The calm before the storm ①
ターゲットとの戦闘から命からがら逃げ延びたレオは、
「ピザは頼んでないぞと」
「頼まれてない」
冗談を軽く受け流して部屋に入って来たのは、レオよりも一足先に退院していたロリーナだった。
特に負傷もしていなかったため、あっという間の検査入院を終えた彼女は、今まで無かった習慣を2つ増やしていた。
ひとつはレオが入院しているこの国立病院に通う事、そしてもうひとつは今まで必要としてこなかった訓練施設への出入り。
クラヴィスとの初戦闘、その時に直面した己の弱さ。あの日はほとんど座って見ているだけで、レオが叩き付けられた時に運良くナイフを手渡されたから良かったものの、もし他の鉄柱に叩きつけられていたらそれこそ何も出来なかった。
今まで
「どうした相棒、座らないのか」
「本部と間違えて迷った、来る予定もなかった」
はっと顔を上げて逃げる様にロリーナは退室し、閉まったドアの前で溜息を吐きながら
「どうしたロリーナ君、病室の前で蹲って」
突然声を掛けられたロリーナは顔を上げると、いつも模擬実践演習に付き合ってくれる教官が立っていた。ロリーナはすぐに立ち上がって敬礼をする。
「ニコラ中尉、なんで病院に」
「私の息子が入院していてね、今日はお見舞いにと思ったらロリーナ君が居たからつい声をね」
にこにこと笑いながら手に持った勲章とゲーム機を見せる。いつもロリーナの訓練を担当してくれていて、寄宿の時間が過ぎてもずっと見守ってくれている。ついこの間昇進したと聞いていた為、普段持ち歩くはずのない勲章を手に持っているのも納得出来た。
「お子さんに昇進の報告なら早く行った方が良いです」
「そうだね、また息子にも会ってくれると嬉しいよ。私の話はあまり面白くないようで」
「いえ、寝る時には丁度良いです」
そっかそっかと笑いながら手を振って歩いて行った少尉を見送って、再びレオの病室に入ろうとカードキーをパネルに近付ける。
「最後のはフォローになってないぞと」
中から聞こえたレオの言葉で急激に冷め、ドアに思い切り拳を叩きつけて病院を後にする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます