じゃあ死ねよ!と一瞬突っ込みたくなったが、それで本当に死なれたりしたら困るので言わないことにした。

 最近は死ねという言葉は世間的にも過敏なのであんまり言わない方が良いのだ。


「そっかー、ところで三郎くんはいつぐらいからアリを食べているのかな?」

「あ~、僕は昔幼稚園児だった時に人気者になりたくてみんなの前でアリを食べてみたんだよ~。そしたら思いの外美味しかったから今日までずっとアリを食べてるよ~」

「そ、そうなんだね」

「もうすっかりアリの虜さぁ~。 ご飯を食べる時も、もちろんアリのふりかけをかけるよ~」

「うげぇ…」

「パンを食べるときもお手製のアリのジャムを塗ってるね~。アリは何にでも応用が利いて最高の食材だよ~」

 多分人気になるどころが引かれて友達がいなくなったんだろうなと思いつつも、三郎くんをフォローすることにした。


「三郎くんはすごいね。幼稚園児でアリをパクパク食べてたらそりゃ人気が出るだろうね」

「へへへ、そうかな~」

 三郎くんは喜んでいた。まあ喜んでいるのならそれでいいかなと思った。三郎くんは確かに少し変わったやつだけども、そこが彼の面白いところだ。

 自分はもう少しだけ三郎くんを観察していこうと思う。

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