♡ゴスロリ魔王と最終決戦♡
バックアップ! 〜切り札【破滅の光】!〜
◇ ◆ ◇
目の前に広がる真っ白な空間。目線の先から、一匹の黒い猫が優雅な足どりでこちらに歩いてくる。あれ、どこかで見たような気がするんだけどな。
黒猫は私の目の前で立ち止まった。可愛い。もふもふしてあげようと、しゃがんで手を伸ばす。と、私は自分の手を見て驚愕した。私の手は――真っ白い靄のようなもので構成されて、おおよそ人間の手の形をしていない! どうして!? 私、幽霊になっちゃったの!?
すると、なんと目の前の黒猫ちゃんが白い光に包まれ、人間の姿に変身した! うわ、これもびっくり! その子はタキシードを身につけた小柄な少年だった。そして黒い猫耳と猫尻尾をつけている。こっちも可愛い!
少年は私を見つめてため息をついた。
「はぁ……まさか自分の姿すら忘れてるなんてね……」
「えっ? しゃべった!?」
しかし少年は私の反応などお構いなしに、何やら目の前で手を振ったり指で何かを操作する仕草をした。――なにをしているのだろうか?
「――ねぇ、あなたは誰? 何してるの?」
「すぐに思い出すよ。ほら、お姉ちゃんのバックアップデータ」
突如として少年の隣に、金髪の可愛らしい女の子が現れた。頭と手足にそれぞれ植物のツルで編まれたような飾り物をつけて、緑色のヒラヒラのワンピースを身につけている。魔法使いかな? ――にしてもこの子、幼い見た目の割に立派なおっぱいをお持ちですね。とても羨ましいですはい。
「――この子誰?」
もしかして私のお嫁さん? 娘? とか?
「これ、お姉ちゃんのデータなんだけど!」
「お姉ちゃん? 君のお姉ちゃん?」
「……あなたですあなた」
――わ
――私ぃぃぃぃぃぃぃっ!?
まさかの!
「
「そこから!?」
少年は呆れたように肩を竦めた。でも本当に覚えていないものは仕方ないじゃん!
すると、少年の隣に立っていた女の子が、私に向かって数歩歩み寄ってきて、にっこりと微笑みながら両手を広げてくる。まるで、おいでって言ってるみたい。
この子、私らしいけど、めちゃくちゃ可愛いからお触りしたくなっちゃうなー。いいかな? どうせ私だし。――えいっ!
「いただきまぁぁぁすっ!!」
と、私が女の子のたわわな胸に飛び込んだ瞬間――
――バシッ!!
という衝撃とともに、私の身体の中に何かがすごい勢いで流れ込んでくるような。そんな感覚に襲われた。と、同時に激しい頭痛に見舞われて、私は思わず頭を押えてしゃがみこむ。
でも――
――思い……出した!
私の目の前にこんなメッセージが浮かび上がる。
『バックアップデータ 同期完了』
『ログインシーケンスに移行します』
続いて、出してもいないのにステータス画面が浮かび上がった。
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名前︰ココア
性別︰『女』
種族︰『ホムンクルス』
ジョブ︰『闇霊使い』
ステータス
レベル︰17
HP︰900
MP︰140
STR︰13
VIT︰17
INT︰22
RES︰21
AGI︰13
DEX︰20
RUK︰36
スキル
【即死回避】 【幻惑】 【自動反撃】 【究極背水】 【殺戮者】 【被虐体質】 【魔力精製】
魔法
【完全脱衣】 【ディストラクション+】 【看破】
装備
武器︰闇霊の杖 / 混沌精霊龍・カオスフェアリードラゴン
頭︰生命のサークレット
体︰精霊のワンピース
腕︰生命の腕輪
足︰生命のアンクレット
装飾品︰エンゲージリング
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――これが私だ
そして、私の前に立っているのがレーヴくん。そうだった。なんで忘れてたんだろう? 私の身体も、このふわふわなおっぱいの感触も忘れていたなんて……。
と抱きついた拍子に乗っ取ってしまった「ココアちゃん」の身体を触りながら喜びに浸る。
「ねぇ、レーヴくん。私の身に何が起きちゃったの? 昨日、ミルクちゃんが言ってたことっていったい……それにあの事故は……現実だったの?」
「あー、それはね……説明すると長くなっちゃうけど、話し合いの結果とりあえずお姉ちゃんは次のステージに進めることになったんだよ。今やるべきことは、魔王を倒して村を救うこと。全部終わって上手くいったら残りの記憶も戻ってくるだろうし、今何が起きてるのかも教えてあげるから」
「うーん、なんかよくわかんないけど、とりあえず私は魔王を倒せばいいのね? できるかなぁ?」
「できるかなぁ? って、自分の胸を揉みながら言われてもやる気あるように見えないんだけど!?」
「えへへ、ごめん。身体が戻ってきたことが嬉しくてつい……」
「さっすがド変態お姉ちゃん!」
いつも通りのレーヴくんといつも通りのやり取りを交わす。なんだ、いつも通りの私たちじゃん! 何も変わったことなんてないじゃん!
「よーしっ! レーヴくん、私みんなと協力して、頑張って魔王『イブリース』を倒すよ!」
レーヴくんに力強く宣言すると、彼は私の手を掴んで「待って」と一言。どうしたのかな?
「お姉ちゃん。これ
彼が私の手に握らせてきたのは、どす黒いオーラを放つ黒い巻物(スクロール)だった。アレだ。私がなんとなく変なクエストをクリアして手に入れてしまった【破滅の光】の巻物。――世界を託されるのが嫌だったし、そもそも名前からして不吉な気配しかしなかったので、スルーしてストレージの中にしまっておいたんだった。
「えー、なんでよ?」
「
「ほんとにー? 騙してないよね?」
「ほんとだよ! 疑ってるの!?」
「だって明らかに怪しげだしさ……変な魔法覚えちゃったら……」
「【ディストラクション】と【完全脱衣(フルパージ)】と【被虐体質】を覚えてるお姉ちゃんが言う……?」
「確かに!」
もう毒を食らわば皿までかも! ていうかこれで魔王が倒せるなら御の字。敵うわけないと思ってた相手だもんね!
私は巻物を受け取ると、ウィンドウを操作してストレージから【破滅の光】の巻物を使用してみた。
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新しい魔法を習得しました!
【破滅の光】
魔王をも葬る究極の一撃を放つ(1回限り)
属性︰闇
消費MP︰100
習得条件︰巻物
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え、つよ……まさに今の私のためにある魔法じゃん!
「おー、ありがとうレーヴくん!」
「頑張ってねお姉ちゃん!」
「ぐはっ!」
突然レーヴくんが私に抱きついてきた。今までそんなこと無かったのに……デレ期に入ったのだろうか? とにかく柔らかくてもふもふで……私はとても幸せな気分になってしまった。
「レーヴくん……?」
「お姉ちゃん……っ」
レーヴくんが私の胸に顔を埋める。
「なんで泣いてるの?」
「な、泣いてなんかいないもんっ! もういい! さっさと行けよっ!」
「あーちょっと待ってもうちょっともふらせてーっ!」
「うるさいっ! ――
レーヴくんが杖を振って――私の視界は闇に包まれた。
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