カラスくんの夏
セミがミンミンと鳴いているとある夏の暑い日、木陰に隠れて涼んでいる1羽のカラスくんがいた。
「やっぱり夏は暑いよね。僕達カラスは体の色もあってか、太陽光の熱を吸収しやすいのかな?すぐに体が熱くなっちゃうよ。だから夏場は常に命懸けだよ。」
カラスくんは日光を避けるために出来るだけ、長い時間木陰に隠れていようと思っていた。
「夏はそこら中に生命が溢れかえっていてエサには困らないんだけども、やっぱり暑い中で日光に照らされ続けるのはかなりキツイよ。だから早起きして早くエサを食べないとね。もし長時間も日光に照らされれば僕らはきっと焼き鳥になっちゃうね。」
カラスくんは独り言を喋り続ける。
「もう満腹だし夕方になるまで僕は木陰で休もうかなと思ってるよ。夏場の無理は禁物!」
カラスくんは涼しくて気持ちの良い木陰から1歩も動けなくなっていた。夏の爽やかな風が流れる。木の葉の間からはキラキラと夏の日差しが見え隠れする。
「あー、気持ち良くて極楽極楽。他のカラス達は一体今頃どうしているんだろうか?他のカラスも僕みたいに木陰に隠れて休んでいるのかな?それとも焼き鳥になっているのだろうか?それにしても眠い…」
カラスくんは気持ち良くて、つい眠たくなってきてしまってウトウトとする。
「あーもうダメだ…僕、もう眠っちゃうよ…本当に眠っちゃうからね…カァー…」
カラスくんは、おじさんみたいなイビキをかきながら眠りについた。まさに至福の一時だった。そして時が流れた。
「あー良く寝た。ってあれ!?」
もう辺りはすっかりと真っ暗になっていた。セミももうお休みしていてどうやら鳴いていないようだ。
「早く帰らないとお母さんに叱られちゃうよ!僕ん家は門限があるからね!」
カラスくんは暗闇の中、空を飛んで巣へと戻ることにした。しかし、戻る道中は楽しさに溢れていた。
街はいつもとは違う姿を見せていた。昼間と違って夜の街はとてもキラキラしていた。
昼間には見れないキラキラがカラスくんにとっては、とても新鮮に感じられた。
「うわー、すごい!」
カラスくんは、門限を忘れてすっかり夜の世界に魅入られていた。夜は暑い昼間と違って自由に移動が出来て、とても快適だった。
「まだ時間はあるだろうし、ちょっとぐらいならいいよね!」
カラスくんはそのまま夜の街は観光することにした。とにかく街の至る所がキラキラしていて、この景色をどうにか巣に持って帰れないかななんて考えていた。
けれども、カラスくんの夜の観光は突然終わりを迎えた。
「コラー! なんで門限を守らない!」
「げげ!」
なんとカラスくんのお母さんが心配してわざわざ迎えにきた。そしてカラスくんのお母さんはカンカンに怒っていた。
「子どもが夜1人でこんなところに来ちゃダメじゃないのよ!なに考えてるのあんたは!」
「ごめんなさーい!」
こうしてカラスくんのとある暑い夏の日の1日は終わった。
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