第25話 復讐完了3:グラスゴー商会会長
「さぁ話の邪魔をするやつはいなくなったぜ。教えてもらおうか、姉さんをさらった実行犯と、パウロ兄を殴り殺した奴の名前と住んでる場所をな」
言って、リュージはグラスゴー会長を廊下に押し倒すと、マウントポジションをとって左手でその顔を殴りつけた。
相手は老人、本気でやると一発で殺してしまうので少しだけ力を抜いている。
「ぐふ――っ」
それでもなお強烈なリュージの拳は、グラスゴー会長の歯を2本宙に舞わせていた。
「ほら早くしろよ」
リュージはガツン、ゴツン、ガツン、ゴツンとグラスゴー会長の顔に拳をぶつけていく。
そこに微塵のためらいもないのを悟って、
「わ、わかった、教える! 教えるから殴るのをやめてくれ!」
会長は懇願するように叫んだ。
「なら最初からそう言えよ、イチイチ手間かけさせんな」
「わ、悪かった」
「で?」
「じ、実行犯は6人だ、名前は――」
「そんなもん覚えられねえんだよ、紙に書けよ」
リュージはもう一発おまけとばかりに顔を殴ると、グラスゴー会長の襟首を締め上げながら強引に引っ張り上げた。
そしてグラスゴー会長を締め上げたまま、すぐ近くの部屋のドアを蹴飛ばして室内に入ると、会長を机の前の椅子に乱暴に投げ捨てるように座らせた。
グラスゴー会長は腫れあがった顔の痛みを必死にこらえながら机に向かうと、紙に拉致実行犯の名前と居場所、パウロに殴る蹴るの暴行をした下っ端ゴロツキの情報を書き記していく。
「で、できたぞ」
「ほんとにこれで全員なんだろうな?」
リュージがさらに一発、リュージを見上げていた会長の頬を殴ってから言った。
「ガハ――ッ! も、もちろんだとも、この期に及んで嘘は言わん。だからもう殴るのはやめてくれ!」
「まぁ本当なんだろうな。この下っ端どもがどうなろうが、そもそもお前にとってはどうでもいいことだろうし。だよな? お前はそういう人を何とも思わないクズみたいな人間だよな?」
半笑いで嘲るように言ったリュージに、
「は、はい……」
グラスゴー会長にできることは、素直に頷くことだけだった。
「ははっ、最初と違ってえらく素直になったじゃないか。――じゃあもうお前は用済みだ」
「……は?」
「おいおい、なに鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をしてんだ」
「用済みとは、どういう意味だ……?」
「言葉どおりの意味さ。知りたいことはもう全部知ったんで、お前を生かしておく意味はないってこと」
「お、おい、バカを申すな! ちゃんとお前に情報を提供したではないか! 私を騙したのか!」
「騙したって言われても困るっていうか、復讐に来たんだからそりゃ最後は殺すだろ? なに言ってんだ?」
「な――っ」
「お前が命令して姉さんをさらわせたんだろ? だったら今日の俺のメインターゲットは他の誰でもない、お前だよハインツ=グラスゴー」
「こ、この人でなしめ! だいたい今日だけで何百人も殺しておいて、なにが復讐だこの殺人鬼めが!」
「姉さんやパウロ兄の命を奪い、商売敵も当たり前のように暗殺しようとするやつに、命の尊さを説教される
リュージはそう言い捨てると、グラスゴー会長を叩きつけるように床に押し付けた。
そして馬乗りになると、その顔をガツンゴツンと左拳で殴り始める。
「がっ、やめ――がは、ごふっ、ぐぅっ……や、やめろ、やめてくれ……!」
グラスゴー会長が情けない声でリュージに嘆願する。
リュージはいったん殴る手を止めると、
「よく見ろハインツ=グラスゴー。この青いミサンガはな、パウロ兄がずっと大事にはめていたものだ。姉さんとの婚約の証だ」
左手首に巻いた青いミサンガを、グラスゴー会長の目の前で見せつけた。
「そ、それが、なんなのだ……?」
「パウロ兄が味わった痛みを、今から俺がこの左拳でお前の身体に刻み込んでやる。顔の形が判別できなくなるまで、殴って殴って殴って殴って、殴り殺す。楽には死ねないから覚悟しとけよ?」
リュージはそう言うと、グラスゴー会長の顔を何度も何度も何度も何度も何度も何度も左拳で殴りつけた。
「や、やめ――ぎゃっ、がはっ、謝る、謝るから、他の――ごほっ、ぐは――っ……」
最初は抵抗したり反応を返していたグラスゴー会長も、30発を越えたくらいから静かになり、50発を越えた頃からほとんど何も反応を返さなくなった。
それでもリュージは、グラスゴー会長が生きている限り際限なく殴り続けた。
憎悪の塊と化した左拳を何発も何発も、完全に息絶えるまでグラスゴー会長の顔に叩き込み続けた。
全てが終わったころにはグラスゴー会長の顔は、骨折と出血と腫れのせいで誰の顔だったのか分からない程にぐしゃぐしゃに変形していた。
その後、むせ返るような濃密な血の匂い漂わせた主なきグラスゴー会長宅を後にしたリュージは、メモに記された実行犯たちを一片の容赦なく殺して回った。
そしてその全員がグラスゴー会長と同じように、顔の形が判別できなくなるまで殴りに殴られていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます