逃避行

竜母 ラーサルマニス


船の中では銀色の竜が吠えていて、大声で会話をせねば聞き取れないほどだ。


「敵艦隊、進路を変えたようです!」


「逃げるつもりか?そうはいかん。追撃させろ!」最優先命令は敵戦力の各個撃破である。逃げられるわけにはいかない。


「了解、しかしなぜ手元に銀竜を残しておられるのです?戦力は集中投入することに超したことはないですのに。」


「別の使い方をするからだ。まぁ、見てろ。」ディートハルムは意味ありげに笑うのだった。


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たかなみ


「敵艦隊はしっかりついてきているか?」


「はい。問題ありません。」


「空母型もか?」


「あっ!いえ、空母型はそのまま動かずに待機しています。」


「そうか。」艦長は何か引っ掛かるような気がしたが、目の前のことに集中することにした。


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竜母 ラーサルマニス


「前衛艦隊より連絡、敵艦隊に追い付けないとのことです。」通信士が言う。


「そうか、ならば貨物船の方を叩けばいい。」


「しかし、我々が知っているのは当初の航行ルートだけです。今どこにいるかは不明です。」


「そのための銀竜だ。直援はいらん。全騎偵察へあたらせろ!」ディートハルムが言う。


「了解!」


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護衛艦おおすみ


「敵後衛艦隊より敵機8機が射出されました!」通信士が言う。


「レーダーはまだ何とかならないのか?」


「修復の目処は立っていないとのことです。」


「敵機はこちらへ向かって来ておりません!多方向へ向かい、一機は貨物船団の方へ行っています!」


「なんだと!しかし、どうすれば。主砲弾はもうほとんどないというのに。」


「貨物船が敵を振り切れればよいのですが…。」


「無理だろうな。。」


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「こちら、竜騎士ブルクハルト。敵船隊を発見しました!」


「よくやった!貨物船は武装しているか?」


「いいえ、武器は見受けられません。」


「早速攻撃に移ってくれ。他の竜騎士と本艦隊もすぐに行く。」


「了解!」


竜の口が赤く輝き、炎の塊が吐き出される。それは貨物船のコンテナにまっすぐ飛び命中するが、炎玉は幾つかのコンテナを溶解させるに留まる。


「こりゃ、長い戦いになりそうだな。」戦列艦より一回り大きいどころではない金属製の船を見て、ブルクハルトは溜め息を吐くのだった。






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