第65話 Back In Black 〜現代の魔導兵団〜
パトリックとサマンサは、カニング邸の敷地内の射撃場で備品を開封していた。
「PDW。ざっくり言うと超スゴイサブマシンガンだ。どっちが前か分かるか?」
そう言って、サマンサにMP7サブマシンガンを手渡した。
「馬鹿にしないで、SASとの戦闘訓練も受けたし、セーフハウスに踏み込まれて撃ち合った事もある」
サマンサはそう言って、伸縮式の銃床と折り畳み式のフォアグリップを伸ばし、素早く射撃姿勢を取った。
「構えは良いな。後はフル装備と鉄仮面を被って同じ事が出来れば問題ない」
その場において1番足手まといになりそうだったのがサマンサだった。
カニング魔導兵団は、魔導士の資格を持った元軍人か警官、それもエリート部隊やSWATなどから選抜された者で構成されているので、突入作戦に於いては非常に強力な戦力を有している。
サマンサが防弾ベストを着こみ、パトリックがその上に更に強力な防弾ジャケットと防弾用セラミックプレートを手に取り、もう1人の魔導士が、ケプラー製ヘルメットにフェイスガードとして鉄仮面のついた古めかしい防具を手に取った。
「ライフル用の防弾プレートと魔導士用の鉄の仮面だ。クソ重いぞ」
パトリックは、サマンサにジャケットを着せ、装着する瞬間で重さがわからないように支え続けた。
「大丈夫、大丈夫——うっ……」
余裕が消えた妹を尻目に、兄はヘルメットも被せた。
「アーサー王時代の防具に見えるかもしれんが、こいつは呪具だ。今で言うところの視覚拡張HUDってやつだな」
鉄の板で目の前を塞いだサマンサだが、鉄板の裏側には着用前と変わらない景色が写り、思い描くだけで、熱源探知と暗視装置、魔力の可視化機能を切り替える事が出来た。
「すごい」
「感動するのは終わりだ、レーンを移動しつつ偶数列の的を撃ってみろ」
パトリックがそう言うと、魔導士の1人がサマンサに弾の入ったマガジンを手渡した。
サマンサは弾を銃に込め、一瞬操作に手間取ったが、この一回のミスを糧に、完璧に操作をマスターし、テスト射撃に移った。
射撃場を往復し終わったサマンサは鉄仮面をライダーヘルメットの風よけのように跳ね上げる。
覗いた顔は、赤く紅潮し、玉のような汗をかいていたが、澄ました顔と堂々とした態度を保ち、マシンガンを肘で抱える姿勢で持ってパトリックの前に立った。
「重要箇所以外のプレートは外した方がいいな。だが、射撃の腕は問題ない」
パトリックは自慢の顎髭を撫でながら感心していて、寡黙で職人気質な魔導士たちも、サマンサを“お嬢様”扱いはしなくて済む事を認めた。
————————————————————
サマンサは戦闘技能を証明し終わると、再び捜索状況の処理に戻った。
警察などからたくさんの情報が集まっていたが、それからサマンサの決めた条件に当てはまる物は少ない。
しかも、それらはことごとく当てはまらない奇人の通報だったのも疲労を加速させた。
そんな時、協力者からウェールズの墓地の不審者を知った。
通報主は、元警官で、探偵をしていた老人、さらにMI6が存在した時の協力者でもある。
サムは、この報告に直感で興味を惹かれ、本来の手順と外れてしまう事もいとわずに報告にある監視ポイントは確認した。
そこでまた偶然が重なる。その範囲には監視ポイントは3箇所存在したが、その内の一つだけが、嫌疑ありの意味を込めた黄色い枠で目立たせてあった。
サムは、このデータベースを作成した時、監視ポイント周辺の電気系統のイレギュラーもまとめておいたのだが、残っていたのだ。
報告のあった町からほど近い草原に位置する一つの建物が監視ポイントで、そこは数日前に、電線の機器故障で3時間だけ停電していた。
これ自体は珍しいことではなかったが、この時間内で、あれば発電所から常に電気が来ている電線も問題なく取り外せたという事実は、盗電や秘密の細工を行う事もできた事を推測させたのだ。
この時点で、張り込み調査の条件が揃ったのだったが……。
それからしばらくして、サマンサは、同じ町一つの警察無線がダウンの報告を受けた。
これは、サマンサに現地に確認に向かうと決断に充分だったが、事件はそれだけでは終わらない。
その後、交通事故と未確認の暴行事件の報告を受けたのだ。
そうして、カニング魔導兵団から、サマンサの部隊とパトリックの部隊がルーリナの隠れ家を特定して緊急出動した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます