風邪を引かせる風

 異常気象がよく起こっている現代、歩いただけで人が必ず風邪を引いてしまう風があった。原因はよくわからないけど、くしゃみが止まらないし、咳も出る。


「へっくしゅん! ゴホッ!ゴホッ! 誰か助けて…」

 街中ではこんな声がいたるところから聞こえてくる。風邪を引かせる風邪が最近頻繁に起こっていて、これがかなり問題となっているのだ。


 そして今道を歩いている少年がまさにその風邪を引かせる風に吹かれて風邪をひこうとしていたのだった。


「俺は風の子元気の子だから短パン半袖でも絶対に風邪なんてひかないもんねぇ! 今から外で遊んでやるもんねー! べろべろばー!」


 そしてその1分後だった。

「ゴホッ!ゴホッ! 呼吸が苦しい…。しかも鼻水もすげー出てくる…」

 少年は即落ち二コマみたいな感じですぐに風邪を引いてしまうのだった。


「なんだかすごい寒気もしてきた…。俺ってやっぱり風の子元気の子じゃなかったのかもしれない…」

 少年はすぐに家に帰ってしまったのだった。


 そして次の日…。

「風邪を引いちまったなぁ。でも学校休めてラッキー!」

「本当にあんたが風邪を引くなんて珍しいこともあるのね。バカは風邪をひかないっていうのに」

「母ちゃん、俺はバカじゃなくて天才だぞ」

「あんたが天才なら、あんた以外の子はみんな超天才になるわよ」

「何をー!」

「とりあえず、今日はちゃんと休むのよ。お母さんは仕事に行ってくるからね」

「あいよー」

 そのまま少年の母親は仕事へと行った。


「ひひひ、今日はずっとテレビ見ちゃうもんねー!」

 少年は学校を休めたことをラッキーに思っていた。少年はあんまり風邪をひかないので滅多に風邪で休むなんてことはなかったのだ。

 この非日常の体験がものすごく新鮮に思えた。


「学校休んで一日中テレビを見られるなんて最高だね! ケラケラ!」

 少年は家で寝ながらニュース番組を何となく見たりしていた。そこで天気予報のコーナーがやっていた。


「皆さん風邪を引かせている風が最近増えているようなので十分に注意して外出をしてください!」

「ほーん…」

 天気予報のコーナーで風邪注意報というのが出てきた。


「ゴホッ!ゴホッ! ちょっと一旦ストップ…」

 そして今この瞬間に天気予報のキャスターも風邪をひいてしまったのだった。その周りの通行人も風邪を一斉に引いてすごいことになっていた。


「ええ、一旦スタジオに映像を戻します」

 外の映像がスタジオの映像に切り替わった。


「一体何が起こっているんだ!? みんな一斉に風邪をひいちゃったぞ!」

 少年は非日常な出来事が起こったと思ってものすごい興奮していた。


「今頃外に出ている社会人や学生たちはみんな風邪を引いて大変だろうな」

 少年はぬくぬくと暖かい布団の中で気持ち悪い笑みを浮かべていた。


「一方、俺は布団の中で休めているんだから俺ってば勝ち組だよね」

 少年はそのまま幸せな気持ちで眠りについた。みんな普段から仕事や勉強を一生懸命頑張りすぎているので、たまには神様が気を利かせてこんなわけのわからない風を吹かしているのかもしれないな。

 とりあえず風邪をひいたら家でしっかり休もうね。

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