日本1周断念

 自分は昔からの夢である日本1周をしてみようと思い立ち、大学の夏休みを利用して1人でママチャリで日本1周をすることにした。

 もちろん夏休みだけじゃキツそうなので、日本1周は期間を空けながらちょくちょくやろうかなという計画を立てていた。

 とりあえず、日本1周をするならまずは金が必要だと思い、頑張って毎日アルバイトをした。

 アルバイトで頑張って100万円を貯めた。ここから本格的に日本一周に向けて動いていくぞ!


 日本1周の旗を掲げながら、日本1周プロジェクトが始まった。沖縄からスタートしてとにかく来る日も来る日も漕ぎ続けた。

 道中では多くの人が日本1周を応援をしてくれた。その応援が背中を押してくれてとても励みになった。

 色んな人に支えられて、辛いけど何とか順調に続けられている。道中楽しいこともいくつかあった。


 見たこともない景色を見たり、地方の面白そうな夏祭りにも参加できた。いつもじゃ体験できないことを体験出来ることがこの日本1周なんだなと思って、とてもワクワクした。

 それに色んなところで食べるご飯はとても美味しかった。土地によって色々と違う食べ物があるんだということを知った。

 ご飯を食べることが日本一周中での楽しみの1つになっていた。


ある時、長い時間をかけてとある県までやって来た。もう本州の中央辺りまで自分は自転車で来ていた。

 自分はいつも通りに自転車を一生懸命に漕いでいた。すると後ろからイカツイ車がやってきた。

 そして車の窓が開いて、車の中から怖い人に話しかけられた。


「へいバーカ! 何トロトロ俺らの前を走ってるんだよ! 早く行けよ! このノロマ! ひかれたいのかてめぇー! 殺すぞぉ! ギャハハハハ!」「はぁはぁ…はぁはぁ…」

 そう言われて自分は恐怖を感じながら死ぬ気で漕ぐ。何度も後ろからクラクションを鳴らしてくる。

 自転車を一生懸命漕いでいるからなのか、恐怖からなのか分からないが心臓がヒリヒリしてきた。


「おいおい遅いぞ! そんな遅いと本当に後ろからひくぞゴラァ! ギャッハッハッ! もっと速く漕げよ!」

「あ…」

 車に乗っている人達が大勢で笑ってくる。今にも自分の心は折れそうだ。自分は笑われるために日本一周をしているのだろうか?

 こんなことになるなら日本一周なんて目指すんじゃなかったと思った。途中でイカツイ車は煽ることに飽きたのかどこかへ行ってしまった。

 自分はその出来事がきっかけで心が折れて日本1周という夢を諦めてしまった。

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