僕の将来の夢はお嫁さんになることです

「僕の将来の夢はお嫁さんになることです!」

 小学校のスピーチで僕はそう言った。すると周りからクスクスと笑い声が聞こえる。


「おいおい何言ってんだよお前、男の子はお嫁さんになれないぞ!」

「そ、そんなことないもん!なれるもん!」

 みんなが僕をからかってきた。その時だった…!


「笑ったら可哀想だよ。それにきっとお嫁さんになれるよ」

 1人だけ僕をかばってくれる女の子がいた。


「なんだよお前、俺は本当の事を言っただけだぜ」

「これ以上文句を言う気なの?」

「なんだいなんだい!シラケちまったぜ!」

 この女の子はキック力が化け物なことで有名だった。みんな自然と引いた。僕はかばってくれたことがとても嬉しかった。

 そしてスピーチの授業が終わって、その女の子に手招きをされて少し話すことになった。


「呼んじゃって悪いね」

「そんなことないよ。僕もお礼を言わなきゃと思ってたから」

「みんな君のことを笑ってひどいね。大丈夫?」

「うん!それよりもかばってくれてありがとう!」

「別にいいんだよ!当たり前のことをしたまでだし」

 僕はこの女の子をとてもカッコいいと思った。正直ときめいていた。


「それよりもさ、お嫁さんになりたいって話は本当なの?」

「ほ、本当だけど…」

 まさか、この女の子も僕のことをお嫁さんになれないとでも言うつもりなのだろうか?


「だったら、私のお嫁さんにならない?」

「え?」

「聞こえなかった?私のお嫁さんにならない?」

「そ、それってつまりどういうこと!?」

「そのまんまの意味だよ」

 正直僕はビックリした。まさかお嫁さんにならないかと言われるなんて。この女の子のお嫁さんになれるなら本望と思っていた


「じゃあ、あの、お嫁さんになります、よろしくお願いします」

「じゃあこれで君は私のお嫁さんだね」

「う、うん」

 僕は嬉しさと恥ずかしさで頭がごちゃごちゃになっていた。


「おっとその前にお嫁さんになるには儀式が必要なの」

「そ、そうなの?」

「そうだよ、君は今男の子だからまず女の子にならないとね」

 僕は正直女の子の言っている意味がよく分からなかった。


「じゃあこっち来てよ。」

「う、うん」

 僕は女の子に手を引かれてどこかへと連れていかれる。どこへ連れていかれるのだろうか?

 みんなのいる教室からどんどんと遠ざかっていく。人気がどんどん少なくなっていく。それどころか他の生徒がまったくいない。


「到着!」

「え?」

 僕達は校舎の端っこにある誰もいない教室に来た。正直なぜここまで来る必要があるのか理解できていなかった


「ど、どうしてこんなところまで来たの?」

「誰もいないからここに来たんだよ。これで君はみんなにバレずに女の子になる儀式が出来るよ」

「そ、そうなんだ」

「そうだよー、みんなにバレたらたいへんだからね。多分声を抑えられないだろうからね。だからここに来たの」

 正直僕は今不安と恐怖でいっぱいだった。こんなところで一体何をするのだろうか?


「そ、それで僕は何をすればいいのかな…?」

「そうだねー。まず立った状態で足を左右に広げて」

「こ、こうかな」

 自分は立ったまま足を左右に広げた。


「そう、そのままだよ。次に両手を後ろに組んでね」

「う、うん」

 僕は女の子の言う通りにした。


「いい、絶対に動かないでね!絶対だよ!」

「わ、わかった」

「それじゃ、いくよ…」

 そう言うと彼女が急に構え始めた。まるでファイティングポーズを取るように…

 次の瞬間に下腹部にものすごい衝撃が走った。と思ったら急に目の前が真っ暗になり僕は気絶してしまった。


「う、うん…」

「あ、やっと起きた」

 僕はどうやら眠ってしまったらしい。それにしても一体何が起きたのだろうか?


「まずはおめでと!君は無事に女の子になれたよ!」

「え?どういうこと?」

 僕は何のことかサッパリ分からなかった。そして僕は女の子になったとはどういうことだろうか?


「じゃじゃーん、これなーんだ」

「え?」

 僕は女の子に変なものを見せられた。女の子の手の平に2つのらっきょうみたいなのが乗っていた


「分からないの?もうしょうがないなー」

「え?」

「正解は、き・ん・の・た・ま」

 僕はぽかーんとしていた。そのあとにおそるおそるパンツの中を見た。

そしてすべてを理解した。

 僕のきんのたまが2つなくなっていたことを…


「ぐっぐああああああああ!!!」

「大丈夫?」

 きんのたまが無くなったことを理解した途端に時間差を生じて蹴られた時の痛みがやって来た。

 蹴られた時のことを脳内でフラッシュバックしていた。あまりの痛さに大声を出してのたうち回った。

 痛いなんてもんじゃない。ほんとに死ぬ。


「いやー、君のきんのたま目掛けてキックしたらさぁ、キレイにポロッと2つズボンの隙間からきんのたまが落ちてきたよ」

「ぐっがっっっぁ…」

 女の子はニコニコしながら、きんのたまを蹴り落とした時の状況を説明をし出した。

 僕はお嫁さんになると言ったことを心の底から後悔していた…


 その後、どうなったかというと…。約束通り僕はその女の子と結婚しました。

 もちろん僕…いや、私はお嫁さんだった。今はとっても幸せです!

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