恐怖の観覧車デート

「2人きりだね」

「そうだな 」

 観覧車の中で彼女と2人きりで良いムードになっていた。この流れはキスをする場面かもしれないなんて考えていた。


「ねぇ話があるの。怒らないで聞いてくれる?」

 彼女はそう言った。


「なんだい? 何でも言ってくれ」

 もしかして逆プロポーズか?何て考えていた。だが、このあと恐ろしいことを彼女に言われることになった。


「今から殺す」

「 え!?」

 自分は何かの聞き間違いかと思った。彼女が殺すなんて言うはずがない。もしかして自分に恨みでもあるのだろうか。


「ここは観覧車の中だ。これでお前は完全に逃げ場がないな」

 急に彼女の声が変わった。男の声になったのだ。そして正体を明かした。彼女だと思っていたやつは、彼女をめぐって恋敵だった男だったのだ。


「お前、なんでこんなことをしている! それになんでナイフを持っているんだ!」

 恋敵だった男は手にナイフを持っていたのだ。本当に自分を殺すつもりらしい。


「なんでナイフを持っているかって? お前を苦しめて殺すためさ。この絶好の瞬間をずっとうかがってたんだよ!」

 恋敵の男は不気味な笑い声をした。


「クソ! 俺を殺しても彼女はお前のものになんかならないぞ!」

「いや、そんなことはない! 俺の方がお前よりも魅力があるからだ。あいつはそのことを分かっていないだけさ」

「何て自分勝手なやつなんだ!」

「時間稼ぎをしても無駄だぞ。お前は地上へは絶対に降りられないし降ろさない。お喋りはここまでだ。さて、お前を殺すときが来たようだな。フフフ…」

 恋敵の男はゆっくりと近付いてくる。


「お前は俺を殺せはしないさ。」

 自分は観覧車のドアを開けた。


「とうとう血迷ったか? 逃げるにしても飛び降りるしかないんだぜ! まあ生き残れはしないがな。地上に真っ逆さまだぞ!」


「そのまさかさ!」

 自分は観覧車から飛び降りた。


「なに!本当に飛び降りやがった!あの野郎!」

 男は地上を見たが、殺そうとしていた相手の姿が見当たらなかった。


「助かったぜ」

 自分は違う観覧車に飛び乗っていた。


「クソ! お前だけは絶対に殺してやらないと気がすまねぇ!」

 男は観覧車から飛び降りた。


「やめろ! 死ぬぞ!」

 男は飛び降りたが、違う観覧車に飛び移ることが出来ずに地上へと落ちていった。男は誰が見ても分かるくらいに即死だった。

 だが、これで良かったのかもしれない。おそらくこれはどちらかが死ぬまで終わらなかっただろう。自分は彼女のためにも絶対に死ねなかった。


 自分は飛び乗った観覧車の上でゆっくりと地上へと降りていった。

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