消えたサトル

 自分は川沿いをチャリンコで走っていた。その時、かなり大雨が降ってきたのだった。

 川はかなり増水していてかなり危険な状態にあった。そして自分は川沿いで自転車を滑らせてしまって川に落ちそうになった。


「うわあー!」

 大声を叫びながら川に落ちそうになったその時だった


「大丈夫か?」

 誰かが自分の腕を掴んだ。誰だろうと見たら、そこには同じクラスメートのサトルが立っていた


「いや助かったよ。サトルがいなかったらまじで俺は危なかったぜ」

 自分は何とか助かった。だがしかし自転車はそのまま川に飲み込まれてどこかへ消えていってしまった。


「それにしてもどうしてサトルはこんなところにいるんだ?」

「いやちょっとな、たまたま通りがかってみたら、お前が川に落ちそうになっていたのを発見したから助けに来たってわけよ」

「そうだったのか。それはすまねえな、ありがとよ」

 そしてサトルとはなんとなく会話をしながら自分の家の方へと歩いて向かっていた。

 ただここであることに気づく。どこもかしこも家が水浸し状態なのだった。なんとも不思議な感じだった。

 短時間の大雨でこんなことになってしまうのかと度肝を抜いたのだった。そして自分はここでまたあることに気づくのだ。

 サトルが自分の横から突然消えていたのだった。


「おい、サトルー!お前どこに行ったんだよ! サトル、いたら返事してくれよ!」

 どこかしらのタイミングで水にさらわれて川に飲み込まれてしまったのではないかとそんな良くない予感がした。

 自分は必死にサトルを探し始めた。


「サトル、本当はかくれんぼなんだろ? こんな冗談つまんねぇぞ! 隠れてるんなら出てこいよ!」

 こんなことがあってたまるかよ。俺はサトルに助けてもらって、それでサトルの方が消えちまうなんて。

 俺は声が枯れるまで必死にサトルを探した。だがいくら探しても一向にサトルは見つからない。

 自分は「もう疲れたよー」と思って空を仰いだ。その時だった。上空に何者かが浮いていた。そこにいたのは。


「お前何してんだよ!  サトルのバカやろう!  こっちは心配したんだぞ!」

「いやごめん」

 サトルは無事だった。


「というか何でお前浮いてるの?」

「俺、実は神だったんだ。このことは皆に内緒な!」

 サトルはそのまま空を飛んでどこかへ消えてしまった。サトルは本当に不思議な奴だな。自分は安心して家に帰っていく。


「いやー、自分が神だってことがバレちゃったな。それに、この力をたまにコントロールできない時があるんだよな。だから短時間で局所的に大雨を降らせてしまったり、雨で家を水浸しにしてしまうことがあるんだよ。参ったなぁ…」

 どうやらサトルは水を操ることができるらしいのだ。水のコントロールを誤って雨の災害を引き起こしまっているらしい。

 そしてあの時、自転車に乗っていた友達のことをサトルが助けられたのは、自分が雨を降らせた地域にたまたま友達がいたからなのであった。

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