決戦準備! 〜私、〇〇されて××される!〜

「ご主人様は……」


「うん?」


 ミルクちゃんは悩んでいる。まるで、言いたいんだけど理由があって言えないみたいな、そんな感じの表情だった。



「ご主人様はご主人様……それ以上でも以下でもなかばい……今は」


「今は? 今はってどういうこと?」


「全てが終わったらちゃんと教えると! 今は目の前のことに集中しんしゃい!」


「ミルクちゃん……」


 いつになく真剣な様子のミルクちゃんに私は気圧されてしまった。けれどこれ以上食い下がっても仕方ない。私は追及を断念した。大事な決戦の前にミルクちゃんと言い争いたくないしね。


 というわけで、ミルクちゃんを伴って再び村に戻る。もう完全に開放されている木の門をくぐって村の中に入ると、すぐそばにあった広場にギルドメンバーが集結していた。



「こんにちはー」


 と挨拶をすると、真剣な表情でギルドメンバーに語りかけていたクラウスさんが、「おう!」と手を上げた。


「お嬢ちゃんも来たことだし、作戦の最終確認をするかぁ!」


「最終確認って……私全く分からないんですけど!」


「だから確認するんだろうが!」



 ――ベシッ!



 痛っ! ホムラちゃんに殴られた! 暴力反対!


「ココアさんの役割は至って簡単です。敵の群れの真ん中で自爆を繰り返す。――それだけです。いくらココアさんがバカでもさほど難しくないかと」


 セレナちゃんが私にも分かるように説明してくれた。さらっとdisられたような気もするけど、きっと気のせいだよね!


「ここが村だとすると敵は――こっちから来ます」


 スナイパーライフルで徐に地面を示すセレナちゃん。そこに描かれているのは四角に向かって伸びる三本の矢印で……いや、これじゃあよく分からないよ! 多分四角がこの村を示しているんだろうけどさ。


「西にはリーナさんが用意した罠が仕掛けてあります。私とリーナさん、アオイさん、クラウスさんはこちらで防衛します」


「はい、質問です先生!」


「ダメです」


「なんでそっちに4人も行くんですか?」


 敵は三方向から攻めてくるのに、八人のうち四人をそっちに回してしまっていいのかな?


「――ここが一番手薄だからですよ」


「罠があるのに……?」


「――このやり取りさっきも他の方と話してる時に何回もやりましたのでもうやりたくないのですが」


 セレナちゃんは心底うんざりしているようだけれど、私は全く説明を受けていないので、どういうことか教えて欲しいんだけど!



「他が磐石すぎるからです。私の作戦では、他の二つの門は破られる心配はほとんどありません」


「……というと?」


「東側はキラさんとユキノさん、ミルクさんに守ってもらいます。正面はココアさん。あなたに守ってもらいますが、あなたはひたすら自爆を繰り返していただければ大丈夫です。万が一撃ち漏らしがあっても、ホムラさんに片付けてもらうことになります。――ねー、ホムラさん?」


「ねーじゃねぇよ! なんでこのオレがロリ巨乳の尻拭いしなきゃいけねぇんだよ! また自爆に巻き込まれるのは嫌だぞ?」


 すかさずホムラちゃんが不満を口にした。


「巻き込まれるのが嫌ならせめてココアさんを遠くに投げてください。やったのでしょう? エリアボス戦で」


「……なんでそれを知ってる!? まあ、オレはロリ巨乳のお目付け役的な所あるしな……せいぜいしっかり監督しといてやるわ」


 いつお目付け役になったのかわからないけれど、ホムラちゃんは満更でもないようだ。ていうか私、また投げられるんだね……。クソ火力爆弾だっけ……? まあいいけど。



 そこで、クラウスさんが口を開いた。


「気をつけるべきところだけ教えてやってくれ」


「気をつけるべきところですか……そうですね。――敵をしっかり引きつけてから自爆することです。でないと【殺戮者】と【魔力精製】でHPとMPを全快にできませんから」



 クラウスさんに促されたセレナちゃんは素っ気なく答えた。


「はい、質問です先生!」


「ダメです」


「私、1回自爆すると、動けなくなっちゃうんですけど。連続で自爆させるとか殺す気ですか?」


「自爆なんですから死ぬ気でやってもらわないと困りますね」



 ――き



 鬼畜か!


「多分3回くらいでイッちゃうと思いますけど! 気持ちよすぎて」


「だれかこの変態を何とかしてください」


 セレナちゃんが言うなぁぁぁっ! セレナちゃんも【被虐体質】持ってるくせに。やーい、ドMぅ!

 すると、腕を組んで横から眺めていたリーナちゃんが手を上げた。


「そういうことなら、わたしがあらかじめココアちゃんを〇〇して、××しておくね!」


「僕も、ココアさんを――」



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! お前らなに考えてんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 私が咄嗟に放った【リトルボム】は、しかしセレナちゃんの魔導盾によって防がれてしまった。チッ、運のいいヤツらめ!


「あ、あの……アオイがココアさんに【ペインリデュース】をかけるというのはどうでしょうか……? ステータスは上がりませんが被ダメージによる苦痛は軽減されるそうです」


「そんな便利魔法があったんだ! かけて! いますぐかけて!」


「せ、戦闘前になったらかけますから落ち着いて……」


 結局、リーナちゃんやキラくんに〇〇されて××されるのが回避されるというのなら、私はなんでもよかったのだった。

 その後もセレナちゃんによる分かるような分からないような作戦説明は続き、かなり不安が残るものの特に誰もその作戦に異議を唱えなかったので、私もこれ以上ツッコむのはやめた。なによりもまた墓穴を掘ってしまうと大変だしね。


「最後に――」


 セレナちゃんは付け加えるように言った。


「魔王『イブリース』の主だった配下は、『アンラマンユ』『ヤルダバオト』『ヘカテー』『デミウルゴス』の四体で、皆同じくらい強いそうですが……これはあまり問題ありませんね?」


 ――。


 ――――。


 ねぇセレナちゃん。なんで。



 なんで私の方見ながら言ってるの!?!?

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