第51話 マジックアイテムを買いに行こう
闘技大会は終わったが、マジックアイテムを見て回りたかったので、もう1日王都に滞在することにする。図書館ももっと見たいが、王都は広い、他に見てみたいところもあるし、またの機会に見ることにする。
まず真っ先に行くのは、前回マジックテントを見せてもらった店だ。まだ売れ残っていると良いのだが。
扉を開けると、自分たちを見たとたん店長の老人に笑顔が浮かぶ。
「きっと来ると思ってたんじゃ。お前さん方の目的はあのマジックテントじゃろう」
そう言って老人は手元から、マジックテントをとりだす。
「とっておいてくれたのですか?」
「まあ、昨日の大会はわしも見に行っていたからのう。この商品を見た時の目から、必ず買いに来ると思ってたんじゃ」
コウの問いに店長はちょっと自慢気に答える。
「で、どうかのう。買ってくれるんじゃろう?」
「ええ、勿論買わせていただきますよ」
老人の言葉に、コウは頷き、1白金貨と50金貨をだして、箱を受け取ろうとする。
「ちょっと待ちなされ、お前さん達、鑑定の魔法はちゃんと使っているのかのう」
と老人に言われる。
「いいえ、使っていませんが」
「ふむ、やはりまだ若いのう。この王都ではめったにないが、たまに最初に本物を見せ、実際には偽物を売るところもあるんじゃよ。なんで、良心的な所はちゃんとお客さんに鑑定の魔法を使ってもらうか、鑑定のマジックアイテムで見てもらうんじゃ。後から偽物なんて言っても無駄じゃからのう。ましてやこの金額のものじゃ。ほいほいと店長が出したものをそのまま持っていくのはどうかと思うぞ。
鑑定の魔法が使えないんじゃったら、ほれ、これを貸すから確認してみなされ」
そう言って、店長は大きな虫メガネのようなものを差し出す。
「これでその、マジックテントを見てみなされ」
コウは店長に言われるまま、箱を虫眼鏡で見てみる。
すると虫眼鏡に、
種別 マジックアイテム(その他)
希少度 A
名称 マジックテント
効果 発動させることにより、地上から50㎝の位置に広さ5m×5m、高さ3mのテントを作る。元に戻すことも可能。ただし、中に物が入っている状態では箱に戻すことはできない。強度は通常のログハウスと同程度。
という文字が表れる。コウは少し驚く。
「鑑定アイテムを使ったのは初めてかね。魔法が使えんのじゃったら一つは持っていた方がよいぞ。まあ、中には鑑定を阻害する魔法がかかっているものもあるから、万全とはいえんがのう。特にダンジョンなんかにある宝箱なんかはそうじゃ。お前さん方にはこちらの方が使いやすかろう」
そう言って、店長は一つの片眼鏡を奥の戸棚から取り出す。
「これは見ての通り、片方の目にはめて使うタイプじゃ。効果は先ほどのと同じじゃな。このような鑑定のマジックアイテムを使うと嫌がる店主もおるが、そんなところは信用せんほうがええ。これは50金貨じゃ。どうするね?」
「それも買いましょう」
コウは即答する。情報は時に100万の味方よりも価値がある。金で買えるなど安いものだった。しかもここの世界ではクーリングオフもできない。消費者の保護をつかさどる国家機関もない。買い物をするのに疑ってかからなければいけないとは、ちょっと世知辛い世界である。
店長は、上客と見たのだろう。色々と他のマジックアイテムを見せてくれる。魔力を貯めておける指輪、決まった言葉を唱えるだけで、低レベルの攻撃魔法ができるワンド、回復魔法が掛けられている腕輪など。しかし、もうこれといったものはなかった。
上機嫌の店長の店を後にする。王都には3軒のマジックアイテムを扱う店がある。それぞれ離れているので、乗合馬車で移動することにする。
乗合馬車はメイン通りを決まった経路で走っている馬車で、普通の馬車が、2人から4人乗りなのに対して、20人は乗れる大型の馬車だ。経路は決まっているが、降りる場所、乗る場所は決まっていない。合図すれば止まって乗せてくれるし、止まってくれと言えば、そこで止まってくれる。自由が利くが、その分時間は読めない。ただ、歩くより圧倒的に速いし、料金も距離関係なく1銅貨である。
次の店は防具をメインとした店だった。1回だけ即死の魔法を防ぐペンダントというのがあったのでそれを買う。効果があるかどうかわからないし、たとえ死んだとしても、母艦に眠っている本体が目覚めるだけだろうが、やはり気分の問題だ。使い捨てなので1金貨という値段も購入した理由だった。後は防御力の高い鎧、軽い鎧、金属鎧なのに魔法が使えるものとあったが、どれも自分たちには必要ないものだった。結局ペンダントを一人2個ずつ8個買い店を後にした。
最後の1軒の店に入る。今度は武器をメインにしている店だ。どういう原理かはまだわからないが、この世界には魔法がかかった武器でしか傷つけられないモンスターというのがいるらしい。自分達がメインで使っている武器で魔法がかかっているものはなかったが、サブウェポンは刀以外はあったので、ロングソード3本、スピア2本、ショートソード2本、短剣10本と多少多めに購入した。合計180金貨。結構な出費だった。賭けで大儲けをしていなければ買えないところだった。
これだけの物を一度に買っていく客はそう多くはないのだろう。店長は顔が緩みっぱなしである。
3軒回るとそろそろ夕食の時間になる。ダメもとで紹介状がいるレストランの紹介状が書けないか聞いてみると、自分が挙げた中で1軒だけ懇意にしている店があるとの事だった。お願いすると、直ぐに紹介状を書いてくれる。
宿に戻り、店のドレスコードにあった服に着替えると、馬車を呼んでもらい店に向かう。店は貴族街に近い所にあった。あまり一般人が近寄らない場所だ。王都の喧騒が遠くに聞こえる閑静な場所だった。
中に入ると紹介状の提示を求められる。紹介状を渡すと席へと案内された。ここの料理はすべてコース料理である。しかも1種類だけ。その日の最高の料理を出すというのがこの店だ。
嫌いなものはどうするんだろうとみていると、このクラスでは出てきたものを、好きな物だけ少しずつ食べるものらしい。なんとも贅沢な話である。
コースは新鮮なサラダに始まり、手の込んだスープ、魚のソテー、甲殻類の炒め物、いかにも高級そうな肉のステーキと次々に運ばれてくる。
流石にお酒の種類だけは選べるようだ。自分は紅茶のお酒を頼んでみる。来たものは香りは紅茶、味はどちらかと言うとはちみつ酒のような不思議なお酒だった。ウェイターに買えるのか聞いてみるが、この店オリジナルのお酒で、ここでしか飲めないそうだ。他の3人も珍しいお酒を頼み、料理を堪能した。
ちなみに夕食代は4金貨を超えた。もし払えない場合は勿論紹介した人のもとへ請求書が行くことになる。快く紹介状を書いてくれたということは、ここで飲み食いする分以上に今日の買い物で利益を上げたのだろう。少しは値切れたかも知れない、などとちょっとせこいことを考えながら、4人ともすべての料理を平らげたのだった。
後で聞いた話だが、ちょっとだけ残すのがこういう店でのマナーだったらしい……。
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