エリアボスに挑戦! 〜狂戦士爆誕!〜
「【カラミティフレイム】!」
――ゴォォォッ!!
すごい。ホムラちゃんの放った一撃によって発生した熱が数十メートル離れたこちらにもかろうじて届いてきた。
盾の陰からチラッと伺うと、キモ巨人のHPバーは早くも1段削れている。さすが攻撃特化! この分だとかなり楽に攻略ができそうだ。
――キァァァァァァッ!
キラくんが召喚したワイバーンも、咆哮を上げながら黄色いブレスを吐きつける。するとまたキモ巨人のHPバーが減少する。
ホムラちゃんが巨人の足に連続斬りをお見舞いして巨人が膝をついた。
――グォォォァァァァァ!!
うわぁ、かなり痛そう。少しキモ巨人さんに同情するかも。
が、その時、巨人が唸り声を上げながら10本の手を掲げた。
――ピカッ!
キモ巨人の手のひらが光を放ち、それぞれの手に巨大な剣やら斧やら槍やら、大量の武器が召喚された! なんだろう、阿修羅みたいだ! ついに本気を出したみたいな感じだね!
巨人は空中のワイバーンを斧の一閃で吹き飛ばす。そしてそのまま地面のホムラちゃん目掛けて次々と武器を振り下ろそうとした。
――パチンッ
――バシッ!!
ボスの部屋に指を鳴らす音と、何か肉を打つような音が響いた。見ると巨人の何本もの腕にはそれぞれ太いロープが絡みついており、それが巨人の動きを阻害している。
「はぁぁぁぁっ!」
叫び声を上げながら黒いものが天井付近から巨人の頭に飛び乗ってその巨大な両目に両手に持った短剣を突き刺した! リーナちゃんの罠と急所攻撃! 『ヘカトンケイル』のHPバーの隣に紫色と黄色のアイコンが灯る。毒と麻痺がついた!
――グァァァァァォォォッ!!
苦悶の声を上げる巨人。相変わらずリーナちゃんはエグいよ……。
「よし、ナイス!【ツインスラッシュ】!!」
――ズバンッ!! ズバンッ!!
地上のホムラちゃんも攻撃の手を緩めない。目にも止まらぬ連撃で敵のHPはたちまち半分以下まで減る。
「おらおらおらおら! 死ね死ね死ねぇ! あははははっ!」
リーナちゃんも、短剣が見えないほどのスピードでひたすら巨人の頭部をグサグサと突き刺し――
「オラオラァ! どしたどしたぁぁぁっ!!」
――負けじとホムラちゃんも足を集中的に斬りつけ、巨人に行動を許さない……。
うわぁ、何この狂戦士(バーサーカー)たちは……絶対敵に回したくない。うーん、もうこれ私たちの出番ないよ。2人だけで十分。レーヴェくんが言ってた『推奨レベル50』っていうの嘘だったの? めちゃくちゃ楽じゃん。まああの2人がおかしいだけかもしれないけど。
「戦力と奥の手を温存しつつもこの楽さだと少し拍子抜けしますね」
「うん、まあいいじゃん。楽にこしたことないし」
キラくんと私はすっかり気を抜いてしまって、顔を見合わせて言葉を交わした。
「アオイ、あまり活躍できませんでした……」
「私なんか、全く何もやってないからね!」
「うちも、口ほどにもなかったばい」
「いや、おかしいぞ。さすがにあれは楽すぎる……絶対何かあるはずだ」
和気あいあいとした空気をクラウスさんが引き締めた。が、特に心配するようなことも無く、キモ巨人のHPは削られ続ける。
「トドメだ! 【カラミティフレイム】ッ!!」
――ブワァァァッ!!
轟音とともに、凄まじい跳躍力を見せたホムラちゃんの強力な一撃が巨人の頭部を襲う。その一撃は、残り少ないHPを全て消し飛ばし、ついでに巨人の頭部をも跡形もなく消し飛ばした。ドォッ! という大きな音を立てて地に倒れる巨人の胴体。その横に、シュタッと身軽にリーナちゃんが着地した。
「ふぅ、危ない危ない。危うく巻き込まれるところだったよ」
「すまんすまん。どうしてもラストアタックをとりたくてね」
「ホムラちゃんだっけ、あなた高ダメージとMVPとラストアタックの三冠をかっさらっていくつもり? それはさすがに酷くない?」
「いやいや、助っ人なんだからそれくらいしてもいいだろうが」
言葉を交わすリーナちゃんとホムラちゃんの脇で、巨人の倒れた胴体が黒い影のようなものに包まれる。良かった。これで終わりみたいだ。……あれ、でもおかしいな? このゲームではキャラクターとか敵が死んだら白い光に包まれて消滅するはず。エリアボスだから黒なのかな……それとも……?
「おいホムラ! リーナ! 後ろだ後ろ! 気をつけろ!」
クラウスさんの叫びに二人が振り返る。私も思わず息を飲んだ。そこには先程の影が寄り集まり、大きな塊を作っていた! そしてうねうねと動くそれはやがて一つの形を形成する。――それは先程倒した多腕の巨人――『ヘカトンケイル』を模したものだということが分かったけれど、ホムラちゃんが斬ったためかその頭部は存在していない。
「やっぱりまだ終わってなかったか!」
「チッ!」
ホムラちゃんとリーナちゃんが影の巨人の脚部に武器を突き刺す。だけど、それらはただすり抜けるだけで、ダメージを与えられているようには見えない。
「やはりな、
クラウスさんはブツブツと呟きながらウィンドウを目まぐるしく操作して、銀色の盾をしまった。そして今度は金色の盾を取り出して構える。今までの盾では新しい敵の攻撃は防げないと踏んだのだろう。
――グォォォォォォォォォ!
影の巨人が咆哮を上げると、手のうちの1本を掲げ――その中に巨大な大鎌を出現させた!さらに、その頭上に新たなHPバーが出現する。数は先程の半分の5本。バーの上には――
――『ヘカトンケイル第二形態 ―シャドウジャイアント―』
巨人は、攻撃が通じていないことに戸惑っている二人目掛けてビュンビュンと大鎌を振るった。
「罠も効かないだろうし、武器が当たらないなら状態異常にもできない!」
「とりあえず回避に専念しろ! 後ろの奴らが上手く考えてくれるだろ!」
リーナちゃんとホムラちゃんの声。
――って言われてもねぇぇぇぇっ! 私もどうすればいいのか分からないよぉぉぉっ!
「な、ななな何あれ! どうすんのどうすんの!」
「第二形態って書いてありますけど――」
「く、クラウスさんどうしましょう……」
場馴れしていない私、キラくん、アオイちゃんの3人は軽くパニックに陥っていた。
「落ち着け! あいつは見たところ物理攻撃を受け付けない。だったら魔法攻撃で倒すまでだ。――キラ! 【ランダムサモン】だ。アオイは召喚が終わり次第【スピードキャスト】をキラにかけろ。――『輝龍 ファフニール』が召喚されるまでガチャを引きまくれ!」
「「はいっ!」」
「わ、私はどうすればいいでしょう?」
「お嬢ちゃんとミルクはまだ温存する。――代わりにこっちを使うか。――ユキノ!! 出番だ!!」
「――憑依(エンチャント)、【光輝(こうき)】!!」
巨人の唸り声が響く部屋の中に、凛とした声がこだました。と同時に、ホムラちゃんとリーナちゃんの得物が白い光を放つ。
「本来、『エンチャンター』の役目は味方の武器に属性を宿らせること、つまり
クラウスさんの言うとおり、私たちは『エンチャンター』をユキノちゃんしか知らないから、自分の身体に属性を宿らせて接近戦をするっていう戦い方しか見てなかったけど、本来は支援特化の後衛職。ユキノちゃんがおかしいだけなんだよね。
今のところ、敵の突然の形態変化にもクラウスさんは余裕を持って対応している。これならこのシャドウジャイアント形態ももしかしたら……
期待の眼差しを前方に向けると、光り輝く武器を構えたホムラちゃん、リーナちゃん、ユキノちゃんの3人が一斉に巨人に攻撃を仕掛けるところだった。
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