第151話 再々会
「であえであえ!寵愛者だからって手加減は不要だ!気絶させてでも絶対に捕えろ!」
ところ変わって教会内の廊下。
後方からそんな怒号とたくさんの足音が聞こえてくる。
「あんなに目の色変えちゃって、そんなに俺の何を求めているのやら」
その集団の前方をひた走るのは勿論、女神の寵愛者こと俺に加え、
「アルトにはそれほどの価値があるということだ。私もアルトと会えていないままなら、あの集団の中にいたかも知れん」
俺の隣を走りながら汗ひとつかかず、涼しい顔でそんなことを言うイヴェルの2人だ。
「まあ、イヴェルさんにだったら捕まっても良いんですけど。知らないおじさんとかに捕まるのは勘弁ですね。——前から来ます」
「分かった。私が行こう」
前方から迫る人間の気配を感じその旨を伝えると、イヴェルは腰の剣へその手を添えた。
その腰につけられている剣は、逃げている最中に取り戻した聖剣だ。
「絶対にここを通すな!何が何でも止め——グェッ!!」
「好きにさせるな!後ろに回り込——ゲッ!?」
「人数ではこちらが有利——ビャッ!?」
俺たちの進路を塞ぐようにして待っていた有象無象達、10人弱をイヴェルが一瞬で無力化する。
「流石ですね」
「ああ、ありがとう。ところで、シエル達の気配はあったか?」
剣聖としての力を遺憾無く発揮したイヴェルは、聖剣を腰に戻しながらそう尋ねてくる。
現在俺たちは、追ってくる兵士達から逃げつつ、気配察知にてシエルら生徒会役員達を探している。
といつか、どうして教会が独自の軍を持ってるんだ?あまりイメージが湧かないのだが規模の大きな教会だと当たり前のことなのだろうか。
「いえ、特に反応はないですね。もう少し探してみましょう」
「…そうか。なら、頑張って見つけるしかないな」
その返答にイヴェルは少し残念そうな顔をするが、それも一瞬のことで次の瞬間には決意に満ちたような顔つきになる。
うん、ちゃんといつも通りのイヴェルに戻っているようだ。
そんな感じで教会内を走り回ること数十分。
「あれ、少し人の数減りました?」
軽く後方を見て、俺はイヴェルへと話しかける。
「ん、言われてみれば確かにそのようだ。何か企んでいなければ良いが…」
現在、後方から俺たちを追ってきているのは3人のみ。牢屋から脱獄したのが見つかった当初は10人以上いたはずで、その数は確実に少なくなっている。他にも待ち伏せや奇襲の頻度も明らかに減っていた。
確かにイヴェルの言うように何かを企んでいる可能性もあるが…
「しかし、チャンスであることには変わりありません。一気にスピードを上げてみんなを探しましょう」
「分かった」
そんな提案にイヴェルは即答すると、その速度を一段階上げた。
「
それに合わせ、俺は後方へ風魔法と土魔法で生成した砂の風を飛ばす。威力は全く無いが、目眩しには十分だろう。
「さあ、一気に撒きましょう」
後方から聞こえる戸惑いの声を聞きながら、俺たちは教会の廊下を猛スピードで駆け抜けて行った。
それから更に数分後のこと。
「ん、今度は急に人が増えたな…」
前方から迫ってきた集団の最後の1人を気絶させ、イヴェルが呟く。
「そうですね…」
その言葉を聞き、少し考える。
彼女の言う通り、確かに遭遇する人の数は多くなった。だがその一方で、俺たちの後方にはほとんど人がいない。
遭遇したのは全て前方からでそれらは奇襲や待ち伏せというよりかは、お互いに出会い頭での遭遇と言った方がしっくりとくる。
つまり、兵士達も俺達との遭遇は意図していなかったものだと考えられる。
であれば、何故前方にこんなにも人が集まっているのか。
「もしかしたら、この先に何かあるのかも知れません。少し気を引き締めていきましょう」
前方を見据え、イヴェルにも注意を促す。
気配感知からも前方に多数の人がいることが窺える。そして、それらの者達が進む方向は俺たちのいる方向では無い。
この先に何かがある。
そう確信を持った俺は細心の注意を払いつつ、イヴェルと共に慎重に歩みを進め——
「ん?この気配は——イヴェルさん、この先です。行きましょう」
それから程なくして、俺はある気配を感じ取った。
前方方向、気配感知の届くギリギリの距離。そこに見知った気配を1つ、2つ、3つ、4つ、計5つを感じ取った。
それらの気配の周りには他の人間の気配が数10以上あり、教会の兵士が追っていたのが彼等であったことを確信する。
「おい、なんか後ろにい——カペッ!?」
「うぉ、何だこいつら——ブェ!!」
密集する人々を薙ぎ倒し、俺たちはその前方の気配へと近づいていく。その気配を確認してから5分後には——
「!?、ア、アルト!?」
「よお、久しぶり——でもないか。また会ったな、セイン」
多数の兵士達と格闘する、ゾルエ、ルーカス、シャーロット、アーネ、そしてセインの5人と再開した。
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