幕間⑤ ジュスト(ダル子爵令息)視点

僕の名前はジュスト・ダル。

アグレアブル公国の端っこにあるポルトゥ村を治めている子爵家の息子だ。

そんな僕がアンサンセ王国に留学したのはニヶ月前の話。

僕が来た時からアンサンセ王国はおかしかった。

具体的に言うと貴族達の様子が変だったのだ。

その中で一番気になったのは王太子の婚約者であるガブリエル・ド・オリヴィエ公爵令嬢の扱い。

まるで悪女のように語られる彼女は少し前までは完璧な淑女として評判の高い人物であった。


「なにかあったのか?」


多くの貴族に慕われていたご令嬢の身になにがあったのか気になり調べてみたがよく分からなかった。

しかし一つだけ分かった事がある。

とある子爵令嬢が王族や高位貴族達にとても大事にされているらしい。

僕はその子爵令嬢と会った事がない。ただ見た事がある人達に話を聞くと全員が同じ答えを口にした。


愛らしい顔立ちをした素晴らしい女性。


それが子爵令嬢の印象だそうだ。

僕はその答えに違和感を感じた。

いくら顔が可愛くても子爵令嬢が王族や高位貴族に大切にされるのはおかしいだろう。


僕はモヤモヤした気分のまま二ヶ月間を過ごした。


ある日、アンサンセ王国の王都レーヴにある王城で催された舞踏会にて大きな問題が発生した。

大した権力を持たない子爵家の僕は招かれなかったが後で聞いた話によるとオリヴィエ公爵令嬢が断罪され国外追放にあったらしい。

それだけでも理解不能だったのに追放理由が例の子爵令嬢を苛めたからと聞かされて頭が痛くなった。


「子爵令嬢を苛めたくらいで公爵令嬢を国外追放って馬鹿じゃないのか…」


その三日後くらいだった。

まるで悪い魔法から解放されたかのようにオリヴィエ公爵令嬢の断罪に関わった全員が後悔を始めた。

理由を聞いたが教えてもらえなかった。

ただ全員が「自分達は取り返しつかない事をしてしまった」と言っているそうだ。

どうやらオリヴィエ公爵令嬢は無実の罪で国外追放という重い刑を与えられたらしい。


「無実の罪で国外追放って…あり得ないだろ」


自分の見聞を広めたくて訪れた国で起きた最悪な事件。

僕はすぐに自国に帰りたくなった。


オリヴィエ公爵令嬢の追放から約一週間後。

父から『ガブリエル様の身に何かあったのか?』と手紙が届いた。

どうして父がオリヴィエ公爵令嬢のことを気にかけるのか分からなかったが自分の知っている全てを手紙に書いて送った。


数週間後、ダル領にある村に帰った僕が聞かされたのは追放されたオリヴィエ公爵令嬢が見返りを求めず村を救ってくれたという話。

それを聞いた僕は怒りでどうにかなりそうだった。


「許せない」


僕の大切な場所を守ってくれたオリヴィエ公爵令嬢を追い出した人間を、国を絶対に許さないと誓った。


**********

ジュストが魅了にかかなかったのは子爵令嬢に関わらなかったからです。

第一章はこれで終了です。

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