市街戦 上
アマリーナ公国 アンケスト外門
石で出来た巨大な門。それをくぐれば、幾つもの家や店が立ち並んだこの国の首都が現れる。
「一軒一軒家捜しするんですか?」
「敵がどこにいるか分からんからな。それしかない。」陸尉は言う。
「あの家から始めるぞ!お前らは車を盾にして待機、何かあれば攻撃にうつれ。」陸尉が一番門に近い家を指差し言う。
「危険です。私が行きます!」
「いや、しかしだな…」
「我々の事を慮る事はうれしいですが、指揮官を危険にさらすわけにはいきません!」部下は言う。
「そうか、分かった。すまない。」
「それが我々の役目ですから。」彼は家へ向かい歩き出す。
「ごめんください!誰かいらっしゃいますか。」しかし、返事はない。
「すみませーん」
「とりゃー!」ドアが急に開き、竿を持った男が飛び出してくる。
「ガツッ!」と鈍い音を立て、自衛隊員のヘルメットにフルスイングが命中する。
「動くな!」陸尉と隊員達は男に銃を向ける。
「我々は、日本国自衛隊だ!直ちに投降しろ!」男はキョトンとした表情を浮かべる。
「申し訳ありません。アンゴラス帝国兵かと思いまして。」
「陸尉、どうしますか?」
「髪の色も肌の色も白じゃないからな、本当だろうが念のため拘束する。」陸尉はため息をつきながら言う。
「戦いが終わったら解放しますから少し我慢してくださいね。」隊員は男に手錠を掛けながら言う。
「はい…」
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「敵は、3件隣の家で停車しています!」
「ひょっとすると、ばれたのでは?」
「窓からは最低限しか顔を出していないと言うのに。」
「位置がバレたのなら、仕掛ける他あるまい。」アンゴラス兵達は、勇ましげに頷く。
「術式展開、ファイヤーボール。突撃!」
「オーーッ!」
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炎の球を撃ちながら、怒濤の勢いで男達が迫り来る。
「グァッ!アヂィーー」
「車の影に隠れろ!」
「戦車前へ!」
「応戦しろ!撃て撃て撃てっ!」人の焼ける臭いと、機関銃の唸り声が暫しの間、辺りを支配した。しかし、それはすぐに終わりを迎える。所詮は一つの家に入り切るだけの人数でしかないアンゴラス帝国兵は、被弾、もしくは戦車に轢かれ次々と倒れていく。
「陸尉、脅威消滅しました。」
「一応、死体にも撃っておけ。死んだ振りをしているかもしれん。」
「了解しました。」
「負傷者は?」陸尉が聞く。
「3名が重体。4名が火傷を負いました。また、拘束中だった男も火傷を負っています。」
「多いな。トラックに乗せて戻らせろ。護衛艦の医療設備が使えるはずだ。んっ?」陸尉は道路脇でうずくまっている隊員を見つける。
「斉藤?お前も負傷したのか。痩せ我慢は高くつくぞ。」
「いえ、負傷はしていないのですが気分が良くなくて…」斉藤は泣き腫らした顔を向け言う。
「気を病む必要はない。お前は何人もの人を助けたんだ。」陸尉は宥める。
「ですけど、銃を撃ったら、頭から血が…。俺は人を殺して…オエッ」
「お前も休めと言いたいが、人手が足らん。負傷でないのなら働いてもらう。」陸尉はこれからの戦いに不安を覚えるのだった。
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